2005年6月17日

十勝東部森林管理署長      様

十勝西部森林管理署東大雪支署長 様

 十勝自然保護協会会長     安藤 御史

                  ナキウサギふぁんくらぶ代表  市川 利美

                  (社)北海道自然保護協会会長 佐藤  謙

                  北海道自然保護連合代表    寺島 一男

 

「ラリー北海道2005(APRC)」および「ラリー・ジャパン2005(WRC)」

の環境問題についての再要請

 5月18日付けの私たちの要請に対し,貴職から5月31日付けで次のような回答がありました.

 『「ラリー北海道」および「ラリー・ジャパン」における国有林の林道利用については,関係市町長等の強い要望を受け,森林の有する機能,森林生態系の保全,自然環境の維持等を十分配慮する中で,国有林野事業の遂行に支障のない限度において,林道利用承認の可否について検討を行なう考えであります』

 これらの回答から,貴職は自然環境への配慮が十分行なわれる必要があると認識していると理解いたしました.しかし,以下の理由から,主催者が環境へ配慮しているとは考えられません.このような状況においてのラリー大会の実施は,森林生態系の保全に悪影響を与える恐れがあります.したがって,主催者が自然環境への配慮を十分行なわない限り,林道の使用許可を与えないことを再度要請いたします.

 


 

1.主催者は自らに課した環境配慮を無視している・・・主催者の中心的存在である毎日新聞社は,2001年の「インターナショナルラリーイン北海道2001」の開催前に実施した環境調査の報告書のなかで,候補コース選定のフロー図を示しています.これによると,「国立・国定公園などの保護区域」「国立・国定公園の特別地域などのバッファーゾーン(10?程度)」「文献調査による希少な動物の繁殖地のバッファーゾーン(ナキウサギ3?程度・シマフクロウ5?程度)」は,現地調査を行う前に,候補コースから除外しています.つまり,このような条件に当てはまるコースは自然環境への影響を考慮して,はじめからラリーコースの対象外としているのです.新得町のコースは,国立公園の特別地域を通過していますし,ナキウサギ・シマフクロウ・クマタカの生息地であることから本来当然除外しなければならないコースです.足寄町東部のコースも阿寒国立公園に隣接しているので,除外すべきコースです.主催者みずからが環境への影響を考えて不適当とした条件のコースを,何の説明もなくラリーコースとして使用することは,環境への配慮することをやめたとも受け取られる行為です.

2.動物に与えるストレスの懸念を払拭できない・・・私たちが懸念している影響とは,ラリーカーやヘリコプターの騒音やラリー競技のほかコース整備や試走で人や車が頻繁に立ち入ることが動物にストレスを与え,繁殖活動や行動に悪影響を及ぼす可能性があるということです.北海道の鳥類研究者ら6名が主催者に提出した要請書でも「シマフクロウは警戒心が強い鳥で,繁殖期でなくても多くのラリー車による爆音や高速走行,ヘリコプターの騒音や接近,また多くの車や人が集まることによって縄張りや巣を放棄してしまう恐れがあります」と指摘しています.このようなストレスを測定したり,個々の希少動物の繁殖状況,行動の変化などを詳しく把握することはきわめて困難であり,影響がないという判断は簡単にはできないはずです.主催者がナキウサギやシマフクロウの繁殖地周辺をバッファーゾーンとしたのも,このようなストレスによる影響を考慮してのことでしょう.影響がないと断言できない以上,安易にラリーを行なうべきではありません.

3.情報公開を拒否する主催者はラリー実施の資格がない・・・主催者は,2001年の「インターナショナルラリーイン北海道2001」の記者発表資料のなかで,「環境調査結果などの情報は環境NGOなど第三者に対して内容を公開します.ご意見やご批判については,速やかに運営に取り入れ,問題点については直ちに改善できる機動的・柔軟な組織にし,環境NGOとのパートナーシップを目指します」と明記しています.しかし2001年のラリー開催前に十勝自然保護協会に説明会を開き,環境調査報告書(抜粋版)を配布して以降は,自然保護団体への環境調査報告書の提出や説明会の開催を拒否し,度重ねて提出している要望や抗議もすべて無視しています.また,鳥類研究者らの要請にも回答をしていません.主催者はこのように社会的道義に反する態度をとりつづけていることから,環境問題を真剣に考えていないものと思われます.