美蔓ダム問題 |
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美蔓地区の国営かんがい排水事業の見直しについての申入れ
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2007年1月15日 北海道開発局長 本多 満 様 十勝自然保護協会 美蔓地区の国営かんがい排水事業についての質問書 当会の2006年11月8日付申し入れに対し,貴職から2006年11月30日付で回答をいただきましたが,回答内容は種々の点で当会の認識と異なり,さらなる疑問が生じました.その後,2006年12月23日付北海道新聞(別添コピー)でこの事業について報道されました.その報道内容を検討しましたところ,当会の疑問はさらに膨らむこととなりました. そこで,貴職に質問をさせていただきます.貴職は「当方が貴協会の指摘を何ら検討していないと認識されていることについて、相互の理解に一部齟齬があったのではないかと残念に思っております」とのことです.貴職に齟齬を解消しようという意志があるのであれば,当会の質問に対し齟齬を来たさぬよう包み隠さず説明していただきたいと存じます.当会は,受益者負担と地元負担の使い分け,当初計画地の変更理由についての隠蔽など,齟齬をきたす原因が開発建設部の側にあったと認識していることを申し添えます. お忙しいところ恐縮ですが,回答は2月5日(必着)までに文書で下記あて先へお願いいたします. 記 1.取水施設建設場所の選定過程の不透明性と水需要について 質問1.「環境との調和への配慮のため,環境調査の実施とともに環境に関する有識者を委員とする国営かんがい排水事業美蔓地区技術検討会等において,有識者や地元関係者から助言等を頂いております」とのことですが,環境に関する有識者名および地元関係者名を明らかにしてください. 質問2.「国営かんがい排水事業美蔓地区技術検討会」の開催年月日を明らかにしてください. 質問3.貴職は「十勝毎日新聞の平成18年8月26日の記事中『鹿追町上幌内に建設を予定していた美蔓ダム』とありますのは,平成5年度の着工時点の当初計画の内容を指し示しているものと考えられ,この当初計画は,平成13年度の計画変更によって,貴協会に配付しましたパンフレットにあるとおり新得町のペンケニコロ川にダムを建設する計画に変わっています」と回答しましたが,西上幌内川での調査はいつからいつまで行なわれたのか明らかにしてください(H13年,14年の上幌内調査情報開示資料は入手済みです).また,平成13年度の計画変更以降に調査は行なわれなかったのかについても明らかにしてください. 質問4.貴職は「国営かんがい排水事業美蔓地区の事業計画の要旨及びダム位置につきましては,平成5年度の着工以来、帯広開発建設部で一般配布用に作成している農業事業概要を掲げており自由な閲覧が可能となっています.加えて,平成10年度からは,帯広開発建設部ホームページからも概要の閲覧が可能となりました」と回答しました.これらの事実をこの間の当会との話し合いの場で説明しなかった理由を明らかにしてください. 質問5.「当初計画において第6西上幌内川にダム建設を予定していたことやダムの建設場所が第6西上幌内川からペンケニコロ川に変更になったこと等につきましても、当時の新聞に報道されているところです」とのことですが,新聞名と掲載年月日を明らかにしてください. 質問6.当初計画(上幌内でのダム計画)を現行計画(ペンケニコロ川でのダム計画)に変更した理由について,北海道新聞(2006年12月23日付,十勝版)は「水需要が減少したため,帯広開建は01年に計画を変更.ダムの貯水量を約半分にし,受益農家,対象農地を大幅に減らした」と報道しました.しかし,当会への説明会(2005年6月30日)では,水需要の減少についての説明はなく,上幌内川は水量が少ないために必要量を確保できないとのことでした.また,当初計画が平成5年であったことは説明されましたが,平成13年に計画変更されたことは一切説明がなく,あくまでも6河川の中からペンケニコロ川を選んだということでした.ついては以下の点について明らかにしてください. (1)計画変更の理由について,当会への説明と新聞報道ではまったく異なります.その理由を説明してください. (2)水需要が減少したのであれば,まず上幌内川のダムの規模を小さくするという検討がなされなければなりませんが,そのような再検討を行ったのでしょうか.行ったのであれば,いつどのような検討を行ったのか,行っていないのであればその理由を明らかにしてください. (3)当初計画でのダムによる貯水量は630万立方メートルですが,新計画案のため池では30万立方メートルであり,これは当初計画のわずか4.8パーセントに過ぎません.この程度の水量を確保するのに,なぜわざわざ水系の異なるペンケニコロ川から100億円近い費用を投入して取水しなければならないのか,理由を説明してください. 質問7.上記の北海道新聞によると,当初計画の総事業費は470億円ですが,水需要が減少した後の現行計画の総事業費は530億円に増加しています.水需要が減少し,ダムの貯水量を半分にしたにも関わらず,事業費が増加するのは不可解です.計画と事業費の関係について具体的に数値を示し,事業費が増加した理由を説明してください. 質問8.上記の北海道新聞に掲載された表中の,受益面積,受益農家,総事業費の数値は,排水事業を含んだものです.ダム建設に直接係るのはかんがい事業です.北海道新聞に対しかんがい事業と排水事業の内訳を示して説明したのでしょうか.事実関係を明らかにしてください.なお,当会はこの数値に関心をもっておりますので,かんがい事業と排水事業ごとにこれらの数値を明らかにしてください. 質問9.上記北海道新聞によると,度重なる計画変更について,貴職は「離農が進み,農家が大規模化したことや,(水の散布に適さない)小麦の作付面積が増えたため」と説明しました.しかし,当会に対しては「水の散布に適さない小麦の作付面積が増えた」という説明は一切なく,水を必要とする作物をつくっているとの説明でした.なぜ,小麦の作付面積が増加したことについて説明しなかったのか,明らかにしてください. 質問10.「簡易水道については、利用の目的が異なるかんがい用水に利用する余裕がないと聞いております」とのことですが,いつ,誰から聞いたことなのか明らかにしてください. 2.環境調査について 質問11.貴職は「申し入れにある取水施設建設場所の選定につきましては,用水の取水の安定性等から6河川を水源候補とし,それらにおける建設費の経済性の検討を行うとともに,環境との調和への配慮のための環境調査を行ってきたところであります」と回答しました。 貴職の行った環境調査データの数値化による評価は,一部の調査データだけによる明らかに偏った評価であり,「はじめにペンケニコロありき」の結論を導きだすために,意図的に都合のよいデータだけを抜き出して比較したとしか考えられないものです.貴職はこれまでの話し合いのなかで説明済みと認識しているようですが,当会は納得いく説明があったと認識していませんので,ペンケニコロ川を選定した理由を文章できちんと説明してください. 質問12.貴職は「ペンケニコロ川では,平成13年度から今年度に至るまで環境調査を実施しており,このなかでナキウサギの生息調査も行っています.当方の調査方法、調査結果及びこれを踏まえた環境との調和への配慮については,環境に関する有識者の助言等を頂いております」と回答しました.しかし,このナキウサギ調査は河川選定に全く活かされていません.つまり,この調査はナキウサギの生息地を保全するためではなく,工事のナキウサギに対する影響を少なくできるという思い込みのもとに行っているものです.当会は前述したように,ナキウサギ調査も含め,河川の選定方法を見直さなければならないと考えますが,貴職の見解を明らかにしてください. 質問13.環境に関する有識者の助言等を頂いているとのことですが,この有識者の名前を明らかにしてください. 質問14.当会が指摘するまで風穴の存在に気がつかなかったというのは,環境調査がずさんであったからにほかなりません.そのようなずさんな調査によって選定したのですから,河川の選定をやり直すべきです.またボーリングで工事部分の岩盤の状況がすべて把握できるわけではなく,風穴への影響は未知数といえます.この点について,貴職の見解を明らかにしてください. 3.受益者負担の疑問について 質問15.貴職の回答は「事業費の受益者負担につきましては,平成17年6月30日の第1回目の打合せから平成18年3月28日の第5回目となる打合せのみならず,先日の平成18年10月24日の第6回目となる打合せに至るまで,何ら変更はありません.また、当方による負担の説明に際し,地元負担という表現を使用しておりますが,この場合、地元とは地元市町村と地元農家を一括りで意味していたものです.通常,農家負担(受益者負担)と市町村負担を合わせた負担を地元負担と表現しているところであり,事業費の3〜5%の地元負担については,各関係町が事業の公共性を鑑み全額町が負担することから農家負担はないと説明したものです」とのことです。 しかし,受益者負担という言葉を使い当会に説明していたのは紛れもない事実であり,録音記録もあります.計画地の選定は,受益者負担が重くなるので経済性を優先させたと,あたかも農家の負担解消策であるかのように当会に説明しました.地元負担と受益者負担の違いをこの段になってはじめて明らかにする態度は,国営かんがい排水事業に疎い自然保護NGОを愚弄するものです.当会への貴職の説明が不適切であったことについて,貴職の見解を求めます. 質問16.当会は受益者に対する需要調査を再度行い,結果を公表することを求めましたが,それについての回答がありません.このために依然,当会の抱いた「本来水を必要としていない農家まで受益者とすることで受益者数を確保しようとしているのではないか」という疑惑は解消しません.再度,納得のいく説明をしてください. 回答送付先 080-0101 河東郡音更町大通10丁目5番地 佐藤与志松方 十勝自然保護協会 (Tel & Fax 0155-42-2192)
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