4.3ティーム・ティーチングという観点で [目次へ]
4.3.1 はじめに
今回の松本先生の実践の中で試みられているものに、「ティーム・ティーチング」(協力教授、略してTT)があります。「ティーム・ティーチング」という観点で見ておこうと思います。
4.3.2 ティーム・ティーチングの形態について
そこでまず現在日本で行われているティーム・ティーチングの形態について簡単に整理して、松本先生がどのような形態での試みなのかを明らかにしておきたいと思います。
1指導分担形態による分類をしてみると次のようになります。
1 一人の教師が説明に当たり、
一方の教師が個々の指導に当たる
2 いくつかの学習グループに分け、
何人かの教師がそれぞれの指導に当たる
3 任務を明確にし、たとえば得意な分野で協力しあう
4 任務分担を決めることなくそれぞれの指導に当たる
2目的による分類をしてみると次のようになります。
1 学力や技能の習熟度に応じるためのTT
2 学習課題に応じるためのTT
3 日本語の指導に応じるためのTT
3子ども集団による分類ができるでしょう。
1 クラスを保ったままで
2 2クラス以上で
3 学年を超えて
4.3.3 松本先生の試み
松本先生は今回の授業の中で、アイヌの民族衣装については北海道ウタリ協会様似支部の李澤桂子先生と、切り紙については図工専科の宮野精子先生と、アイヌの楽器ムックリについては北海道ウタリ協会浦河支部の遠山サキ先生とそれぞれティーム・ティーチングを行いました。
指導分担では、民族衣装や楽器についてのこころみは、3の「任務を明確にし、たとえば得意な分野で協力しあう」ものにあたります。 今回は地域の専門家の人を招いてのティーム・ティーチングを行いましたが、これによって、アイヌ文化について正確な知識や技能を指導することが可能となりました。
また切り紙については1の「一人の教師が説明に当たり、一方の教師が個々の指導に当たる」形態をとっていました。
目的による分類では、民族衣装・切り紙・楽器と課題によって先生が変わっているということから2の「学習課題に応じるためのTT」といえるでしょう。
子ども集団による分類では、1の「クラスを保ったままで」の形態です。
最後に一言つけ加えると、3の2の子ども達は松本先生がアイヌ文化の学習をはじめるちょっと前に、宮野精子先生と図工で切り紙の学習をしました。そことのつながりで今回アイヌ文様の体験的な学習が可能になっています。図工科と社会科が交差してかたちで行われており、総合学習で議論されている「クロス・カリキュラム」というかたちになっています。
4.3.4 おわりに
今回の実践での成果としては、一つには、地域の専門家の人を招いてのティーム・ティーチングを行ったことで、アイヌ文化について正確な知識や技能を指導することが可能となったこと、二つめには、教科と教科の関わりについて考えることができたことなどいくつかあげられると思います。
多様な共同教授の一つの実践にすぎないかもしれませんが、これを通してある程度展望することができました。
引用文献佐藤有「教科ティーム・ティーチング」『教職研修総合特集読本シリーズ101 ティーム・ティーチング読本』 教育開発研究所
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