E子幽霊に出逢う。
こんな事がありました。私の車にE子を乗せて町に出た時の事です。「KENJI」のお客様(女性)の家に寄りました。玄関で話を終え車に戻る時彼女が見送りに表に出てきました。車の中にいるE子を見て
「あら〜Eっちゃん、お久しぶり〜、お元気〜」
その時のE子の顔。それは幽霊にでも出会ったように「おびえ」て、まさに「周章狼狽」
「わたし、この人知らないわ!」
「なに云ってんのよ〜Eっちゃん、ノリ君げんき〜?」
ちなみにE子の子供の名前は「ノリヒデ」と云います。
私は「これはまずい」と思い、早々にその場を後にしました。
しばらくしてその人に逢ったときに聞いて見ました。
「昔デパートでEっちゃんと同じフロアーに何年か勤めていたんですよ。そのとき随分いじめられたんです。Eっちゃんはレジを打つ立場に居たんですが、お客さんの会計を(レジスターに)打ってくれないんです。二人の仲の事はお客さんには関係ないんです。でも何回もお客さんに迷惑を掛けるので上司に相談してフロアーが替わったんですが、その後は仲直りしていますよ。だから家族のこともよ〜く知ってます。」 会社では随分立派なことを云ってるが、まあ〜人間過去には色々な事があるさーと、なるべく気に掛けないように努めました。
しかし、「すぐにバレる嘘をついたり」「陰湿なイジメをする」E子の正体を見てしまった、いや〜な予感がする一件でした。
エサの代償は「身体で返せ」
1月8日。突如として会社がSから借りた70万円の返済をE子から迫られました。それも「即刻」です。 急なことでもあり、あるだけの金をかき集めても20万円しか出来ませんでした。夜8時頃、(注 この時間に帰っていた)Sの家に持って行きました。
玄関先で「申し訳ないが今はこれしか都合できない」というと、E子は数え終ってから家に入るように言われ、中に居たSから「返済方法」を示すように言われました。借りた金は法人(会社)ですが、代表の責任から事務所にある私個人の所有名義である「什器」そして「電話器一式」を代物弁済として応じそれを書面に書かされました。机、椅子をはじめFAX、電話機一式です。
しかしE子は経営者の1人として会社運営に参画もしているんです。NTT職員のSは
「こんなものいくら高く見積もっても20万円位にしかならん。もう何かないか」
と言はれましたが車のガソリン代も無い状態であったので「申し訳ないが思いつかない」というと
「じゃ〜古くてたいした価値も無いが、今あんたが乗っている車をよこしなさい」
「車を取られたらどうすることも出来ない」と云うと、Sは何と云ったと思います?
「では残りの30万円は“身体で払います”と書け」
何度も云いますが、Sはヤクザでも暴力団の組員でもない(らしい)、れっきとしたNTTの心線管理係長です。
思わずSの隣に座っているE子の顔を見ましたが「それは云い過ぎでない?」どころか、涼しい顔をしている。(実際この家は寒かった)
腕まくりのひとつもして、まき舌で・・・の言葉を押し殺し借用書に
“残金は身体で払います”と書いて渡すと、一読したSは
「この“身体で払います”の処を“労働力をもって払います”と書き直しなさい」
改めての強要です。止むを得ず二線を引いて“労働力をもって払います”と訂正したのです。
今度は私の番です。
「ところで対価は一日いくらです?」
「それは良いんだ」
「それはないでしょう、それを示して貰わないといつまで経っても終らないよ?」
「いや!だから〜、それでいい」
な〜んも分かっていないのだ。「これで許してやる」つもりらしいのだ。
説明するのもばかばかしいので、それ以上説明するのを止めにしました。
NTTにはいろんな職員が住みついているんですね〜。
「電話機一式」は加入権
車の燃料代も無いので、2本ある電話の加入権の1本を市内の業者に売りに行きました。それを知ったSとE子は
「担保に取ったものを売りに出すとは何事か」と激怒しました。私は
「担保は電話機機であり、売りに出したのは加入権だ」と主張したが
「電話機と云うのは加入権の事だよ、その番号を売られたら困るっ」
どうも少し様子がおかしいのです。
「じゃ〜この番号を私から買えばいいでしょう」
と云って見たが、とにかく
「担保は電話機のことであり、加入権の事だ」
と繰り返すのみ。ちなみにこの番号は官庁等に良くある同数字が並んだ番号なので、通常相場の五割り増しで買った番号です。彼等がこの番号に固執する理由がそのときには分からなかった。・・・で取られちゃった。
春は3月、落花の舞い。
「全部でどの位借金があるのか(妻が経営している)下宿の分も含め一度全部紙に書いて見たら?」というので出して見た。成程随分とある。さらにE子が云った。
「『KENJI』の商品化をあきらめたのなら、奥さんにこの事業から手を引いた、と云っておきなさいよ」
私はその旨妻に伝えておいた処が、な〜んとE子は確認の為我が家に出向いたのだ。そして帰ってきて云うには
「社長はウソつきだ、(妻に)止めるなんて云ってないしょ、恐ろしい人だ」
大変な剣幕である。真相はE子が妻に対して
「ご主人がまだやりたいといったならどうするのか」
と言ったそうです。その際E子はいつのまにか私の机から例の借金表を持ち出していて妻に見せて、こうも云ったそうです。
「これ!こんなに借金があるんですよ、それでもやらせたいんですか?」
妻は
「うちのひとはこれまで大変な苦労をしてきたので、出来ることなら続けさせたい」
これが真相ですがE子は
「約束と違うし、話も違う」
と大騒ぎ。私は
「それは妻が気持ちを云っただけである」
と主張した。しかし、E子がなんの権利、目的で我が家に「確認する為」出向いたのか!腑に落ちないままであった。
さて、電話機売買の件も重なり
「そのような行動を取ったこと事自体が問題だ」
としてS夫婦は夜の8時頃、妻を会社に呼びつけて、“身体で払います”と強要されて書かされた、(さらに訂正した)先の念書を一方的にその場で粉々に破り、それも、ゆ〜っくり、ゆ〜っくり、両手を自分の目の高さにかざし、そして妻を睨みつけながらビリ〜ッ、ビリ〜ッ・・・という具合にです。(想像して見てください)そして次の瞬間、左手で私を指差しながら
「書き直せ〜!」
と大声で怒鳴りながら、Sの隣に座っていた私の妻に投げつけたのです。
ガマの油売りじゃ〜ないが「春は3月、落花の舞いっ!」ってなもんです。
妻は私が何も言わないのを夫が悪いんだから仕方ない、とでも思ったのか
「何と云われても仕方ありません、何と云われても仕方ありません」
と、只頭を下げているのみでした。そのときの私は彼等の言動を「しっかり」と目に焼き付けていたのです。
忘れるものではありません。
「乗っ取り」のその手口とは
同席していたOがこう云いました。
「加藤さん(つい先ほどまで社長と呼んでいた)『KENJI』の商品化を加藤さんに代わって引き継いでくれる人がいたら任せる気があるかい?」
「そりゃ〜居ればいいが、心当たりがないんだよ」
「いや、居るんだよ」
「え〜?」
「実はSさんが加藤さんに代わってやっても良いそうだ」
「それでは、いままでの付き合いもあるし任せましょう」
と早速、契約に入ったが電話機の問題が解決していなかったので
「じゃ〜こうしましょう、残金の30万円は契約金という事で相殺とし、紳士協定で一切の文書はナシにしましょう」
約定書として(要約すれば)
1)外国特許の専用実施権をSに任せる。
2)販売本数1本につき30円を加藤 筧治に支払う。
特約事項として
「乙(S)は甲(加藤 筧治)の承諾なしに第三者に権利を使用させることはない。
平成元年1月13日 双方署名捺印が終ったところで大変なことが起きました。