
Aphonopelma anax baby |
タランチュラの幼体は、しばしば試験管やデリカップで、販売されている。こんなん育てられるのか?と思う方も要るかもしれませんが、そこはクモ、割と丈夫なヤツも多く、初めて買って育てても、たいてい上手に育てられるモノなんで御座いますよ。小さくたって、恐るるに足らず!
さて、ベビーから飼う利点を言うと、まず成長過程が楽しめると言うことがあげられますな。成長過程に見せる大きな色彩変化等楽しめます。またベビーから飼えば愛着も沸くでしょう。アジア産のアースタイガーやバブーンタランチュラの類は、WCの個体の飼育が難しい場合があるので御座いますよ。そいう飼育が厄介な種でも、CBから飼えば
丈夫なもやしっ子に育ちます。あと、成体を購入するよりもカナリ
お安い!という点も見逃せないポイントでしょう。この差が歴然なのはブラジリアンサーモン。ベビーはとにかく激安ですが、ADはいきなり
高い。冗談じゃなく10倍以上違う場合がありますよ。
で、一応短所も挙げておきますと、
雌雄が解らんと言うこと。タランチュラコレクターの多くは、メスだけ欲しいと言うかたが多いかと思います。寿命や大きさに起因しますが、まぁその気持ちは解ります。とくに後になって探せない事必至のsp種とか、レア種なんかを購入しオスが出た日にゃ、もう泣くしかございません。
あとは、ちゃんと育つか心配という点と、
育てるのがメンドウ(こう言う人は最初から成体飼いなさいよぉ)等が上げられますかねぇ。まぁ、安いと言う点が、かなりポイント高いのではないかと思います。
さて、いよいよ飼育。ベビーの場合、あまり樹上とか地中とかそう言う概念で語ってもしょうがない感じなので、とりあえずまとめて解説していきつつ、要所要所で細かく設定していきますかねぇ。まぁ、読んで頂けますれば、色々わかると思いますよ。

さて、先にも書きましたが、ベビーは大抵の場合デリカップか試験管で売られていることが多いです。まれにフィルムケースに入れられていたりしますが、殆どが試験管かデリカップと思います。
右の写真で言うと、透明なヤツと白いカップが通称
デリカップ、スポンジで蓋されているものが
試験管、白い蓋のやつは海外から輸入すると小さい蟲は殆どの場合コレに入れられてくる、もはや蟲のベビー用としか思えない
ピルボトル等と呼ばれるもの。そして手前のは
フィルムケースですね。どれが良くて悪いのかと言うのは、全て一長一短ありまして、まずは試験管の辺りから。
試験管は他のものに比べ圧倒的にカッコイイ!と個人的に思う。まぁ見栄えは一番良いと思いますが、ぶっちゃけそれだけな感じですかな。積み上げられないのと、通気性が極めて悪い、底面積が広くない、スポンジの蓋を食い破って仔グモが脱走する恐れが有る等々「The☆短所王」という感じのベビー飼育容器ですが、簡単に蓋を開けることが出来るスポンジ蓋と言う特性を生かし、日々まめな管理することを前提にコレたくさん温室に並べておけば、なにやら怪しげなマッドサイエンティスト風温室が完成し自己満足に浸れること請け合いでございます。飼育者本人も白衣を着たりして飼育に望めば雰囲気が出るかもです。さらにその白衣に
血糊でも滴らせておけば完璧でしょう。友人知人の数が見る見る減っていうでしょうな。
とにかくマメな管理が必要となりますので、ずぼらな人は避けましょう。蒸れ死にさせたり、逆に干からびさせたり、カビにやられたり、コオロギに齧られたりとあまり良いこと無いです。ツリースパイダーには良さそうジャンと思いきや、通気性が極めて悪いので、Avi属とかはもうマズイ。少し乾燥気味で飼ってあげないと、あっというまに蒸れたりしやがります。クモの事を考えるのら、避けた方が無難ですね。
潜り系の種を試験管で飼うと、かなりの確立でスポンジを齧って穴を開けて脱走を試みます。スポンジの半分ぐらいまで掘り進められたら、スポンジの上下を逆さまにして使えばよいですが、危険なので新しい蓋と変えましょう。と、不都合なポイントばかり上げてきましたが、体長が1cm以下の幼体を飼育する場合、クモにエサが行き届きやすいなどの利点もあります。
マメに管理できる人であれば、そうとう良い飼育容器になると思います。小バエも進入できませんしね。
次ぎはデリカップ。これは
オススメでございます。ベビーから年少個体、いわゆるjuvenileの間はこれで殆どの種を飼育可能です。各サイズ揃っており、なにぶん
お安い。通気に関しては、針で穴を開ける事も可能、5つぐらい積み上げても問題無し、底面積もそこそこありますし、高さがあるものもある。大きさもある程度揃っています。欠点は、
劣化しやすいことと、見た目が
安っぽいこと。
白い壁面タイプのは、割と丈夫な作りになっているので、透明なタイプに比べ長期使用可能です。短所は中が観察しにくい事ぐらいですかね。
基本的に劣化しやすいのですが、そこは安さでカバー。特に
蓋の部分が劣化しやすいので、脱走されないよう注意してくださいよ。また、体長3cmを超えた種はプラケースへ移さないと、空気孔に牙を突っ込んだり、蓋の端に牙を突っ込んでガシガシ孔を広げて行き脱走されます。某ショップで、主の居なくなったデリカップを見たことがありますからね。
他の物ですが、
メンドイので省略。別に使わなくって良いです。簡単な説明しておくと、フィルムケースは、写真屋へいくと、無料で分けてくれるので、タランチュラを繁殖させて小分けする際大量に必要なとき便利です。小さいので場所を取りません。蓋は丈夫ですが、開けにくいので管理が面倒になってきます。
海外から買ったりすると付いてくる白い蓋のピルボトルと思われる物ですが、まぁ
捨てずに取っておけば何かの役に立つかもです。一応透明なので、中身の観察はしやすいです。
フィルムケースより1レベル高い入れ物ですね。蓋がペラペラなので、ここに穴を開けて通気孔としている場合が多いです。さてこの辺りでケージの話しは終わり。

タランチュラの幼体は、
どの種も乾燥と蒸れに弱いです。乾燥した環境を好む種であっても、多少湿度を高めて飼育した方が無難な感じです。
床材はいろんな意味でミズゴケが便利です。これに軽く水を含ませて、クモを放り込んでおきます。
反対に、やめた方が良いのが、得に試験管飼育の際発生しやすい感じなのですが、オアシスを下に敷いてバーミキュライト。潜り系の種は、何故か
消滅する事もございます。通称クリス現象と呼ばれるのですが(謎)、つまりはオアシスの下に潜り込んでいるときに誤って給水すると、溺死したり圧死したりと大変な騒ぎで「アレ?いないなぁ・・・」と思って掘り起こして見たときには既に遅く、姿形が無いときすらある...まぁ、単に管理の問題でしょうが、そういうこともあるので、クモの居場所が発見しやすい意味もこめミズゴケを入れておきましょう。
何故クリス現象と呼ばれているかについては、メンドクサイのと、あまりに内輪ネタなため、いっこも触れないかんね。
他には、細かめのバーミキュライトだけでも良いですし、昆虫マットとかでも良いです。でも粒の大きなバーミキュライトは、クモのベビーの色と似ており発見しにくくなる恐れも有ります。それも管理の問題ですので、どうにでもなりますぞ。試験管で飼育する場合は、得にミズゴケをオススメします。
ミズゴケをあまり硬くつめずに、フワッと入れておきます。それを湿らせておく感じでございますな。潜って巣を張る種は、適当に糸を出して棲みつきますし、潜らない種はその辺りをフラフラ歩き回り、樹上性種の場合は保湿材や巣を作るための足場としても多いに活躍される事が予想されるわけ。
ミズゴケの使用で注意することは、薬品処理されているミズゴケも中にはあるので、使用前に、一晩ぐらい水につけて、ミズゴケを洗うようにしましょうね。最悪、クモが死ぬかも知れませんよぉ。

エサについてですが、普通コオロギの小さいモノを与えます。大きさ的にはクモの体長より少し小さなサイズのモノが良いでしょうな。産まれたばかりのタランチュラ(通称Spiderling)には孵化したての小さなピンヘッドコオロギを使うのも良いです。少し高価なエサですが、カイコの幼虫もなかなか良いようです。コオロギと違って草食なんで、クモが襲われる心配がないんですねぇ。素晴らしいこった。
与え方はクモの目の前に落とすだけ。通常飛びついてきますが、エサの反撃が心配なので、コオロギを使う場合頭をつぶして弱らせてから投入するのが無難ですよ。

エサを与える間隔は、巨大な成体にしたい場合、とにかく食べるだけ与える事をオススメします。別に早急に大きくしたくない場合でも、クモがエサを要求している間は、3日置き程度のペースで与えた方が良いです。
ベビーにはエサを1匹ずつ与えるようにし、1匹食べ終わってまだ食べそうならもう1匹追加して入れてあげると言う作業を1日中繰り返してください(無理か:笑)。
とにかく食べるだけ与えて太らせて、一気に育て上げる方法をパワーフィーディングと言うのですけど。この技、一般的に成長が極めて遅い種には使えない模様ですので、種類や個体を選んで行いましょう。南米産の大型種や、ツリースパイダーの類には使えます。
エサをたくさん食べさせる技として、あえて小さなケージに閉じ込めて飼うという方法もあります。この場合、タランチュラはエサを捕獲しやすいので、脱皮周期を早めることが可能です。が、狭いので、蒸れる可能性が高くなったり、床材の量も少なくなるので逆に乾燥しやすくなったりもしますので、かなりコマメな管理が必要になります。一気に育て上げたいと言う方にはお勧めできますが、その分リスクも高まるので、タランチュラのbabyを何種も育て上げた経験を持っている人が行うのが良いでしょうな。まぁ、そんな方はここを見てないでしょうがねぇ。
幼体の場合、大き目のエサを上げても良いです。その場合、必ずエサとなるコオロギ殺してから与えるか、ちゃんと咥える様を見届けましょうね。さもないと、
クモがコオロギに食われると言う最悪の事態になる場合も有るわけ。満腹になれば食べやめるので、食べカスは取り除くようにしましょう。で、3日ぐらい日をあけて再びエサ投入すれば、また食べるかもしれません。それでも食べなければ、脱皮前か、お腹いっぱいかでしょうな。
拒食がはじまったら、脱皮前と考えられるので、エサを取り除いて様子を見ましょう。腹部の刺激毛を飛ばす種の場合、飛ばした後の禿げあがった部分が黒くなっているようであれば、もう時期脱皮しますよ。成長の早い種は、大きなエサを一回与えただけで、もう拒食をはじめて脱皮すると言う、通称一回脱皮するものもあります。ポエキロやパンフォ等成長の早い連中において、稀に見られる現象です。
脱皮が終わったら、通常2日〜3日おいてエサを与えます。それでもエサを取らない場合は、とりあえず顎を潰して弱らせたコオロギを一晩入れておきましょう。翌日食べていなければ取り除き、日を改めてまたエサを与えてください。成長につれて脱皮後に初エサ間隔が延びます。成体にもなると、脱皮後1週間程あけてからエサを与える感じになります。
エサの他には給水が重要です。これは注意深く行わないと、水面張力によりクモがドザエモン化します。スパイダリングに給水する時は、壁面に大きな水滴を作ると表面張力により仏様になってしまうクモもおりますので、壁面には軽く霧吹きをし小さな水滴を作るのと同じに、床材も軽く湿る程度に留めましょう。あとはエサからの水分で十分です。 少し育って2cmぐらいの体長になりましたら、壁面に大き目の水滴を作りそこから飲ませたり、樹上性種で巣を作ってる個体には、その巣に水をかけてあげたりすれば良いです。週2〜3回ぐらいそんな感じで水を補給してあげましょう。2cmぐらいまでのベビーであれば、大抵の場合エサからの水分で十分なようなので、過剰な水分補給やら、水容器設置はしないほうがいいです。逆に蒸れや溺死を招きます。
さてはて、こんな感じで飼育していれば、脱皮を繰り返し早いもので1年半、遅いものだと5年〜7年ぐらいかかって成体になるはずです。やたら成長が遅い個体とかも中にはいたりしますが、まぁ多くの原因はエサの量に起因すると思います。エサの量が少ないと、矮小化したり、小型のメスになってしまったり、本来育つサイズまで育たなかったりしますので、クモがエサを求めている間は、エサを切らさないで与えた方が無難です。脱皮毎にジャンジャン大きくなって行く様は見ていて楽しいですし、それが飼育の醍醐味でしょう。メンドウだと思う方は、思いきって成体を買ってしまうのが良いかもです。
タランチュラはベビーであっても絶食に非常に強く、家では飢えが直接の死亡原因と思われる例は一度も無いです。たいてい「乾燥・脱皮不全・蒸れ・コオロギに食われた」のどれかが幼体の死亡原因として上げられると思います。まれにインブリードが原因か不明ですが、遺伝子疾患としか思えないような非常に弱い個体(CB群)もいて、それらはホントどう頑張っても残念ながら育たないです。特に美しいツリースパイダーに見られる印象ですが、そういうのに限って高価だったりするので始末が悪いことこの上ないですねぇ。そんな個体と巡り合ってしまった場合は「はぁ〜」と深く溜息をついて、海辺で西に沈む夕日を眺める他に道は有りません。残念ですが助け舟は出せません。だれが飼っても最終的には育てられずに落とす結果になると思います。
うちでは一度も無いのですが、ハエによって殺されてしまうという事もあるようなので、タランチュラの成体幼体問わず飼育者は、ハエに関しては見つけ次第駆除する方向で行きましょうね。弱ったタランチュラに卵を産み付けてしまうらしいですよ。いやぁ〜、実に恐ろしいことですなぁ。
幼体購入のポイントですが、とりあえず目だった外傷のあるものは止めましょう。そして、巣を作る種はちゃんと床材を掘ったり、糸を出して巣を作っているかがポイントです。その他には、入荷後直ぐ購入がベスト。先にも触れた通り、
長期間エサやりをサボられると、成長に異常をきたしてしまいます。そんな絡みもあって、目をつけていた種は入荷後早い時期に購入するようにしたほうが良いです。