ベア・マウンテン問題

開示請求資料から浮かび上がるベア・マウンテンの問題点
開示請求資料からみたベア・マウンテンの問題点

目的
加森観光から提出された危険動物飼養許可申請書によると,飼養の目的は「客寄せ等営業」である.管理・運営の資料からも,研究や保護・教育といった役割が見出せない.十勝自然保護協会の社会的役割についての質問に対し,「出来るだけ人為的措置を施していない環境下で生活するヒグマを見ていただくことで,ヒグマという動物に対する理解を深めてもらうことを重視しております」と回答しているが,観客前での給餌やベアポイント(展望施設)前の擬岩・人工洞窟など,自然の展示とはかけ離れている.また15haに雄20頭の放飼は自然状態ではありえない高密度であり,縄張り争いが生じる可能性がある.

餌やり
「クマの管理」によると,「サブパドック内で給餌」としながらも,日に3?4回,作業員が歩道橋等から配合飼料(ペレット類)を給餌するとしている.ベアマウンテンバスの側面には給餌装置が取り付けられ,バスにえさ置が固定されている.ベアポイント(展望施設)の観覧スペースにも,給餌装置が複数設置されている.餌で観客の近くにクマをおびき寄せる意図は明らか.
 日本クマネットワークからの餌付けに関する質問に対して,加森観光は「観客による動物への食べ物の提供,販売は現在,計画していない」(2006年3月5日付北海道新聞)と回答しているが,いつでもできる状態である.
 たとえ,観客ではなく飼育係が餌をやるのであっても,観客の前でクマに餌付けする行為は観光客が野生動物に餌やりをする行動を誘発する恐れがあり,非常に問題.

フェンスの安全性
1.放飼フェンスは内側に幅1m,深さ20センチの掘削防止セメント舗装をしているが,クマがセメントの下部を掘削するのは容易である.また,エキスパンドメタルを1m20cm埋設しているが,クマが爪をかけて破損する可能性がある.
2.外周フェンスは菱形金網を50cm埋設しているだけであり,クマは容易に金網を破壊,あるいはその下部を掘削して逸走すると推測される.
3.放飼フェンス・外周フェンスともにクマが立ち上がれば電気牧柵の設置していない菱形金網の部分に爪をかけることが可能であり,金網が破損する可能性がある.

バスの安全性
1.アトラクションバス製作図によると,バスの窓ガラスは強化フィルムを貼っただけであり,とりわけ窓の位置が低い前面についてはクマが襲い掛かった場合の強度に疑問.
2.故障発生時はバックホーにて牽引,乗客はバス後部の非常用扉から他の車両に乗り移るとのことであるが,実際に試演しうまく対応できることを確認したのか疑問.

サブパドックへの収容
 「クマの管理」によると,クマは毎日営業終了後から翌日の営業開始前までは,サブパドックに収容するとしている.サブパドック内で給餌されるために,集まるように習慣化するというが,広い森林に放たれたクマが,餌付けだけで毎日狭いサブパドックに収容できるのかどうか,非常に疑問.もし収容できないクマがいたら,夜間にフェンスを破って逃走する可能性がある.とくに複数のクマがサブパドックへ収容できず,それらのクマが同時に穴掘りなどの逃亡につながる行動をした場合,適切な対応ができなくなる可能性がある.
 緊急時(火災・地震・台風・施設不備・観客落下等)にも,放飼場内の飼育個体はサブパドックか獣舎に収容するとのことであるが,パニック状態の中で,作業員がクマを速やかにサブパドックに収容するのは困難と思われる.とりわけ下草が茂ってしまうと見通しがきかず,個体の確認は困難であろう.

GPSによる位置情報と警告システム
1.GPSの位置情報は15分に1回のみであり,常時位置確認ができるわけではない.施設外に逃走したり,通信可能エリア外に出た場合は,追跡が非常に困難と思われる.
2.クマが管理エリア外(放飼フェンス外:レベル2か)に出たときは,GPS位置情報システムによりパソコンに警告画面が表示され,赤色灯およびスピーカによる警告も発せられるとのことだが,放飼フェンスを越えてしまったら外周フェンスを越えるのは容易であり,警告後に直ちに対応しても施設外に逃走してしまう可能性が高い.フェンスの強度自体を改善する必要がある.また,夜間にクマがサブパドックから逸走しレベル1(放飼フェンス内側10メートルに侵入)の警報が発せられた場合の警告表示が不明.リゾートホテル宿直者はどうやって警告を確認するのか?
3.パソコンやシステムが故障した場合,位置情報や警告が伝わらなくなる.

緊急時の対応
1.クマが放飼フェンスおよび外周フェンスの外に逸走した場合(レベル3の場合),飼育係が逸走個体を捜索し,発見した場合は麻酔銃で捕獲するとしている.しかし,危険動物飼養許可申請書によると飼養作業従事者は銃砲所持許可をもっておらず,射撃の技術や麻酔銃の扱いに疑問がある.
2.電気牧柵の電源は,緊急事態に備えて二つ以上が必要と考えられるが,そのような説明がなく,緊急時対策が不明.
3.クマが施設外に逸走し,事態収拾が困難な場合は,関係協力機関に依頼し事態収拾に努めるとし,関係協力機関として警察署・消防署・新得町林務課・新得猟友会・十勝支庁を指定している.しかし地震や台風などの自然災害時は,被災地域一帯が緊急事態となるため,これら機関の協力も十分に得られない可能性がある
そのような事態を考慮するのであれば,フェンスの強化などより確実なクマの逸走防止策をとる必要がある.

 このページのトップにもどる
ベア・マウンテン問題のメニューページにもどる