大 規 模 林 道 問 題
全国ネットワーク

緑資源幹線林道事業期中評価 「評価委員会ってナニ?」という疑問が・・・

緑資源幹線林道事業期中評価 
大朝・鹿野線「戸河内・吉和区間」に関する意見書

 提出日:2006年7月7日 
 

提出者:〒272-0825  千葉県市川市須和田2−5−8 
大規模林道問題全国ネットワーク 
事務局長・加藤彰紀  


 去る6月27日〜29日に開催された期中評価委員会の「現地調査、地元公聴会」のあり方についてまずご意見を申し上げます。
「現地調査、地元公聴会」に「戸河内・吉和区間」を選定されたこと、公聴会発言者の構成についても一定の配慮がされたものと率直に評価するものです。しかし、その運営方法の不透明さ、不公正さを指摘しないわけにはいきません。

まず、「現地調査」を非公開とした問題です。二軒小屋〜西吉和区間は環境上特段に配慮しなければならない区間でありますのでそうした判断には同意できますが、多くの情報を提供し、問題を指摘するNGOを排除したことは理解できませんし、同意も出来ません。事業者である緑資源機構が案内・説明することは当然でしょうが、それに地元自治体職員が同行しながら、地元NGOを欠いたことは不公正そのものです。問題の箇所について、双方の説明、意見を聞いてこその期中評価委員会なのではないでしょうか。

 皆さんが行われた現地調査は、重要な欠陥がありはしないでしょうか。
 皆さんがお歩きになった頭の上に多くのカエルの産卵塊があったことにお気づきだったでしょうか。林道周辺に生息する植物群落とともに生態系をなす実態をどれほどに見られたのか疑問に思います。それは、公聴会における委員の「林道周辺の植物群落と渓畔林の植生とはどう関係するのか」の質問に伺えます。その質問には、「林道開設によって入り込んだのであれば、緑資源幹線林道の工事をやっても大丈夫。一時的に失っても、また元に戻る」という意図が隠れていないでしょうか。

新規開設箇所についても、疑問を持ちます。新規開設のルート上に多くの大径木が存在することはご確認いただいたように思われますが、断層の上を通る危険性についてはいかがでしょうか。皆さんが車で通過された箇所に断層帯であることを如実に示す箇所があり、どのような説明を受けられたのか疑問です。新設によってショートカットされる部分こそ、その必要性を、工事中止となった場合でも重要な環境教育の場になることの両面から検証する必要があった箇所です。

既に完成した箇所ですが、土石流によって崩れてしまった横川(ヨコゴウ)橋付近も現地調査をされたと思われますが、いかがだったでしょうか。この箇所を自然災害と見られるのでしょうか。私たちは全国の緑資源幹線林林道において同様のことがいくつも起こっていることを指摘しないわけにはいきません。わけても、北海道の03年8月の台風による平取での被害は、緑資源幹線林道によって拡大されたもであることを見逃すことは出来ません。そして、何よりも重要なことは、緑資源幹線林道において重大な災害が起きても、その原因調査を林野庁も、緑資源機構も行っていないことです。修復は行っても、その原因を明らかにしたという話を聞いたことがないのです。横川橋の土石流で川に押し流された大量の土砂とごみはやがて広島県の重要な景勝地である三段峡へと流れ込み、重大な問題を引き起こすことでしょう。緑資源幹線林道開設によってもたらされた負の遺産をしっかりと見ていただけたのでしょうか。

 次に、「公聴会」についてであります。公聴会という公の会を、国民の税金を使って開催しておきながら、「議事録」を作らないという理由がわかりません。これまでも、そうだったとのことですが、これまで指摘がなかったからなどは、開き直りもいいところです。私たちも監視の目が弱かったと反省しますが、社保庁に負けず劣らず国民の税金を使っているとの認識に欠けた林野庁といわざるを得ませんし、そのような方針を決定した「期中評価委員会」の学識経験者の見識が問われる問題です。

発言者の発言メモを任意に提出してもらって、公聴会の議事録にかえるなど、カエルもびっくりです。議事録を取らないことが、どのようなことなのか、傍聴してハッキリとわかりました。それは、無責任な発言をしても何も残らない。まじめに、発言しても何も残らない。ということだということを知りました。

「現地調査」から、NGOを排除し、「公聴会」の議事録を作らない「期中評価委員会」は、何に基づいて議論をし、結論を出すのでしょうか。まったく不透明です。

 評価委員会事務局は、林野庁の緑資源機構を管轄する部署。委員の任命は林野庁で、NGOは排除。事業主体は「緑資源機構」と言うものの、林野庁の天下り組織。緑資源幹線林道の企画立案は林野庁。委員会は非公開。議事録はかなりの時間を経ないと出来ない。出来た議事録は公開しているとはいうものの、農水省の情報公開室にいっても置いてない。その情報公開室も昼休みは閉まっている。議事録には発言者の名前もない。審議時間もこのところは3〜4回ぐらいで、始まったと思ったら終わっているという具合。結論が出てから読む議事録にはどんな意味があるのでしょうか。……

こうした実態は、「評価委員会ってなに?」の疑問をますます大きくしています。評価委員会のみなさま、学識経験者の良心と見識をもって、こうした疑問にお答えいただきたいと思います。


 このページのトップにもどる
大規模林道問題のメニューページにもどる  


十勝自然保護協会ホームページへもどる