梅沢 俊
登山の対象とした日高の山々を表現するならば「道多く」して道少なし」である。すな
わちルートはたくさんあるが、登山道はごく僅かなのである。登山道のない山には通常
沢を使って登るのだから、沢登りの技術が要る。険悪な沢が多い南日高の山では加えて
岩登り、水泳のテクニックも要するだろう。その他地図読み、天候判断、ルートファイ
ンディング、藪漕ぎテクニック、体力はもちろん要求され、山自体も急峻ときている。
だから誰でも登れるわけではなく、ごく限られた人だけがその頂きに立つことができる
のである。裏を返せぱこの山々の中ではめったに人に会う機会がないことを意味してい
る。
静かなる山旅、自然に浸れる幸せよ!。
お花畑の規模は小さいが、各所に見られる。多くは手付かずである。沢ではまだ食糧
としての魚も調達できよう。流木で焚き火も楽しめる。つまり文明生活と対極の世界が
そこにある。自然との共生か。原始の世界にタイムスリップしたような・・・。原生の自然、
手付かずの自然を享受できるのである。これが日高山脈の最大の魅力だと思う。
その代りリスクは全て自分で負わねばならない。増水で山に閉じ込められるかもしれ
ないし、ヒグマに追われることもあるだろう。沢の中は危険でいっぱいだ。冬には山脈
全域が雪崩の多発地帯と化す。私が ”大人の遊び場”と表現する所以である。
わくわくするような山だけれど、不安のあまり胃が痛くなるような山でもあるのが日
高山脈なのである。
仕事柄植物に目を転じてみよう。
日高山脈の樹林は、トドマツなどの針葉樹が極相林(最終的に安定した林)となる地
域もあるが、ダケカンバが極相林をつくる地域が多い。山脈南部ではゴヨウマツ林が見
られる。
固有植物も比較的多い。特別天然記念物に指定されているアポイ岳に産する植物は広
く知られるところだが、山脈全体としては以下の植物が挙げられる。
ヒダカソウ、ヒダカミツバツツジ、
ヒダカキンバイソウ、ヒダカゲンゲ、
ヒダカミヤマノエンドウ、ヒダカミネヤナギ、
ヒダカアザミ、ヒダカトリカブト、
ヒダカイワザクラ(カムイコザクラを含む)
、カムイビランジ、エゾサイコ、
エゾトウウチソウ、エゾノジャニンジン、
アポイタヌキラン、
その他分布上興味のある植物を挙げてみる。
ソラチコザクラ、ムシトリスミレ、
トカチトウキ、ユキバヒゴタイ、
ケエゾキスミレ、タガネセンブリ、
エゾミヤマアケボノソウ、ミヤマシオガマ、
ミヤマアキノノゲシ、モミジバショウマ、
ミサキカグマ、ヒメサジラン、
そして謎の花 など…
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