大雪山国立公園糠平集団施設地区整備方針検討会の報告
環境省に抗議と要望書を提出
2003年10月から2005年3月に開催された「大雪山国立公園十勝三股・糠平ふれあい自然塾検討
会」(以下「ふれあい自然塾検討会」)の議論を踏まえ,2005年11月に新たに「大雪山国立公園糠
平集団施設地区整備方針検討会」が立ち上げられました.
当会はこの検討会への参画を要望しましたが,環境省は当会を排除して検討会を進めています.こ
のために当会ではこの検討会を傍聴し,第一回の検討会の後,座長の伏島信治氏に意見書を提出しま
したが,黙殺されました.昨年より環境省は当会などの質問書に対する回答を拒否しています.話し
合いを受け入れた場合も,話し合って問題を解決しようという姿勢が見うけられません.検討会に自
然保護NGOを加えず意見書にも対応しないということは,自然保護団体の意見に耳を傾けたくないと
いうことのようです.
また今回の検討会では,ふれあい自然塾検討会での話し合いを踏まえ,コンセプトに合わせたソフ
ト事業や中核施設の検討をしなければならないはずです.ところが二回の検討会で明らかになってき
たことは,検討会は「温泉街構想」の検討の場でしかなく,中核施設はインフォメーションや観光案
内の場としてのビジターセンターということのようです.自然保護NGOを排除して新たな検討会を立
ち上げ,検討内容のすり替え・曖昧化がなされたという印象を持ちました.環境省が国立公園の中で
どのような役割を担い,どのような事業を行なうべきかを考えるなら,単なるインフォメーション施
設や観光施設にどれほどの意味があるのか疑問です.
そこで,当会と北海道自然保護連合は環境省に抗議と要望書を提出しました.
以下にこれまでの検討会のあらましを紹介します.
【第一回検討会・2005年11月17日開催】
事務局からこれまでの経緯が簡単に紹介され,糠平の現況,アンケート調査の説明などの後に,糠
平温泉をどのような場として位置づけるかというコンセプトについての話し合いが行なわれました.
この中で,「森林再生の場」との意見が出され,森林開発という負の遺産や歴史を利用し,森林保全
についてプラスにとらえるべきなどの意見が出されました.自然や静けさを求める人が多いことから
自然や健康に関る活動の場が望ましいという意見が出されたほか,廃屋の問題や航空写真の用意の要
望などが出されました.
【第二回検討会・2006年1月31日開催】
事務局から以下の二つの整備構想案が提示されました.
プラン1.「森のなかの温泉街」-山と湖を望み,静かにたたずむ温泉街づくり-
森に囲まれた温泉街の雰囲気づくり,インフォメーションの場としてのビジター
センター,自然体験,森林浴などのフィールドの整備を行なう.
プラン2.「心と体のリフレッシュ温泉」-体を動かし,休んで…温泉と健康の街づくり-
温泉街の雰囲気を演出し,温泉と観光の情報拠点となるビジターセンターを整備するほか,サイク
リングロードや野外レクリエーションの場としての整備を行なう.
説明の後の話し合いで出された意見
〈糠平の関係者〉 ビジターセンターの位置はアクセスを考えると大雪グランドホテルの跡地のほう
が適している.廃屋の解体の要望.オートキャンプ場についての賛否.星空やダイヤモンドダストの
見られるスポットづくりなど.
〈学識経験者〉 廃屋の撤去に新しい価値を付加し,余計なものはあまりつくらない.ビジターセン
ター近くに「見せ場」が欲しい.歩道は周遊ルートがのぞましい.森林セラピーの拠点となる.3年
から5年程度を目安にした整備,季節に応じた対応,担い手の三つの軸での視点が大切.小鳥の村や
アーチ橋とビジターセンターの位置が重要.エゾライチョウなどもポイントになる.枝打ちや間伐と
いうメニューなど.