ecoism

2016年1月
ヒグマが怖いと言ってフットパスを歩かない人たちのために

 去年は苫前町三毛別のヒグマ事件100年に当たり、新聞などで繰り返し、連載などが組まれた。短期間に7名が犠牲になったこの事件が、ヒグマのイメージを決定的なものにしたのは間違いない。確かに異常な事件である。ではあるが、人間が被害者、ヒグマが加害者という図式を超えた考察は皆無だった。開拓の初期、森林は広範囲にわたった伐採され続けた。森林はヒグマの生息域である。彼らの生活が脅かされ続けたという視点を忘れてはいけないだろう。
 野生動物に対する理解が格段に進んだ今日と言えども、ヒグマを安全な動物という人は私くらいかも知れない。私たちが1970年に北大ヒグマ研究グループを立ち上げ、以後半世紀近くにわたって、ヒグマを追い続けている。今も同グループは健在である。そしてこの間、一人の死傷者も出していない事実をどう評価すべきか。グループのメンバーは現地調査に当たって細心の注意を払って行動している点は、昔も今も変わらない。
 生息が予想されるエリアに入る時は鈴を鳴らしたりするのはもちろん、カーブを曲がる時や夕暮れ時などは特に気をつけるという注意を怠らない。そういった配慮の積み重ねが、無事故の更新につながっている。つまりは人間の側の気配りこそ安全の保証と言ってよいだろう。フットパスなどを歩く際の教訓でもある。

エコ・ネットワーク 小川 巌


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