2.2授業をふりかえって


2.2.1昔話を聞こう[目次へ]

 そのころから、2週に1回の割合で、読み聞かせの時間をとっていた。だいたいは教師が、絵本を読んで聞かせていたのだが、ある時間に、絵本2冊とともに『アイヌの昔話』(萱野茂著 平凡社ライブラリー1993)を見せ、「どれを読んでほしい?」と聞いたところ、一番リクエストが多かったのが、この本だった。

◆1時間目は「物知り老人」の話 

 1時間目は、「物知り老人」の話を読んで聞かせた。今までは、絵本を見せながら読んでいたので、ただ読むのを聞かせるとあきてしまうのではないかと思っていたが、こどもたちは、いつもより、よく聞き入っていたと思う。つかまえた熊が、実は河童だったというお話であるが、こどもたちは要所要所に出てくるアイヌ語(ポンマッ、ウイマム、ラウンクッなど)に、あまり違和感をおぼえることなく聞き入っていた。この話は、あとで、何度も読まされることとなった。こどもたちは、大変気に入ったらしい。

◆2時間目は「へびのまゆげ」の話

 2時間目は、「へびのまゆげ」を読み聞かせた。この話を読み聞かせているときは、それほど反応を感じなかったが、あとから、こどもたちから、いろいろな反応が返ってきた。

 これはあまりいい例ではないが、ある男の子が、ふざけて「俺、中学に入ったら、まゆ毛そるさ、先生。」と威張って言った。「エーかっこわるいよ。」と答えた私に、「俺、蛇みたいになるんだ、まつげもそって。」と言って笑った。「へびのまゆげ」を読み聞かせてから、ずいぶんと経っていたので、子どもの記憶に、しっかりと残っていとことが、とても印象的だった。その他、学級指導をしていたとき、「どうして、こんな事する人がいるんだろうね。」といったときに、「先生、きっとその人は、どうしてもやってみたくなっちゃったんだよ。ふくろうの神様みたいに。」と答えてくれた子がいた。その言葉に、「だからきっと、今は反省しているよ。」とつけ加えてくれた子どももいた。今までの読み聞かせと同じく扱ったアイヌの昔話から、こどもたちは、少しではあるが、ウゥェペケレ本来の目的を、感じとってくれたようである。

 


2.2.2チカルカルペ(チカペci-karkar-pe)って?

 チカルカルペ、和服、チマチョゴリを、いっしょに見ることができたのは、大変よかったのではないかと思っている。あくまでも、今回は、民族文化教育として取り上げたかったからである。しかし、こどもたちは、チマチョゴリはもちろん、和服も近くで見たことがなかったらしく、どの衣装にも、大変興味を示していたので、私が、チカルカルペだけを飾っておいた竿からおろしたとき、「他のももっと見せてやぁ。」という声が挙がった。これが、次の興味につながっていったらいいな、と密かに期待しているのであるが、今のところ、発展していく気配はない。

 チカルカルペの感想は、「生地が厚い」と言ったものが多く、模様に着目できた子どもは少なかった。しかし、チカルカルペの裏の縫い目を見て、「どうやって作ったんだろう。」「きっとミシンだよ。」などの会話をしているこどもたちもいた。この時間も、ウタリ協会から講師の先生にきていただいたのだが、こどもたちは、少し緊張気味に話を聞いていた。話は、模様に注目できなかったこどもたちにとっては、少し難しかったようだった。しかし、最後の質問のところでは、「チカルカルペってアイヌ語でどんな意味なんですか?」「なぜ神様の棘なんですか?(神様の爪でも歯でもいいのでは・・?)」などの質問が出された。1時間を予定していたが、2時間続きの授業になってしまい、また、教師の意図が大きかったこともあって、こどもたちは少しあきてしまったようである。次の時間への、意欲づけも十分にできなかったように思う。

         


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