はじめに 

 ヒッチメンバー取り付けに引き続き、こちらも自分一人で行いました。

 苦労したヒッチメンバーに比べ、ほとんどトラブルフリーで作業を完了しましたが、こちらも大きな落とし穴が待ち構えていました。(^^;;;

 また、この記事は、私の乗っているエスティマ・ハイブリッドZA-AHR10Wの前期型をもとに記述しております。

 他社他車種にも言えることですが、エスティマ・ハイブリッドもご多分に漏れず、不具合修正のため各構成部品のマイナーチェンジを繰り返しており、今までのサービスキャンペーン入庫時期やクレーム修理履歴等によっては、直近の製造番号でも各パーツの部品No.が違うことがありますので、十分ご注意下さい。

 一例として、バックドアのキャッチャーは数種類存在することが分かっています。

必要な配線

 トレーラーの牽引に最低限必要な配線は、

   1.スモールランプ(尾灯)左右共通  +12Vor24V

   2.ストップランプ(制動灯)左右共通  +12Vor24V

   3.バックランプ(後退灯)左右共通  +12Vor24V

   4.ウィンカー(左)  +12Vor24V

   5.ウィンカー(右)  +12Vor24V

   6.アース(-)全共通

の6つですが、キャンピングトレーラーでは走行充電用のために、これに常時給電(+12Vor24V)を加えた7本がベースとなります。

 アメリカンタイプのトレーラーだと電磁ブレーキを装備しているため、さらにもう1本必要になります。

 

電気カプラーの種類

 電気カプラーは大きく分けて、

   1.アメリカンタイプ7ピン

   2.ヨーロッパタイプ7ピン

   3.ヨーロッパタイプ13ピン

の3種類がありますが、13ピンタイプだと左右独立配線が可能です。

 

互換性について

 電気カプラーの種類に一般的なピン割当があり、これを守ることによって物理的には、故障や整備等の際に他の車両で牽引することが可能となります。

 昨今の排ガス規制強化により、ディーゼル車が減りつつありますが、特にRVタイプの24V車は極少数となっていますので、これから新規に24V車でトレーラーを牽引しようとする方は、牽引車側でDC-DCコンバーター等による12V電源を用意し、各灯火の配線をリレー駆動して、電気カプラーへの出力は12Vに統一すると良いでしょう。

 

電気の基礎

 電気のエネルギーを表す単位として”ワット(W)”=電力というものがあります。

 よく、60Wの裸電球とか言いますが、同じ方式(白熱灯、ハロゲン灯、蛍光灯等の方式)、同じ消費電力の電球なら、明るさはほぼ同じとなります。

 ここで、電力を電気の強さと勢いを現す単位に分解してみましょう。

     電力(W)=電圧(V)×電流(A)

電圧は水の流れ落ちる落差、電流は水の勢いに例えられます。

 また、電力の量を現すには、

     電力量(Wh)=電力(W)×時間(h)

という単位を使います。

これを整理すると、

     電力量(Wh)=電圧(V)×電流(A)×時間(h)

となり、これが、キャンピングカーにおいて重要な”電気”というものについて考える基礎となります。

 もうひとつだけ、”オームの法則”というものを覚えて下さい。

     E(電圧V)=I(電流A)×R(抵抗Ω)

です。

 この2つの式を代入したり変形することによって、いろいろ計算ができるのです。

 

100Vと12V

 私たちにもっとも身近な電気といいますと、やはり、家庭で電力会社から受電している”交流100V”ではないでしょうか。

 そして、自動車を運転する方は、バッテリーに代表される”直流12V”もよく耳にすることでしょう。

 同じ電気とは言っても、この2つの規格には随分違いがあります。

 まず、直流と交流についてですが、直流の大きな特徴は電気を貯めることができること、交流の大きな特徴は送電ロスが少なく、電圧を容易に変換できることです。

 また、電圧の違いですが、電圧が高いと電流を少なくできる一方、漏電・感電防止のための絶縁が重要になります。

 こうしたことから、狭い範囲内で電気を使用し、過酷な環境下で絶縁を求められ、エンジン始動のためにバッテリーに蓄電することが必要な自動車には低圧の直流が使用されています。

 一方、電力会社では、遠くの発電所から効率よく送電する必要があるので交流を使用しており、より効率よく送電するために基幹部分は数十万Vといった超高電圧となっています。

 さて、ここまで書いたところで、次の問題を考えてみましょう。

   Q1 20Wの電球を灯すのに必要な電流は、それぞれ何Aか?

          直流12V   20÷12=1.7A

          交流100V  20÷100=0.2A

   Q2 120Wの冷蔵庫を駆動するのに必要な電流は、それぞれ何Aか?

          直流12V   120÷12=10A

          交流100V  120÷100=1.2A

という答えになり、電圧が低くても必要な電流値さえ確保できれば、大きな電力を供給できるのです。

 

キャンピングトレーラーへの給電

 普通の自動車はバッテリーが前部に搭載されていますよね?

 と、いうことは、バッテリーから電気ソケットまで4m以上引き通さなければなりません。

 また、私のポルト6を例にとると、トレーラー側でも電気カプラーからバッテリーのメインスイッチまで3mほど引き通されていますので、配線長は合計7mにもなります。

 ここで重要なことが、電線の持つ電気抵抗です。

 みなさん、掃除機やホットプレートの稼動中に電源コードを触って”暖かい”と感じたことはありませんか?

 家電メーカーが設計する訳ですから電線の太さは必要十分なはずですが、許容範囲上限に近い電流が流れると、電線のわずかな電気抵抗によりニクロム線と同じように発熱を始めるのです。

 トレーラーへの給電という点では、電圧降下という形で悪影響が出ます。

 電圧降下を起こせば、ただでさえいまいちな”走行充電”がますますダメになりますし、過度の電圧降下は灯火類の視認性悪化や異常動作を引き起こします。

 発熱するということは、伝送電力の一部が熱に変わっているということで、余計な発熱をさせないためには、”より太い電線”を”より短く使う”ようにすればよいのです。

 安全のために、電線の太さや構造により伝送できる電流値が決められています。

 下の電流値は、カー用品店やホームセンター等で売っているごく一般的な被覆の平行ビニールコードの目安ですが、上に書いたように上限付近で使うと発熱ロスが馬鹿になりません。

      0.5mm2 :   4A

      0.75mm2:  7A

      1.25mm2: 12A

      2.0mm2 :  17A

 私の手元に届いた”電気ソケット配線キット”に含まれていた7芯ケーブルは、0.75mm2でした。

 各ライン共12V7A=84Wが最大値となり、下記のとおり灯火類には余裕を持って使えますが、常時+12Vとアースには使えない代物です。

      ストップランプ  21W×2=42W

      スモールランプ 5W×4=20W

      バックランプ   21W

      ウィンカー    21W

 キャンプ後バッテリーが消耗した状態で牽引車と連結すると、開始から数分間の間ではAVモニターにはおおよそ次の電流値が計測されます。

      サブバッテリーを接続し、バックモニタ&トランスミッターを12V駆動 12.5V 9.8A→13.0V 7.9Aへ推移(バリバリ充電状態)

      サブバッテリーを接続し、冷蔵庫、バックモニタ&トランスミッターを12V駆動 12.0V 2.5A→12.0V 1.0A(ほとんど充電されない)

 冷蔵庫は120W=10Aですから、常時+12Vラインには最大10A+αの電流が流れており、0.75mm2はおろか1.25mm2でも役不足ということがお分かりになると思います。

 アースラインの方はもっと深刻で、この10A+αに加え、夜間ブレーキを踏んでギアをバックに入れハザードを点滅させた時は、灯火類だけで125W=10.4A消費しますので、2.0mm2の配線でも足りないことになります。

 実際には、シャーシ経由でもアースラインが確保されているはずですが、確実性という面では電気ソケット&カプラーに遠く及びません。

         

配線方針

   1.電気カプラーは”ヨーロッパタイプ7ピン”を使用し、ピン割当は一般に準拠する。

   2.配線はできるだけ太いものを使用し、電圧降下を最小限に抑える。

   3.常時+12Vラインは、リレー制御でイグニッション連動とする。

   4.灯火類の配線は、リレーで切り分けせず直接配線する。

   5.電気カプラーとは別に、AC100Vを引き通す。

 

下調べ

 実際に工事に取りかかる前に、牽引車のディーラーで情報収集しましょう。

 我がエスティマ・ハイブリッドはトヨタカローラ店扱いで、たまたま販社本店から買ったこともあり、本店へ出かける前に担当セールスさんに照会内容をFAXしておきました。

 その結果判ったこと...

   1.車両後部下部に、必要信号全てが集中している場所はない。

   2.灯火類はDピラー(バックゲート取り付け部のピラー)上部のコネクターに集中しているが、力が加わると簡単に成型天井が折れ曲がってしまうので、この場所での作業は勧めない。

   3.灯火類は、灯火部分からエレクトロタップで分岐させるのが簡単である。

   4.イグニッションは助手席足元室内配電盤から取ることができる。

   5.常時給電は、荷室助手席側のバッテリーから直接取得して構わない。(一般の車両と同じということ)

ということでした。

 

用意した材料

   ニューオーイーエムサプライ社配線キット(ヨーロッパタイプ)

       BRINKヨーロッパタイプ7極ソケット・ブーツ付(BK90767009)  1個

       7芯ケーブル  1.5m

       単線0.75mm2ケーブル  1.5m

       ボルト・ワッシャー・ナット  各3個

       エレクトロタップ  6個

       コルゲートチューブφ10mm  1.5m     

   2.0mm2ケーブル  12m以上

   1.25mm2ケーブル  22m以上

   丸型端子  3個

   平型端子  1組

   ギボシ端子  多数組

   OKコネクタ  2個

   管ヒューズホルダー 1個

   管ヒューズ15A  1本

   ミニ平型ヒューズ電源20A取り出しキット(エーモンE513)  1個

   平型ヒューズホルダー(バッテリー電源取り出し用)  2個

   平型ヒューズ15A  2個

   リレー20A(MAX30A、制御線独立型)  1個

   配線バンド  2種

   コルゲートチューブ7φ  1.5m

   コルゲートチューブ10φ  1.5m

   ビニールテープ  各色   

   自己融着テープ  1巻

   やに入りハンダ  1巻

   配線名札  10枚程度

 

使用工具

1.ニッパー

2.マイクロラジオペンチ

4.圧着ペンチ

3.半田ごて60W

5.ドライバー+−

6.ボックスドライバー10mm

7.内張りはがし(エーモン#1427)

8.テスター(アナログ、デジタル)

 

作業環境

 車体下にもぐっての作業ですが、私は特に車両を持ち上げずに作業しました。

 服装は、当然、つなぎ(つづき)服です。(^^;

 

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