十勝自然保護協会

2005年度 事業報告

 2005年度活動日誌はこちらで す。
 
2005年度までの経緯はこちらです。

1. 然別湖周辺の自然の問題
   道道鹿追糠平線の駒止湖付近の補修工事がなされましたが、現状を改変して植物やナキウサギに影響を与えないよう要請しました。また、落石のおそれがあるので西ヌプカウシプリ斜面にフェンスを設置するという計画に対して、景観を損ねないよう、植樹をするなどの工夫を考えることを要請しましたが、現段階ではフェンス工法以外難しいということで今後の課題としました。

 

2.近郊の森と川の問題

 

(1)弥生新道・稲田の森の問題 稲田の森は、樹木・草本の移植が行われ伐採が強行されました。帯広市は、都市計画と架橋工事図面の不一致が発覚したため、都市計画変更手続きをせざるを得なくなったものの、結局二つの審議会は通り、架橋工事が着手されることになりました。
 
(2)ニホンザリガニの問題 明きょ排水路改修工事によってニホンザリガニの生息が危機にさらされた事例が3件ありました。十勝支庁の農業事業によるものでは、大半が死滅してしまいましたが、当協会の指摘で湧水を確保する対策を講じ、残りの生息の行方を見守っています。開発建設部の河川改修では、住民の抗議で工事を中断し、生息地を保護する対策がとられました。十勝支庁の別の農業事業によるものでは、大量の生息が確認され保護団体が預かり飼育して、工事後戻すことになりました。もちろんすべてが生きるとは限りません。このことから、十勝には、広範囲にわたりニホンザリガニの生息地があり、とりわけ農業土木工事がこれに大きな影響を与えるという問題が明らかになってきました。
 
(3)ダム問題12月7日、D・ウェグナー氏を迎え講演会(3団体主催)を開きました。世界遺産登録の知床のダム問題、天塩川のサンルダム問題などとともに、今後十勝におけるダム間題を考える契機としていきます。  

3 三股集団施設地区整備「ふれあい自然塾」および長距離自然歩道の問題

 

(1)糠平の中核施設問題を検討するため、環境省の検討会は、当協会とひがし大雪博 物館友の会、および三股の住民をはずして再発足しました。まずこの検討会構成に 疑問を持ちますが、われわれの主張を伝えるため、座長に、これまでの経緯と到達 点を正しく伝え今後の方針をあやまらないよう文書要請しました。しかし当協会の
要請はこの検討会では取り上げられず、糠平温泉街をどうするかという論点に矯小化され、またビジターセンター設置案は観光目的に歪曲化されて、本質論が置き去りにされています。
 
2)十勝支庁が進める「東大雪の道」は、糠平湖畔から旧国鉄線づたいに3の沢まで をとりあえず整備歩道にする計画が実施に移されました。当協会は、鉄道路線廃止 以来ヒグマの通り道となっいることを把握し、このルートを自然歩道にすればかな らずヒグマ問題が発生することを予測して、事業執行者の十勝支庁に対しては、野生生物保護の観点で対処するよう要望してきました。十勝支庁もあくまでも「共存」の方針で対処することを表明してきました。 そういう中で、夏季、ヒグマ射殺問題が発生しました。 この射殺は、国立公園内の環境省立案の長距離自然歩道予定地で起こった事例であるにもかかわらず、環境省が全く関知せず、する意思もないということがわかりその無責任をきびしく指摘しました。また、「共存」の方針をもつはずの北海道が、「共存」に苦慮したあとが見えず、地元町に任せたことも同様に問題です。まことに安易な対処であったと考えます。

 

4.林道を使用する自動車ラリーの問題

 

 2005年もWRCが実施されました。新たに音更町や本別町の林道も使用され、十勝の森林はラリー主催者の思うままに蹂躙されているといってよいでしょう。 今年は、音更、新得、足寄、本別の林道で植物や猛禽類の調査を実施しました。貴重種を含む植物や豊かな林相の存在など、およそラリー車が駆け回るような地域ではないことが確認されました。ラリー実施日の新得では騒音87〜103デシベル(林道出口の公道)を計測。実施直後の林道上には、タイヤの破片や本体、フロントグリルなどが散乱していました。深掘れ、土砂飛散、逸脱跡は例年通りみられました。実施に先立ち、所轄の東大雪支署長に許可しないよう交渉しましたが、林野庁側には、環境保護の意識もなく、ラリーによる被害意識もありませんでした。自治体の対応は、経済効果を前面に立てて歓迎一色に染まって環境問題の視点を完全に欠いていました。しかし、今年警察は初めて公道でのスピード違反等24件を検挙しました。環境という視点の世論喚起の面では、週刊誌などの紙面で訴えました。また当協会作成の切手の普及も少しずつ広がっております.。10月28日、毎日新聞社がラリー撤退を表明しました。理由はともあれ、これは歓迎すべきことで、われわれの反対運動が影響を与えたことは間違いないものと思われます。一方、06年のWRCは実施すると表明している推進主体をはじめ、十勝毎日新聞社、日本自動車連盟、環境大臣に中止要請をしました。 そうした中、3月29日、06年のWRCラリージャパンの十勝開催が発表されました。新たな主催3者に対し、取り組みを行わねばなりません。  

5.大規模林道問題

 

 北海道ネットワークという形で運動が広がり、緑資源機構や北海道との交渉が繰り返されました。しかし、われわれの、必要性への疑問や自然破壊への警告に対してまともな説明ができないにもかかわらず、開発する姿勢にほほとんど変化がありません。置戸〜阿寒の現地の植物調査、日高のナキウサギ・コウモリ調査、視察などが行われました6月25日札幌で全国集会が行われました。全国各地におけるこの開発行為が北海道と共通の問題を引き起こしていることが確認されました。翌26日は日高の平取新冠区間の現地視察が行われ、自然破壊の現状と税金のムダ使いを全国の仲間と共に実感しました。  

6.美蔓ダム問題

 

 美蔓ダムは、鹿追町など4町農家の需要による利水事業計画です。予定地の中にはナキウサギの生息や猛禽類に影響を与える河川が含まれているので、開発建設部に説明を求め、これまで5回にわたり、主として環境調査と評価のあり方をめぐって論議してきました。猛禽類やナキウサギの評価には意見の相違が大きく、合意に至っておりません。もし、計画が実施されるなら、導管の埋設の問題もあり、自然環境への影響の負荷は大きいことが予想されます。  

7.えりも道有林の伐採問題  

大規模林道を視察中に道有林の皆伐現場が発見され、道内3名の原告によって「えりもの森裁判」が起こされました。当協会はこれを支援する立場でこの問題を議論してきました。公判はすでに1回行われています。

 

8.観察会・講演会・視察・調査、発表活動

 

   大規模林道・林道ラリーコース視察調査
大規模林道 日 時 ラリーコース 日 時
平取・新冠区間 626 新得 52
静内・三石区間 10月1・2 72
陸別・阿寒区間 529 717
   〃 789 917
足寄・阿寒区間 529 102~3
様似・えりも区間 823~25 1030
  陸別 73
★えりも道有林 112~3 79
  足寄 529

 

   講演会開催・参加・発表

催し  日時
ダム問題講演会開催 618
森林講演会開催 422
日高セミナー発表 101
帯広市環境交流会発表 1023
大規模林道全国大会発表 1025

 

●大気汚染調査

 NO2測定 帯広市・音更町  623日 1名

 

*観察会「南ベトウトル山」は大雨で中止

 

 
9.会員の拡大・会の運営・広報活動・他団体との連携・委員会等の参加

 

 

1)新入会員は2名。現在計80名。
2)理事会は月1回定期開催。
3)ニュース発行は5回。NO.106〜110
4)十勝と日高の交流団体「ぐるっとひだか」と北海道中央勤労者山岳会との「日高セミナー」
   に2名参加。大規模林道全国集会7名参加。
5)10月、十勝市民環境交流会に参加し、林道ラリー問題を発表。

 

[委員会等の参加]

 

1)大雪山国立公園三股・糠平ふれあい自然塾検討会(環境省)
2)自然環境保全推進協議会(帯広市)
3)上流圏域河川整備計画検討会(帯広土木現業所)    
4)帯広土木現業所機関庫川検討会(帯広土木現業所)   
5)大規模林道北海道ネットワークの役員(5団休)     
6)ぐるっとひだか(5団体)               
7)北海道自然保練連合(21団体)常務会
 

10.財政問題  80名の会費が原資となっています。