2005年9月16日

ラリー・ジャパン2005スポンサー各位
                     十勝自然保護協会 会長 安藤 御史

        ラリー・ジャパン2005への協賛見直しの要望

 北海道十勝地方の林道では2001年から毎日新聞社が主体となって,国際格式の自動
車ラリーが毎年開催されています. 2001年7月には毎日新聞社が当会に説明会を行
い,記者発表資料と環境調査報告書(抜粋版)を配布しました.配布された記者発表資
料には「環境に配慮したラリーの展開」として,環境に対して手を加えない,国立公や
鳥獣保護区,貴重な自然環境地域はコースから除外する,環境調査を行い内容を公開す
る,意見や批判は速やかに運営に取り入れるなどの事項が明記されています.また環境
調査報告書には,国立公園の特別地域から約10km,シマフクロウの繁殖地から約
5km,ナキウサギの繁殖地から約3kmはコースから除外するなど,コース選定の基準
が具体的に説明されています.毎日新聞社はラリーが環境へ悪影響を与えることを開催
前から十分認識し,「自然との共生」をテーマに掲げ,環境対策を講じることによって
自然保護団体等の理解を得ようとしたのです.このように十勝での国際格式のラリーは
主催者である毎日新聞社が主体的に環境調査を行い環境への配慮を明言したうえで開催
されました.当会はこのラリーが森林生態系に悪影響を与えるものであるため,当初か
ら反対の立場を表明してきました.


 毎日新聞社が説明した「環境への配慮」は,環境調査の杜撰さがあったものの,当初
はおおむね守られていました.しかし,2003年からはその社会的約束が守られなくな
り,絶滅危惧種の生息地や国立公園内,あるいは国立公園の特別地域に隣接する林道で
もラリーが行なわれるようになりました.当会や道内の自然保護団体は2004年の世界
選手権(ラリー・ジャパン2004)の開催前に,新得町のコースが絶滅危惧種で環境省
が保護増殖事業を行っているシマフクロウの生息地に隣接していたり,コース脇にナキ
ウサギの生息地があることに気づき,主催者や関係自治体,関係省庁にこの事実を伝え
て対策を求めました.しかし,自然保護団体の要請はすべて無視されてラリーが実施さ
れました.北海道の鳥類研究者ら6名も,コース近くにシマフクロウが生息することか
ら,主催者に対してこのコースの使用中止を求めましたが,回答はありませんでした.
その後このコースの近くには絶滅危惧種のクマタカが生息していることも明らかになり
ました.毎日新聞社は自ら行なった環境調査でこれらの動物の生息を把握していたにも
関わらず,公言を反故にしてラリーコースに選定したのです.

 今年2月に,当会・ナキウサギふぁんくらぶ・北海道自然保護協会・北海道自然保護
連合の4団体は,毎日新聞社に環境調査報告書の提出と説明会の開催を求めましたが,
これも無視しています.毎日新聞社は環境調査報告書を公開したり環境NGOの意見を取
り入れることを公言しており,このような態度も約束違反です.さらに,今年4月には
ラリー・ジャパンの公式ホームページで予定コースを発表し,今年のラリーでも絶滅危
惧種の生息するコースや国立公園に隣接する林道をラリーコースに選定していることが
わかりました. 5月には4団体で毎日新聞社に抗議声明を送付しましたが,毎日新聞社
は説明責任を果たさず沈黙しています.このために当会は6月下旬からホームページで
林道ラリーの問題点を指摘するとともに毎日新聞社の不誠実な態度を告発し,毎日新聞
の不買運動を開始しました.ホームページではラリーが自然環境に与える影響について
説明しているほか,林道使用許可の申請前に観戦券を販売しているなど,ラリージャパ
ンに関わる問題点や情報も掲載しています.関係者の皆様は是非お読みください.URL
http://city.hokkai.or.jp/~kagamiです.


 ラリー・ジャパン2005に協賛し,スポンサーとなっている皆様にも毎日新聞社の反
社会的態度を知っていただくとともに,自然保護上大きな問題を抱えるラリー・ジャパ
ンへの協力を再考されるよう要望いたします.