WRC・ラリー問題 

ラリーコースは絶滅危惧種・希少種の宝庫 
ーWRCラリーコース(新得)調査報告ー
                               

7月2日に,新得町のラリーコースの調査を行いました.
ナキウサギ

 これまでの調査で,林道のすぐ脇にナキウサギの生
息地が複数あることを確認していましたが,今回もこれらの生息地でナキウサギが岩の隙間に引き込んだ植物を確認することができました.ここはナキウサギの分散個体が一時的に生息しているような場所ではなく,安定的に生息している場所である可能性が高いと考えられます.
 爆音をたてるラリーカーの暴走は,林道脇に生息するナキウサギに大きなストレスを与えることでしょう.
クマタカ

 「PENKE」コースのスタート地点で,上空を飛翔するクマタカ(RDB絶滅危惧1B類・北海道RDB絶滅危惧種・種の保存法指定種)を確認しました.このあたり一帯がクマタカの生息地になっていることはすでに知られていましたが,この日は調査参加者全員がそのことを実感しました.

クマゲラ

 「PENKE」コースのスタート地点のすぐ近く(大雪山国立公園内)で,クマゲラ(RDB絶滅危惧2類・北海道RDB絶滅危急種・国指定天然記念物)の巣を発見しました.クマゲラは毎年新しい巣穴を掘るわけではなく,同じ巣穴を何年も使いますので,来年以降もこの巣穴を使うことでしょう.

絶滅危惧植物・希少植物

 林道の周辺にはクシロワチガイソウ(RDB絶滅危惧2類・北海道RDB絶滅危急種)のほか,比較的希少なオオヤマオダマキ,トガスグリなどが見られました.ラリーカーに轢かれたりタイヤが巻き上げる土砂に埋もれる恐れがあるほか,ラリー前に行われる林道脇の草刈で損傷される可能性もあります.なお,昨年林道脇で確認したオオタカネイバラは,今年は確認できませんでした.昨年の草刈の犠牲になったのでしょうか.

ヒグマ

 林道にはヒグマの糞がありました.昨年もこの林道上でヒグマの糞や足跡を確認しています.ここはヒグマやエゾシカ,キタキツネなど,森にすむ動物たちの生活の場であることを再認識しました.

 
野鳥

 野鳥が餌をとるために林道上を歩いていることがしばしばあります.この日は巣立ち間もないアオジの幼鳥が,林道で親鳥から餌をもらっていたほか,エゾライチョウ(RDB情報不足・北海道RDB希少種)を何羽も見ました.昨年は,ウソの若鳥が林道脇で餌を探しているのも観察されました.


ジムグリ(ヘビ)

 ヘビは道路を横切ることがしばしばあります.高速で走るラリーカーは,ヘビにとっては凶器以外の何者でもありません.

珍事!?

 ナキウサギの生息調査をしていると,木の枝からぶら下がっているものが・・・ よく見ると,何と釣り針に引っかかったコウモリでした! 恐らくフライフィッシングの竿にひっかけられたのでしょう.ちなみに犠牲になったのは
コテングコウモリ(RDB絶滅危惧2類・北海道RDB希少種)でした.なお,通りがかった釣り人によると,オショロコマ(RDB準絶滅危惧種・北海道RDB希少種)とニジマスが釣れたとのこと.

これらのほかにも,この地域にはシマフクロウ(RDB絶滅危惧1A類・北海道RDB絶滅危機種・種の保存法指定種・国指定天然記念物)やオオタカ(RDB絶滅危惧2類・北海道RDB絶滅危急種・種の保存法指定種)なども生息しています.

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