ナカガワイチョウガニ
Cancer (Romaleon) nakagawaensis KATO and HIKIDA 完模式標本
2008年に千葉県の石井明夫さんが見事なカニの甲羅化石をワッカウエンベツ川の河原で採集されました.含まれていた岩石の特徴や周囲の地質から,このカニ化石は,中期中新世(約1600万年前)の大和層から由来したと推定されました.甲羅の形態は,現生種イボイチョウガニに最も似ていますが,異なる特徴もあり,千葉県立中央博物館の加藤久佳博士および当館の疋田博士の共同研究で,ナカガワイチョウガニとして2002年に新種記載されました.
日本のイチョウガニは,現在日本海側では男鹿半島以南,太平洋岸では東京湾以南の潮間帯~水深100mくらいの砂泥底に生息しています.ナカガワイチョウガニは,北太平洋地域におけるイチョウガニの仲間の化石記録としては,最北のものです.大和層は,全般的に寒冷な海に生息する貝化石やその他の化石が多いものの,一部から温暖な海に生息していたと考えられる化石も発見されることから「中期中新世海洋亜熱帯事変期(Mid-Neogene Climatic Optimum)」という,現在より暖流が北上し,北海道南西部まで亜熱帯の気候だった頃にたまった地層と考えられています.ナカガワイチョウガニは中川は暖かかった頃の証人となる化石です.
公表論文;H. Kato and Y. Hikida (2002) Anew fossil Camcer (Decapoda:Brechyura:Cancridae) from the Middle Miocene of northern Hokkaido, Japan.Bull.Nakagawa Museum of Nat.hist. vol.5, p47-52.