美蔓ダム問題

当協会の「美蔓地区の国営かんがい排水事業の質問書」(平成19年1月15日付)に対して帯広開発建設部より回答がありました。(平成19年2月5日)

帯建農1第35号

平成19年2月5日

十勝自然保護協会 会長 安藤 御史 様

帯広開発建設部部長 加藤 史郎

 

美蔓地区の国営かんがい排水事業についての質問書(回答)

平成19年1月15日付けで北海道開発局長及び帯広開発建設部長宛に質問のありましたこのことについて、別紙のとおり回答いたします。

帯広開発建設部といたしましては、今後も環境への影響について十分配慮して事業に取り組んでまいりますので、ご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

(発議 農業開発第1課課長補佐)

別紙

はじめに

 農業を基幹産業とするこの地域では、大規模な畑作、酪農経営等が行われており、各種振興計画等に沿って更なる展開を目指しているところです。しかしながら、本地区の受益区域では、畑作物の生育期間中の降雨量が少なく、このことが畑作物の収量・品質にも影響を与えております。また、降雨時には農地に湛水、過湿被害が生じておりました。

 この事業は畑地かんがい用水の確保及び排水改良を行うことで、農作物の安定的な生産等を可能とし、安定した農業経営の実現を図るものです。農業を基幹産業とするこの地域においては、農業経営の安定が地域経済の発展に繋がるものであり、また、受益農家はもとより関係機関もこの事業の促進を強く要望していることを、先ずご理解願いたいと思います。

 これまで、貴協会とは、地域の環境に関する専門的な知見を有する団体として、ご意見を頂きながら相互理解のための打合せを重ねるとともに、平成18年11月8日付け「美蔓地区の国営かんがい排水事業の見直しについての申入れ」(以下「申入れ」)に対して、平成18年11月30日付け文書にて回答(以下「申入れ回答」)し、真摯に対応してまいりました。

 貴協会からの質問書につきましては、これまでの打合せ、申入れ回答を踏まえ以下のとおり回答いたしますので、ご理解の程お願い申し上げます。

1.取水施設建設場所の選定過程の不透明性と水需要について

質問1.についての回答

 有識者及び地元関係者の方については、氏名の公表を前提に協力を頂いているものではないことから、本人への意向の確認が必要と考えております。

 今回は、回答の時期が限られておりますことから、後ほど確認の結果をお知らせしたいと思います。

質問2.についての回答

 国営かんがい排水事業美蔓地区技術検討会につきましては、平成17年7月11日及び平成17年9月9日に開催しております。

質問3.についての回答

西上幌内川での調査期間についてのご質問ですが、ご質問の文中に「美蔓ダムの当初計画」とありますので、第6西上幌内川のことかと存じます。

第6西上幌内川における環境調査は、平成13〜15年度に実施しております。

質問4.についての回答

 第1回目となる平成17年6月30日の打合せでは、当建設部が一般配布用に作成している「帯広開発建設部農業事業概要」及びホームページで掲示している「十勝農業の概要」により地区概要を説明させて項いていたところです。

 なお、この打合せにおいて、説明に使用した「十勝農業の概要」がホームページでご覧頂ける旨をお知らせしております。

質問5.についての回答

 当初計画については、平成5年8月23日十勝毎日新聞の掲載記事に第6西上幌内川にダム建設を予定していたことが記載されております。

 また、現計画については、平成10年12月17日北海道新聞の掲載記事に、ダムの建設場所が第6西上幌内川からペンケニコロ川に変更になったことが記載されております。

問6.についての回答

 水需要の説明につきましては、第1回目となる平成17年6月30日の打合せにおいて、受益農家及び受益面積の減少についてお知らせし、その場で貴協会から「どの位の供給水量が減ったのか。」との質問を受け、第2回目となる平成17年8月30日の打合せで、供給水量の減した量についての説明を行うとともに、他の河川と比較した水源施設の検討についての説明の中で、第6西上幌内川の水量等についても説明をさせて頂いていたとこ

ろです。

質問6.(1)についての回答

 前項で示しましたように、第1回目となる平成17年6月30日や第2回目となる平成17年8月30日の打合せに加え、その後平成18年10月24日に至る計6回の打合せにおいて、計画変更の理由や内容について説明させて頂いていたところです。

 ご質問では、平成18年12月23日の新聞報道と全く異なるとのことですが、何らかの誤解によるものではないかと思われます。

質問6.(2)についての回答

水需要の減少に伴い、当初計画のダム建設場所である第6西上幌内川を水源とした場合の検討を行っております。
 現計画への計画変更に係る検討を行った平成10年度に、水の収支を計算して施設の規模を算定し、他の取水地点との経済性等の比較を行っております。

質問6.(3)についての回答

 変更計画案で当初計画のダム建設場所である第6西上幌内川を水源とした場合、190万立方メートルの貯水池が必要になるとの結果を確認しています。

 なお、変更計画案の貯水池が30万立方メートルと小さくなるのは、第6西上幌内川に比べてペンケニコロ川の水量が豊富なことから必要な用水が不足する期間が短くなり、河川水量が不足した場合の補給を担う貯水池が小さくて済むことからです。

 計画変更案の策定にあたっては、他の水源候補についても同様な検討とそれぞれの比較を行い、ペンケニコロ川を水源とした場合に必要となる96億円が最も経済的となったものです。

質問7.についての回答

 水需要の減少に伴う当初計画から現計画に至る施設規模は、貯水池規模が630万立方メートルから340万立方メートルと290万立方メートル減少し、貯水池位置の変更や受益地の変吏に伴う用水路の延長が約160kmから約146kmと約14km減少しています。

 一方、事業費につきましては、平成4年度単価で算出した当初計画の470億円から平成10年度単価で算出した現計画の530億円に増加しましたのは、物価変動等に伴う約72億円の増と、前に示しました貯水池規模の減少及び用水路延長の減少による約12億円の減をあわせ60億円の増となったものです。

質問8.についての回答

 個別の取材内容について公にすることは、当該法人等又は当該個人の権利、その他正当な利益等を害する場合も想定されるため、回答は差し控えさせて項きます。

なお、かんがい事業と排水事業の諸数値は下表のとおりです。

当初計画

現計画

変更計画案

受益面積

(ha)

かんがい

8,590

6,737

2,617

排  水

1,810

1,739

1,720

受益者数

(人)

かんがい

362

257

116

排  水

170

140

140

事業費

(億円)

かんがい

415

469

270

排  水

55

61

60

470

530

330


(受益面積、受益者数にはかんがいと排水の重複があります。)
(変更計画案は、現時点の数値)

質問9.についての回答

 かんがい排水事業は、水を必要とする作物への用水供給が主たる事業目的ですので、本事業の必要性を説明するうえで、水を必要とする作物がつくられていることについて説明させて頂きました。

 一方、このたびの計画変更の要因としては、地域において離農が進み農家が大規模化したことや、小麦の作付け面積が増えたこと等ですが、計画変更の要因を簡潔に理解して頂くため、主要因である離農が進み農家が大規模化したことにより受益農地が減少したことを説明させて頂いたところです。

質問10.についての回答

 簡易水道の利用状況につきましては、変更計画案の策定にあたって、鹿追町から、簡易水道には利用目的が異なるかんがい用水に利用する余裕が無いことを聞き取っております。

2.環境調査について

質問11.についての回答

 水源の選定に係る経過につきましては、平成17年8月30日の第2回打合せから、第4回打合せとなる平成18年1月17日までに、用水の取水の安定性等から6河川を水源候補としたこと、それらにおける建設費の経済性を検討したこと、環境との調和への配慮のための調査とその結果による生物評価結果をお知らせしてきたところです。

 なお、生物評価結果につきましては、第2回打合せで、貴協会から、生物評価に基づく、それを加味した取水場所選定がなされるべきとの意見が示されたことから、6河川の環境調査結果による比較及び評価を行い、有識者のご助言を頂戴しながら評価方法を検討し見解をとりまとめたことは、平成17年10月6日の第3回打合せ、平成18年1月17日の第4回打合せにおいて説明したとおりです。

 ペンケニコロ川を選定した理由につきましては、申入れ回答のとおり、用水の取水の安定性等から6河川を水源候補とし、それらにおける建設費の経済性を検討した結果によるものです。

 そのうち、建設費の経済性検討については、安定した用水の取水が望める6河川の水源候補において、取水施設を建設した場合の取水施設及び導水路、貯水池の建設費を比較し、ペンケニコロ川に取水施設を設置する場合が最も安価であることを確認しているところです。

質問12.についての回答

 貴協会は、ナキウサギ調査も含め、河川の選定方法を見直さなければならないとの見解を示されておりますが、ナキウサギ調査の方法及び結果については、今までの打合せの中でお知らせし、貴協会のご意見に基づく追加調査も実施しております。また、申入れ回答においても、貴協会の有する調査結果の提供をお願いしているところでもありますので、今後とも打合せの場を設けるなどして、相互理解を深めたいと考えています。

質問13.についての回答

 質問1と同様に、有識者及び地元関係者の方については、氏名の公表を前提に協力を頂いているものではないことから、本人への意向の確認が必要と考えております。

 今回は、回答の時期が限られておりますことから、後ほど確認の結果をお知らせしたいと思います。

質問14.についての回答

 風穴への懸念につきましては、当該箇所のボーリング調査を行った結果、開削を行わず堅牢な岩盤内に水路を設置する工法の採用が可能であることから、工事による風穴への影響は生じないと考えています。

 なお、このことについては、申入れ回答のとおり、今後も真筆に説明する所存でございます。

3.受益者負担の疑問について

質問15.についての回答

 貴協会は、当方が、農家の負担解消策のために経済性を優先させたと説明したとしていますが、事業にかかる費用は、その建設コストを十分に意識するとともに、環境配慮等の検討を行うことは当然のことと考えています。今後とも国営かんがい排水事業への、より一層のご理解を頂きたいと思います。

質問16.についての回答

 変更計画案の策定にあたっては、地域の農家や農業関係者との十分な調整に基づき、水を必要としている農家をかんがい用水の受益者として、受益者数を集計していることを説明させて頂いたところです。