えりもの森 裁判

2006年8月8日 


北海道水産林務部長 様
日高森づくりセンター所長 様


十勝自然保護協会会長     安藤 御史 
ナキウサギふぁんくらぶ代表  市川 利美 
大雪と石狩の自然を守る会代表 寺島 一男 
北海道自然保護連合代表    寺島 一男 



道有林の伐採中止についての申入れ

 北海道水産林務部道有林課と日高森づくりセンターは,保安林である幌泉郡えりも町目黒54番地146林班で,2006年3月31日に「択伐」として保安林の伐採の許可を得,4月以降に伐採の予定です.

 当該伐採予定地は,緑資源幹線道路の建設予定地に近いことから,私たち自然保護団体がかねてより動植物の調査を行っており,ナキウサギの生息地が点在していることを確認しています.この地域のナキウサギについては,私たちの指摘により,緑資源幹線林道の建設を行っている緑資源機構も調査を実施しています.

また私たちは,国のレッドデータブック絶滅危惧1B類に指定されているコモチミミコウモリの群落を確認しているほか,同じく絶滅危惧種で国内野生希少動植物種に指定されているオオタカが襲ったと推測されるアオバトの死体を拾得しており,この地域はオオタカの生息地であると考えられます.

 貴職らは当該林班の伐採にあたり,環境調査を行っていないと思われますが,えりもの道有林一帯にはナキウサギが広く生息していることが明らかになっているうえ,絶滅危惧種の猛禽類の生息地になっています.コモチミミコウモリをはじめ,リシリシノブなどの希少な植物も生育しています.このようなところで施業をするのであれば,環境調査を行って,これらの動植物への影響を回避するように努めなければなりません.

 貴職らは,えりも町目黒152林班52小班で間伐のための集材路を建設した際に,ナキウサギの生息地を破壊し,また同林班43小班では「受光伐」との名目で皆伐を行い希少な野生動植物の生息地を破壊しました.私たちはこのような伐採に疑問を持ち,貴職らに上記152林班43小班の伐採について現地での説明を求めているのにも関わらず,貴職らは市民団体への説明を拒否しています.しかも日高森づくりセンターは,この保安林伐採が保安林制度上の択伐の面積要件を越える違法な伐採であり,森林法違反行為にあたることを昨年12月2日に認めていたことが明らかになりました(2006年7月27日付朝日新聞).違法伐採を認めながら,市民団体への説明を拒否しつづける貴職らの対応には,疑問を抱かざるを得ません.

このような状況でありながら,希少動植物の生息地でひきつづき環境調査を行わずに伐採を行うのは容認できないことです.

 しかも,北海道は「北海道森林づくり白書」で,「今後は,木材生産を目的とする皆伐,択伐を廃止し,複層林化や下層木の育成を目的として行う受光伐を導入するなど,公益性を全面的に重視した道有林の整備を推進」していくことになっています.しかし,当該伐採予定地の伐採種は「受光伐」ではなく「択伐」であり,北海道の方針にも反する伐採です.

 環境調査も行わず,自然保護団体へ伐採の説明も行わず,しかも北海道の方針に反する「択伐」を行うのことは到底納得のできないことであり,直ちにこの伐採を中止するよう申入れます.



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