大雪山国立公園の問題

然別湖畔に建設予定の博物展示施設建設に関わる要望

2006年11月11日 

環境大臣 様
環境省北海道地方環境事務所長 様
環境省上川自然保護官事務所統括自然保護官 様

十勝自然保護協会 会長 安藤 御史 

然別湖畔に建設予定の博物展示施設建設に関わる要望

 さる10月3日,当会は鹿追町および十勝毎日新聞社より然別湖畔に計画されている博物展示施設について,説明を受けました.

説明によると,鹿追町は昭和54年に北海道電力から無償で譲り受けた然別湖畔の白雲山登山口にある保養施設を十勝毎日新聞社に譲渡し,十勝毎日新聞社はこれを取り壊して博物展示施設を建て替えるとのことです.

この建物は,大雪山国立公園の保護と利用に関する管理計画に「博物展示施設」とする方針が盛られている(北海道新聞10月13日付)とのことですが,国立公園の第一種特別地域でありナキウサギの生息地でもある場所に新たに施設を建設することは,景観や希少動植物の保護の観点から不適切です.

そこで当会は,鹿追町および十勝毎日新聞社に対して,下記1〜3の理由により施設建設の中止を求めました.

なお,譲渡を予定している建物は老朽化し,そのままでは使用できない状態にあること思われることから,建て替えは自然公園法に抵触する恐れがあります.

 したがって,当会は貴職がこの施設建設に許可を出さないことを求めます.

 なお,以下の項目について,11月30日までに貴職の見解を文書にて回答くださいますよう,お願い申し上げます.

1.当該地区は国立公園の第一種特別地域であり,利用より景観および生態系の保護を重視すべき場所です.新たな施設や駐車場などにより,然別湖の景観が破壊されるとともに,周辺に生息する動植物に悪影響を与える可能性があります.

2.当該地域はナキウサギの生息地であり,新たな建物の建設による騒音や振動が周辺に生息するナキウサギに影響を与える可能性があります.また,多くの人が車で訪れることによる影響も懸念されます.

3.十勝毎日新聞社によると,展示内容は,然別湖周辺の自然史のほか,松浦武四郎やアイヌ文化に関するコレクションとのことでした.松浦武四郎が然別湖を訪れたという事実もありませんし,アイヌコタンが然別湖に存在したという事実もありません.したがって,松浦武四郎やアイヌ文化のコレクションは,然別湖畔とは直接関係のないものであり,然別湖畔にこのような施設を建設する必要性はないと考えます.

4.さらに,そもそもこの保養施設の譲渡自体の有効性が問題です.この保養施設は屋根が一部朽ち落ちています.土台も腐朽していると思われ,もはや法的には建物ではなく土地利用権も終了している可能性が極めて高いものです.もし,十勝毎日新聞社が,鹿追町から「保養施設の譲渡」を受けたとして従前の「土地利用権を継続」し施設を「修繕」した場合には,十勝毎日新聞社は新しい施設を国立公園内に新築したものとして自然公園法に違反することにもなりかねません.

回答送付先 080-0101 河東郡音更町大通10丁目5番地

      佐藤 与志松方 十勝自然保護協会 (Tel & Fax 0155-42-2192)

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