美蔓ダム問題

美蔓地区の国営かんがい排水事業についての再質問書

2007年4月12日

北海道開発局長 様

帯広開発建設部長 様

十勝自然保護協会
会長 安藤 御史

美蔓地区の国営かんがい排水事業についての再質問書

 当会の2007年1月15日付けの質問書に対し、貴職から2月5日付けて回答がありましたが、この回答により、新たな疑惑が生じました。したがって、再度、以下の質問をします。

 なお、ご多忙のところ恐縮ですが、回答は5月30日までに文書にてお願いいたします。


1.「はじめにペンケニコロ川ありき」であったことについて

2001年の計画変更にあたり、6河川で環境調査を行い、その結果にもとづいてペンケニコロ川を選定した、との説明が当会に対してありました。そこで、この計画変更について報じた北海道新聞の記事を確認しました。その報道の要旨は以下の通りです。

1998年1月21日 帯広・十勝版

帯広開建が計画縮小を検討。事業は、新得町の山あいを縫う十勝川の支流ペンケニコロ川に美蔓ダムを建設し、新得、鹿追、音更、芽室、清水の五町にまたがる農地をかんがいする内容。農家戸数の減少が直接の理由だが、国の公共事業削減方針も背景にある。

1998年12月16日 朝刊全道版

道開発庁、農水省は15日、計画停滞など問題のある公共事業を見直す事業再評価をし、国営かんがい排水事業としては雄信内ダム(留萌館内天塩町)の廃止、美蔓(びまん)ダム(十勝管内鹿追町)の縮小のほか、小清水土地改良パイロット事業(網走管内小清水町など)の計画変更や三漁港の事業縮小を決めた。

1998年12月17日 帯広・十勝版

道開発庁は15日、鹿追町など管内五町にまたがる国営かんがい排水事業・美蔓(びまん)地区の美蔓ダムの計画縮小を発表した。農家戸数の減少、後継者不足などから予定通りの農業用水の利用が難しいことや公共事業の削減方針などから、道開発庁は地元の意向を聞きながら計画の見直しに取り組んだ。

 以上の報道から、1998年1月以前に、ペンケニコロ川にダムの建設が予定されていたことは明らかです。しかし、貴職は当会に対し、パンケニコロ川、ポンニコロ川、ペンケニコロ川、ペンケナイ川の環境調査を2000年(平成12年度)に、また第5西上幌内川、第6西上幌内川の環境調査を2001年(平成13年度)に行い、その結果、ペンケニコロ川に決定したと説明しました。しかし環境調査はペンケニコロ川に建設することを前提に行われており、河川を選定するための調査でなかったことは明らかです。

 また、計画変更の理由は、農家戸数の減少や後継者不足による水需要の減少と公共事業の削減方針であったことが明らかになりました。

質問1 貴職の2006年11月30日付けの回答「2『2.当初計画を隠していた疑惑』について」において、「…この当初計画は、平成13年度の計画変更によって、貴協会に配布しましたパンフレットにあるとおり新得町のペンケニコロ川にダムを建設する計画に変わっています」としています。しかし、上記新聞記事によれば1998年(平成10年)1月以前にペンケニコロ川にダムの建設が予定されていたことは明らかです。このような事実経過をきちんと当会に対して説明しなかったことについて、貴職の見解を求めます。

質問2 環境調査に基づいて河川の選定を行ったのではないことは明らかであり、計画を白紙に戻し再検討することを求めます。貴職の見解を明らかにしてください。

質問3 規模縮小の理由として、公共事業の削減方針があったことを説明しなかった理由を明らかにしてください。

2.第6西上幌内川を水源にした計画について

「水需要の減少に伴い、当初計画のダム建設場所である第6西上幌内川を水源とした場合の検討を行っております」、「変更計画案で当初計画のダム建設場所である第6西上幌内川を水源とした場合、190万立方メートルの貯水池が必要になるとの結果を確認しています」と貴職は回答しました。

質問4 この計画での貯水池というのはダムではなくため池のことを指していると思われますが、当会が質問したのは「上幌内川のダムの規模を小さくするという検討を行ったのか、行ったのであれば、いつどのような検討を行ったのか、行っていないのであればその理由を明らかにしてください」ということです。質問に対する回答となっていませんので、再度、具体的な回答を求めます。

3.計画変更に伴う事業費の増大について

前回の質問で、1993年の当初計画から2001年の現行計画への変更において、ダムの貯水量が半分近くに減少したのに事業費が増大したのは不可解であり、理由を説明するよう求めました。これに対し貴職は、
 「水需要の減少に伴う当初計画から現行計画に至る施設規模は、貯水池規模が630万立方メートルから340万立方メートルと290万立方メートル減少し、貯水池位置の変更や受益地の変更に伴う用水路の延長が約160kmから約146kmと約14km減少しています。

 一方、事業費につきましては、平成4年度単価で算出した当初計画の470億円から平成10年度単価で算出した現計画の530億円に増加しましたのは、物価変動等に伴う約72億円の増と、前に示しました貯水池規模の減少及び用水路延長の減少による約12億円の減をあわせ60億円の増となったものです」と回答しました。

質問5 公共事業の削減方針も事業の縮小の理由になっていますが、事業費の増大はこの方針に反するものです。なぜ方針に反する計画にしたのか、理由を説明してください。

質問6 総務省統計局の発表によれば平成10年の物価は平成4年の物価の4.4%増に過ぎませんので、平成4年度の470億円は平成10年に491億円と計算されます。つまり21億円の増加です。しかも470億円は第6上幌内川における当初計画の事業費であり、ペンケニコロ川のダム計画は当初計画より規模を縮小しているので、事業費は当初計画より少なくなるはずです。物価変動で72億円も事業費が増加したという貴職の説明は到底理解できません。それぞれの計画における具体的な事業費の内訳を明らかにし、納得のいく説明をしてください。

4.受益者数について

質問7 貴職が受益者としている数字は、水の供給を望んでいる農家数なのか、それとも農家の要望とは関係なく、かんがい対象地域の農家戸数を示したものかを明らかにしてください。後者であれば、農家の要望を聞いて戸数を確定することを求めます。これについて貴職の見解を明らかにしてください。

回答送付先

080−0101 河東郡音更町大通10丁目5番地
佐藤与志松方 十勝自然保護協会 (Tel & Fax 0155−42−2192)