原告 (省略)・被告 北海道知事他1名
2006年4月26日
札幌地方裁判所民事第5部 御中
原告ら訴訟代理人
弁護士 市 川 守 弘
他6名
準備書面(1)
被告の本案前の答弁に対する反論
被告は、答弁書において、「適法な監査請求を経ていない」ことを理由に、本件訴えの却下を求める。本準備書面は、この点について反論するものである。
1 住民監査請求の意義
最高裁判所平成2年6月5日第3小法廷判決(平成元年(行ツ)第68号)は、住民監査請求における対象の特定の程度についての判決であるが、主文について反対意見を述べた園部逸夫裁判官は、住民監査請求の意義について、以下のように述べる。そして、この園部裁判官の住民監査請求についての考えは、一般には多数を占める考えである。((「新版 裁判住民訴訟法」三協法規 221ページ)
「住民監査請求は、地方公共団体の執行機関又は職員について、財務会計上の不正な行為等があることを住民が新聞記事その他何らかの情報により察知し、それが法的な観点から見て違法又は不当の疑いがあると考える場合に、そのような事実があるかどうかについて、監査委員に監査を求める制度である。すなわち、住民監査請求は、住民が監査委員の職権の発動を促すことを認めたにすぎず、行政機関、職員又は私人等の特定の相手方に対して、具体的に何らかの請求をする当事者適格を求めたものではない。住民監査請求を受けた監査委員は、請求に理由がないと認めるときは、理由を付して請求人に通知し、かつ、これを公表し、請求に理由があると認めるときは、関係の機関又は職員に対する所定の勧告をし、その内容を請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならないとされているにすぎないのである。つまり、現行の住民監査請求制度には、審査請求あるいは住民訴訟における請求の棄却又は認容という制度がそもそも存在しないのであり、・・・・同様に、住民監査請求には、請求要件の欠けつを理由とする却下の制度も定められていない。審査請求の場合には、審査庁又は処分庁による認容、棄却又は却下の意思表示の方法として、裁決又は決定の方式が定められているが、住民監査請求には、そのような方式も定められていないのである。また一般に住民監査請求前置主義と呼ばれるものも、審査請求前置主義とは、およそその建前を異にしている。すなわち、行政事件訴訟と審査請求とは、行政庁の特定の行為又は不作為を争うという点では、審判機関を異にするほかは全く同一であるから、訴訟と前置主義との間に整合性があり、例えば、法は、審査請求前置主義をとる場合には、「審査請求又は異議申立てに対する裁決又は決定を受けた後でなければ」とか、「不服申立てに対する決定を受けた後でなければ」という規定の仕方をしてるが、住民訴訟と住民監査請求との間には、形式上そのような整合性が全く欠けており、法242条の2第1項は「普通地方公共団体の住民は、前条第1項の規定による請求をした場合において、同条第3項の規定による監査委員の監査に結果(中略)不服があるとき、」住民訴訟を提起できると規定してるのにとどまるのである。」
このように、住民監査請求の制度は、基本的に住民が監査委員の職権の発動を促すことを認めたものであって、行政不服審査制度などとは異なり、前置主義についても「およそその建前を異にしている」とするものである。
そこで、園部裁判官は、前記判決において、
「住民監査請求において当該行為等について特定がないということは、当該請求の門戸を閉ざす理由にはならないというべきであるが、住民監査請求制度に関する立法上の不備あるいは法解釈の未成熟により、監査請求の却下ということが事実上行われることもありうる。しかし、裁判所としては、右のような却下の措置を不服として提起された住民訴訟について、監査請求を経ていないとかあるいは監査請求をしていないと見て、請求人の住民訴訟を却下することは許されないと解するのが妥当である。」とする。
このように、住民監査請求制度は、そもそも疑惑の段階においてさえ、財務会計行為の現状を監査の上明らかにし、必要な措置を講ずべきことを請求することを認める制度であって、この住民監査請求の段階において、請求の対象等の、請求のための手続的要件の具備を厳格に求めることは住民に過重な負担を強いるものであり、住民監査請求の制度をないがしろにするものである。(「新版 裁判住民訴訟法」三協法規 218ページ以下にこの制度趣旨についての多数の見解について触れている)
2 本件での「不受理」行為は住民監査請求拒否処分である
地方自治法242条4項は、監査委員が住民監査請求に対する対応について規定している。同項によれば、請求に理由があると認めた場合には執行機関又は職員に対し必要な措置を講ずべきことを勧告し、請求人に通知し、かつ公表し、請求に理由がないと認める場合には、理由を付してその旨を書面により請求人に通知し、公表することになっている。
つまり、住民監査請求の制度として「不受理」という手続は定められていない。したがって、本件監査請求を「不受理」としたことは、監査委員が、自らの職責を一方的に放棄した単なる住民監査請求拒否処分である。
原告らは、このような監査委員の本件住民監査請求拒否処分に対し、監査委員が請求した監査をしないことが明確であるから、法242条の2第2項3号の「監査委員が請求した日から60日を経過した」ものと同視し、あるいはそもそも1号の「監査の結果に不服がある場合」に該当すると考え、本件住民訴訟を提起したものである。
3 仮に「却下決定」とした場合
被告らは答弁書4ページにおいて、本件の「不受理」は「監査請求の要件を満たさないものとして却下することと同義」とする。そこで、以下本件「不受理」が「却下決定」とした場合と仮定して検討することとする。
ア 法律上は明確ではないが、自治体の実務においては、住民監査請求書が提出された場合、要件審査を行うことになっている。この要件は自治法、自治令などの形式的な法定要件のことである。(「実務住民訴訟」ぎょうせい 42ページ以下、「住民訴訟・自治体争訟」新地方自治法講座5 ぎょうせい 34ページ以下等)
ここでは監査請求手続が明瞭に違法である場合を除いては、監査委員は当該請求に対して監査を行うべきである、とされている(前掲「住民訴訟・自治体争訟」)。ここでの審査はあくまで形式的な適格性の審査であって、例えば、当該自治体の住民でない、明らかに請求期間を経過している、財務会計上の行為の問題ではない、事実証明書類が全くない、などについての審査である(前掲「実務住民訴訟」)。審査の結果、証拠書類の不足などの場合のように補正が可能であれば、補正命令を出し、それでも請求人が補正に応じない場合に、あるいは請求期間の経過、財務会計上の行為ではない、など明らかに補正のできない場合には、監査委員は却下決定をおこなうとされている。
イ しかし、監査請求の要件が具備されているのに、監査委員が却下した場合は、住民訴訟の訴えは適法なものとして扱われ、住民訴訟における住民監査請求前置の要件に欠けるところはない、とされている(最高裁判所第3小法廷平成10年12月18日判決(平成10年(行ツ)第68号)、広島高裁昭和63年4月18日判決、行集39巻3・4号265ページ)。
このうち、最高裁の判断は次のとおりである。
この事案は、形式的要件に欠けるとして却下された住民監査請求に対し、補正して再度監査請求したところ、次には一事不再理の原則を理由に却下されたため住民訴訟を提訴したものである。つまり、住民監査の内容ではなく手続要件が欠けるとして違法に却下された場合のケースである。
最高裁は「監査委員が適法な住民監査請求を不適法であるとして却下した場合、当該請求をした住民は、適法な住民監査請求を経たものとして直ちに住民訴訟を提起することができるのみならず、当該請求の対象とされた財務会計上の行為又は怠る事実と同一の財務会計上の行為又は怠る事実を対象として再度の住民監査請求をすることも許されると解すべきである。」「住民監査請求の制度は、住民訴訟の前置手続として、まず監査委員に住民の請求に係る財務会計上の行為又は怠る事実について監査の機会を与え、当該行為又は怠る事実の違法、不当を当該普通地方公共団体の自治的、内部的処理によって予防、是正させることを目的とするものであると解される。そして監査委員が適法な住民監査請求により監査の機会を与えられたにもかかわらずこれを却下し監査を行わなかったため、当該行為又は怠る事実の違法、不当を当該普通地方公共団体の自治的、内部的処理によって予防、是正する機会を失した場合には、当該請求をした住民に再度の住民監査請求を認めることにより、監査委員に重ねて監査の機会を与えるのが、右に述べた住民監査請求の制度の目的に適合する」
このように最高裁は判断し、監査委員が適法な住民監査請求を不適法であるとして却下した場合には、適法な住民監査請求を経たものとして直ちに住民訴訟を提起できるし、再度の住民監査請求もできる、とするものである。
また、一般にも、およそ監査委員が、実体についての判断をせず、形式的理由から住民監査請求を却下した場合については、「引き続く住民訴訟は、地方自治法242条の2第2項3号の60日を経過しても監査又は勧告を行わない場合として提起したものに当たる」(「改訂行政事件訴訟の一般的問題に関する実務的研究」法曹会 355ページ)と解されている。
これに対し、広島高裁の判断は、以下のとおりである。
「控訴人らのなした監査請求の内容は、下松市が被控訴人に対し本件新増築事業について地方財政法、義務法により七八六五万六〇〇〇円の国庫負担金請求権を有するに拘わらず、下松市長が六一四五万七〇〇〇円の交付申請権をなし、同金額の交付を受けたのみで、これを越える一七一九万九〇〇〇円については適正化法によるに交付申請ないし不服申立をしなかつたため、同市は右同額の損害を蒙つたが、右は下松市長が同市の財産の管理を違法、不当に怠つているものであるとして、下松市の損害回復のため必要な措置を講ずることを求めるというものであつたこと、これに対する下松市監査委員の監査請求却下決定は、控訴人ら主張の国庫負担金請求権はいまだ下松市に帰属しておらず、地方自治法二四二条の監査請求の対象となる財産に該当しないこと、控訴人ら主張の一七一九万九〇〇〇円に関し適正化法所定の交付申請や不服申立をしなかつた事実は同条の財産の管理を怠る事実に該当しないことを理由とするものであつたことが認められる。そしで、右事実によれば、下松市監査委員のなした監査請求却下決定は、控訴人らの監査請求を不適法として却下したものではなく、その内容に立入つて、対象となる権利が監査青求の対象となる財産に該当せず、財産の管理を怠る事実も存在しないなど実体的な判断をなしたうえ却下決定をしたものであることが明らかであるから、下松市監査委員は実質的には監査請求を棄却する決定をなしたものとみるのが相当である。したがつて控訴人らは適法に監査請求を経たものとみるべきであるから、被控訴人の前記主張は失当である。」
この判決は、監査委員の住民監査請求を却下した理由が、監査請求の内容についての判断であるとしたものである。
したがって、監査委員の却下の理由が、形式的に適法な住民監査請求を不適法として却下したか、事実上内容に立ち入った上で却下したか、にかかわらず、いずれの場合にも住民訴訟が提起できるものである。
4 本件の「不受理」の理由はなにか
ア 本件住民監査請求は、次の理由から「不受理」とされた(甲第12号証)
「請求人が主張する森林のもつ公益的機能とは、水源のかん養、土砂流出の防止、二酸化炭素の吸収など様々な機能をいうものであり、その数値化は、これらの機能が持つ価値を住民にわかりやすく示すため、貨幣価値に置き換えて年間額として試算したり、点数化したものなどであって、およそ地方自治法上、地方公共団体の「財産」とされるものではない。したがって、請求人の主張する森林の公益的機能の損害は、北海道の財産上の損害と認めることはできない。」
つまり、「公益的機能の損害」は「財産上の損害」ではないので、地方公共団体の蒙った損害はない、としている。
また、答弁書5ページでは、この「不受理」理由に加えて、本件訴訟において過剰伐採と主張している点について、「過剰伐採による本件樹木損害は挙げられていないのであって、全く請求の特定を欠くものである」、と主張する。以下、この2点について検討するが、住民監査請求自体は、前者の「公益的機能の損害」は「財産上の損害」ではないという理由しか明記していないのであるから、後者の「請求の特定を欠く」とする理由は、被告の言う「却下」の理由ではないので、このような60日を経過した後の却下理由の追加は、単純に監査期間を徒過したものとなるに過ぎないのであるから、却下理由の追加自体認められるものではない。以下、それぞれについて詳しく検討する。
イ「公益的機能の損害」は「財産上の損害」ではないのか?
本件住民監査請求書では、まず1項において、(1)から(3)までの契約を明記し、本件で問題となる財務会計上の行為を特定している。この財務会計上の行為は、「道有林野の産物の売買契約」、あるいは「道有林野の保育伐併用事業請負契約」である。これらの契約の締結、履行に違法があった、と主張しているのであるから、ここで問題となる北海道の財産は、「道有林野の産物の売買契約」にあっては「道有林野」の産物たる立木であり(簡単に言えば、切られるべきではない木が切られた)、「道有林野の保育伐併用事業請負契約」にあっては、その請負事業が行われる土地であり(例えれば、建物の屋根の修繕請負契約における建物そのもの)、つまりは北海道が所有、管理する財産である。住民監査請求書を見れば、一目瞭然に、道有林野が違法に伐採され、また道有林野に違法に集材路が建設されることによって道有林野に被害が発生し(前記の建物に例えれば、屋根の修繕請負契約で、壁に穴を開けた場合)、その結果、損害が発生したと主張していることは容易に理解できる。
被告らが、主張するのは、この違法伐採、違法な集材路建設によって、傷ついた道有林野の被害をどのように財産的に評価するか、という問題を、勝手に「財産」と置き換えているに過ぎない。
ウ 森林(道有林野)の持つ価値
財産としての道有林野は様々な価値を持っている。訴状6ページで指摘しているように、北海道は、平成14年3月の条例第4号の制定までは、北海道道有林野事業特別会計条例によって、森林(道有林野)の、木材としての経済的価値しか評価していなかった。しかし、平成14年3月の森林つくり条例の制定によって、北海道自らが、森林(道有林野)の公益的価値という側面を全面的に重視する政策に変更した。この公益的価値は、北海道自身、甲第9号証の「森林機能評価基準」として認め、かつ同じく甲第11号証によって、「北海道における森林の公益的機能の評価額について」として、この価値を財産的に評価し、11兆1,300億円の年間価値と評価できるとしている。
甲第9号証、同第11号証にも明らかなとおり、北海道は「森林」の機能を分析し、「森林」の各機能に基づく価値を財産的に評価しているのである。つまり、公益的機能をもつ評価対象は、「森林」であり、この森林を評価した結果、公益的機能を有する面においてその価値を財産的に評価している。
エ 監査請求の対象となる財産は「道有林」・損害額は公益的機能価値の評価額
監査委員及び被告らは、この北海道自らの考え方に従って判断すれば、{1} 本件住民監査請求の対象となる財産は、道有林野であり、また、{2} 違法な伐採あるいは道有林内に違法な集材路が建設されたことによる損害の計算において、北海道の森林全体がもつ公益的価値の評価額「11兆1,300億円が、伐採面積に応じた割合において」損害を受けたものであると主張していることは当然に理解できるところである。
5 監査委員の「不受理」は違法である。
被告らの言うように、本件「不受理」を却下決定と見た場合には、次の点で違法である。
第1に、住民監査請求の要件自体に欠けるところはない。したがって、前記した最高裁の判決に従い、本件住民訴訟は訴訟要件に欠けるところはない。もし仮に、監査委員が、対象たる財産としての「森林」と、その価値評価としての公益的機能評価額との関係が、不明確である、と判断したならば、補正を要求すればよい。請求人は、より監査委員にも判る様に補正したであろう。補正を命ずることなく却下するのは、住民監査請求の制度をないがしろにするもので、地方自治法に従って60日以内に監査をしなかったもの、である。
第2に、監査委員の前記「不受理」の理由は、実際は、住民監査請求にかかる3つの契約により、「財産上の損害が発生していない」と判断しているもので、これはまさに内容について判断している。ゆえに、前記広島高裁の判断に従えば、住民訴訟は適法となるものである。
6 請求の特定の問題
前記のとおり、この「不受理」理由は、本件訴訟において追加されたもので、監査請求の際に、「不受理」とされた理由にはなっておらず、監査請求前置主義との関係では、自治体側が、60日以降に追加した「不受理」ないし却下理由は、認められるものではない。なぜなら、このようなことが認められれば、とりあえず却下し、あとから理由を見つけ出して、提起された住民訴訟で争う、という住民監査請求の制度を踏みにじる結果となるからである。まして、「不受理」ないし却下決定は、形式的要件具備の判断であるから、後日にその理由が追加されるということ自体がありえないことである。なぜなら監査委員は形式的要件すら、慎重に吟味していなかったことを認める結果となるからである。
このように、請求の特定性という理由を追加すること自体が違法な主張であると考えるが、以下、一応の反論をすることにする。
ア 本件住民監査請求にかかる財務会計上の行為
前記したとおり、これは、「道有林野の産物の売買契約」、あるいは「道有林野の保育伐併用事業請負契約」という3つの契約である。過剰な伐採というのは、これらの契約の履行にあたり、計算すれば1080本の伐採になると指摘 している。
被告らが答弁書6ページ言わんとする趣旨が不明であるが、最高裁平成2年6月5日第3小法廷判決を挙げている。ただ、この判例は、住民監査請求において、その対象となる財務会計上の行為は、どの程度特定されていなければならないのか、についての判例である。本件では、すでに述べているとおり、財務会計上の行為について、3つの契約を挙げており、明確に特定されている。したがって、この趣旨で特定性に欠けるという主張は明らかに当たらない。
イ 損害額の問題なのか?
また答弁書では「本件樹木損害は挙げられていない」とするので、損害額が不明とする趣旨とも読める。しかし、立木が売買本数以上に伐採されていることは指摘しているので、損害発生は単に金額算出の問題でしかなく、「監査の機会を与える」(前記最高裁平成10年12月18日判決)住民監査請求において、金額の明示までは要求されていない。そもそも、伐採による被害評価額については明示しているところであり、あえて監査委員が金額で特定まで求めるのであれば、補正を要求すれば足りるところである。補正命令もせずに「不受理」とするのは、違法であり、原告らは適法に住民訴訟が提起できなければならない。
7 結論
以上検討した結果、本件住民監査請求を「不受理」としたことは、監査委員の違法な行為であり、したがって本件住民訴訟は、地方自治法242条の2第2項1号「監査の結果に不服がある」場合、ないし同項3号の「60日を経過しても監査を行わない場合」に該当し、被告らが主張する本案前の抗弁は全く当たらないことが明確である。
そもそも、住民監査請求は、「住民訴訟の前置手続として、まず監査委員に住民の請求に係る財務会計上の行為又は怠る事実について監査の機会を与え、当該行為又は怠る事実の違法、不当を当該普通地方公共団体の自治的、内部的処理によって予防、是正させることを目的とするものである」(前記最高裁判決)。したがって、監査委員は住民監査請求書の補正が一見して不可能でないかぎりは、監査をはじめなければならない。本件では、補正命令すら発することなく、簡単に本件監査請求を「不受理」とし、あまつさえ住民訴訟において「不受理」を理由に「訴えの却下」まで求めている。このような北海道監査委員及び被告らの姿勢は、行政のあり方としてあってはならないものである。被告らの姿勢は、「何が何でも請求の内容には触れたくない」というなりふり構わぬ姿勢であるが、これは住民からの財務会計上の行為についての違法、不当な指摘に対する一方的な拒否であり、このようなことが認められれば、どのような場合でも住民監査請求を「不受理」にして住民訴訟において「訴えの却下」を求められることになってしまい、住民の行政に対する監視、是正要求が、ことごとく認められないという憲法の地方自治の本旨を否定する結果となってしまう。
原告らは被告らに対し、早期に本案についての答弁することを要求するものである。