2.1 社会科学習指導案[目次へ]


日 時:1997年9月11日 

児 童:3年 2組 30名  

指導者:遠山サキ・松本陽子  

2.1.1 単元名 「様似を知ろう」〜探検マップから

2.1.2 単元の目標

 地域の素材・人材を通してアイヌ文化を直接・間接体験する中から、アイヌ文化の存在を認識し、そのすばらしさを感じることができる。 

2.1.3 教材観

 1学期に学習した「様似探検マップ」で、一つの班がウタリ協会を訪ね、そこで見せてもらった物をまとめ、発表した。こどもたちは大変興味を持ったようである。

 地域の特色として、様似町は古くから多くのアイヌがすんでおり、優れたアイヌ文化を形成してきた地域である。和人の北海道進出によって、土地だけでなく文化も奪われてきた歴史に抗し、アイヌ文化を誇りとし若い人々へ受け継ごうとする数少ないアイヌ文化伝承者が、近くに在住している地域でもある。この様似小学校にも、アイヌ文化を受け継いでいこうと積極的に活動しているこどもたちが在校している。にもかかわらず、様似町ではいままでアイヌ文化・歴史教育はなかなか取り上げられてこなかった。これは、地域の特色を踏まえての教育的配慮からと考えられるが、これからは他民族との共生という視点から、積極的にアイヌ文化教育、歴史教育を行って行くべきだと考える。

 そこで、今回は地域の伝統文化の教材化、また「様似の歴史」の単元にはいる前の土台づくりをねらいとして、こどもたちがアイヌ文化を体験し、身近な物に感じるよう学習を設定した。副読本「さまに」の中の「様似の歴史」の単元では、アイヌを大昔の人々として扱っているが、アイヌの現在にはいっさい触れられていない。したがってアイヌ文化が過去の物という固定観念が植え付けられてしまう恐れがある。そうならないために、いまに息づくアイヌ文化を体験させることで、アイヌ文化の身近な存在の認識をねらいとする。

 

2.1.4 児童の実態

 明るく元気な30人。社会のフィールドワークなどでは、意欲的に活動し、楽しくまとめをしていた。幼い面も多く、基本的授業態度のみについてない子も数名いる。また、自分の興味の対象には深くのめり込むが、対象外には全くのってこないという面もある。今回もできるだけ、子どもの活動場面を多くしたり、外部の人に参加してもらうことで、こどもたちの興味を引きだし、ある種の緊張感を持たせていきたい。

 

2.1.5 研究との関わり

(1)地域素材の教材化

 様似はアイヌ文化振興において大変重要な位置を占めている。にもかかわらず、教育現場においてはアイヌ文化についての教材化はほとんどなされていないといって良い。アイヌ新法の制定により、これからの様似はアイヌ文化の地として注目されていくことが予想される。そのためには、学校でも積極的にアイヌ文化教育に乗り出すべきであると考える。幸いこの地域は教材化するのに事欠かないほどの地域素材にあふれている。これからの国際化社会に生きるこどもたちには、自らの地域のことを正しく学び、多民族の共生の自覚を持つことが必要とされてくるだろう。

 先述したとおり、この地域は教材化すべき地域素材に恵まれている。こどもたちにはできるだけ生きたアイヌ文化と触れる機会を多くすることで、アイヌ文化の現在を考えていくきっかけとしてほしいと考える。この単元で、アイヌ文化伝承者から直接話を聞いたり共に文化を体験することで、アイヌ文化やその歴史に関心を持ち理解を深める機会としたい。

 

(2)自ら学ぶ子ども〜学習材との出会い〜体験(的)学習〜他者との関わり

・学習材との出会い

 1学期の「様似探検マップをつくろう」の単元で、ある班が、ウタリ協会を調べてきた。ほかの班が、いままで知っているところを調べてきた中で、存在をはじめて知る施設を探検してきたこの班の発表は、こどもたちの関心を引き出していた。その班のまとめの中では絵が多彩に使われ、これもこどもたちの関心の的だった。その中のチカルカルペの絵をきっかけとして、実際にチカルカルペを見る機会をつくり、こどもたちの興味関心から、新たな学習材を引き出すという展開にした。

・体験(的)学習

 中学年の児童にとって、アイヌ文化の歴史を教師の話や副読本での学習だけで理解することはむずかしい。今回は、実際文化に触れることによって、生きたアイヌ文化を身近な物に感じられるようにと考えた。本校の体験的学習とは異なるが、子どもたちがより深く理解する方法として有効ではないかと考える。

・他者との関わり

 今回はアイヌ文化伝承者という、いわゆる「外部の人」が参加する。ふだんの生活では、なかなかふれあうことのない文化伝承者とのふれあいの中で、こどもたちはアイヌ文化の理解だけでなく、すばらしいと感じる心=感受性もみがかれることも期待したい。

 

2.1.6 単元計画

昔話を聞こう(2時間)

・アイヌの昔話ウエペケレを聞き、現在におけるアイヌ語の存在を認識し、アイヌの精神文化に触れることができる。

チカルカルペって?(1時間)

・チカルカルペ、和服、チマチョゴリを見て、共通する部分や、それぞれの良さを見つけだすことができる。

・チカルカルペをつくった人の話を聞いて、その技術のすばら しさと文様にこめられた意味を知ることができる。

切り絵〜アイヌ文様を作ろう(2時間)

・アイヌ文様を自らの手で作り出すことで、その美しさを感じ ることができる。

ムックリをひこう(本時6/7)

・ムックリという素朴な楽器を通して、アイヌの人々の技術や 精神世界のすばらしさを知ることができる。 

遠山さんに手紙を書こう(1時間)

・これまでの体験で、自分が感じたこと、新たに考えたことを まとめ、アイヌ文化のすばらしさをふりかえることができる。

 

2.1.7 本時の学習

(1)本時の目標

・ムックリという素朴な楽器を通して、アイヌの人々の技術や 精神世界のすばらしさを感じることができる。

・ムックリの演奏に意欲的に取り組むことができる。

・講師の先生のお話を興味を持って聞くことができる。

・ムックリの演奏を聞き、アイヌ文化のすばらしさを感じることができる。

(2)本時の展開

 

 

2.1.8 参観の視点

 児童の活動

・はじめての楽器に興味を示し、意欲的に活動していたか。

・アイヌ文化伝承者の語りを関心もって聞くことができたか。

・ムックリの音色を聞き、技術のすばらしさを感じることができたか。

 教師の関わり

・外部講師とのT・Tは、効果的であったか。

 

<講師紹介>

・遠山サキさん

 姉茶在住。アイヌ文化伝承者。国の文化庁指定のアツシ織りの伝承者でもある。浦河アイヌ語教室講師。その他、全国でアイヌ文化推進の活動を展開している。

 

<協力いただいた方々>

・澤田功さん(ムックリ製作の講師)

・李澤桂子さん(アイヌ民族衣装の講師)

・佐々木和子さん(ムックリ製作補助)

・北海道ウタリ協会様似支部、浦河支部

・北海道ウタリ協会本部 竹内渉さん

・千歳市末広小学校佐々木博司さん

・鈴木紀美代さん(ムックリ材料提供)   

・宮野精子先生(切り紙の指導)

・久住勉先生、西口聡子先生(現姓・佐藤)、佐藤達也先生

                  

<参考文献>

・『研究だよりカンピ ヌイエ』千歳市立末広小学校1997.4.30

・『第4学年社会科学習指導案「アイヌの人たちのくらし」』

     千歳市立末広小学校 坂下 調1995.10.17

・『アイヌ文化の基礎知識』アイヌ民族博物館1987.4.15

 


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