ナカガワニシン


側面より:頭部はほぼ完ぺきに保存されています.胸ビレ,腹ビレのの一部が保存されています。

背側より:魚化石の断面がみえますが,背骨などの骨は確認されません.背ビレの一部が保存されています。

腹側より:ウロコの様子がよくわかります。

頭部の拡大:眼孔がみえます,口(あごの部分)もよく保存されています.右にアンモナイト(メソプゾシアの仲間)がみえる.このほか,スカラリテス,エゾイテスが一緒にみつかりました。

東アジア初の恐竜時代の海水魚化石発見

ナカガワニシン(Apsopelix miyazakii)と命名
 
 

2004年の地質調査の際に中川町の天塩川の支流から中生代白亜紀の地層から魚化石が町内在住・宮崎明朗さんによって発見されました。同じく町内在住の西野孝信さんがこの化石をクリーニングしたところ、魚化石は頭部~腹部までが立体的に保存され、紡錘形の体にはウロコや胸びれが認められることがわかりました。一緒に発見されたアンモナイト化石から、この魚化石は白亜紀後期チューロニアン(約9,000万年前)の海水魚であることが明らかになりました。
 この魚化石は、頭部の特徴等から、東アジアではじめてのクロッソグナスス科のアプソペリックス属で、さらに新種であることが、北九州市立自然史・歴史博物館の籔本美孝博士と中川町エコミュージアムセンターの研究で明らかになり、発見者の宮崎さんにちなんでアプソペリックス・ミヤザキイ(Apsopelix miyazakii)と名付けられました。また、この新種の魚類は、ニシンに近い仲間であることから、和名を「ナカガワニシン」としました。この研究成果は、2012年4月30日発行の日本古生物学会欧文誌「Paleontological Research」で発表されました。
 
 

ここがすごい!ナカガワニシン

1)頭部から腹部までつぶされずに,立体的に保存された魚類化石であること.
 →この時代の魚化石は骨だけが保存され,しかも地層中で圧縮され平面化したり,変形したり,骨がバラバラになったりしている場合が多いですが,この化石は生きていた時と同じように頭部やウロコや鰭のついた紡錘形の体に保存された珍しい標本です.
2)白亜紀~古第三紀に繁栄した海水魚クロッソグナスス科に属するアプソペリックス属魚類の新種です.
3)この種類の化石は、これまでは北アメリカとヨーロッパからしか発見されておらず,東アジアからは初めての発見です.
4) 今回の発見は、アプソペリックス属魚類が汎世界的に分布していたことを示しており,当時の海水魚類の分布や進化を考える上で重要な化石記録の一つとなりました.
 
 
 
 
【文献】Yoshitaka Yabumoto, Yoshinori Hikida and Takanobu Nishino(2012)Apsopelix miyazakii, a New Species of Crossognathid Fish (Teleostei) from theUpper Cretaceous of Hokkaido, Japan. Paleontological Research, 16(1):37-46.