2005年9月24日

 環境大臣
 小池 百合子 様

                        十勝自然保護協会     会長 安藤 御史
                        ナキウサギふぁんくらぶ 代表  市川 利美
                       (社)北海道自然保護協会 会長  佐藤  謙
                        北海道自然保護連合 代表    寺島 一男

     『ラリー・ジャパン2005(WRC)』の環境問題に関わる再要請書

 標記の環境問題は、国有林を中心とし国立公園に近接したラリー実施予定地に希少種を含む多様な生
物相が見られるため、ラリー実施によって希少種を初めとする生物とその生息地環境、総じて貴重な自
然への多大な影響が危惧される点で、また、それに対してラリー主催者が環境影響評価とそれによる対
策を何ら行なってこなかった点で、国際的にも国内的にも大きな問題であると考えます。

 貴職には、自然保護に関する法令や理念に基づき、希少野生動植物の保護や自然公園の管理を十分に
行なう多大な責務がありますので、ラリー予定地の現状把握とともに、ラリー主催者に対して責任と実
効のある指導をすべきと考えます。これらの観点から、改めて、貴職に以下のことを要請いたします。

1.貴職・環境大臣に再要請する理由:西北海道地区自然保護事務所との交渉経過

 私たち4団体は、去る5月18日、貴職に対して「『ラリー北海道2005(APRC)』および『ラリー・
ジャパン2005(WRC)』の環境問題についての要請」と題した文書を提出しました。この要請文の中
で、私たちは、環境省が2004年の日本共産党の政府交渉において「シマフクロウの営巣は把握してお
り、クマタカについてもできるだけ早く把握していく。ナキウサギについてもできるだけ協力してい
く。主催者側でも十分に把握してもらい、つき合わせをして、コースが生息地にかかる場合は避けるよ
う助言していく」と回答をした事実(しんぶん赤旗2004年12月18日北海道版)を指摘しております。

 貴職は、私たちの要請に対する回答を西北海道地区自然保護事務所に託しました。しかし、同事務所
からは、私たちが求めた文書による回答がありませんでした。そのため、私たちは6月17日に同事務
所を訪れ、次長と野生生物科長から口頭による説明を受けました。その際、同事務所から、シマフクロ
ウ保護増殖検討委員会の意見をラリー主催者に伝えコースの変更を求めたとの説明がありましたが、ラ
リー主催者はその要請を無視したままにありますので、貴職の対応は実効を伴っておりません。また、
同事務所の説明には、日本共産党の政府交渉における環境省の回答に即してクマタカやナキウサギの生
息状況を把握しているという説明は一切ありませんでした。さらに、私たちは、ラリーコースとなる林
道の路肩にナキウサギの生息痕跡(貯食)が確認された事実を指摘しましたが、同事務所からはナキウ
サギの保護策に関して何ら説明がありませんでした。以上の経緯において生じた疑問を含んで、私たち
は再度、質問書(7月15日付、添付資料参照)を作成し、同事務所に送付しました。しかし、要請し
た文書による回答がなされませんでした。その後、十勝自然保護協会事務局長から電話によって文書回
答を督促しましたところ、同事務所の返答は「文書で回答する意志はない」とのことでした。したがっ
て、貴職が回答を託した西北海道地区自然保護事務所からは、私たちの要請に対する正式かつ明快な回
答がないままにありますので、ここに、貴職・環境大臣から、以下について直接の回答を求める次第で
す。

2.貴職に対する再要請項目

(1)環境省みずから、当該地の希少種を初めとする自然の現状把握をすべきこと

 ラリー実施予定地には北海道らしい自然が残されております。そうした中で、とりわけ希少なシマフ
クロウ、クマタカ、そしてナキウサギが生息している場所において、ラリーによる爆音・排気ガス・土
砂等の周辺へのまき散らしなどの影響が多大であると、容易に予測、判断されます。貴職は、環境省み
ずからの手で、ラリー予定地において植物を含む希少種の現状を把握すべきであり、その上でそれらの
保護策を構築する多大な責任があると考えます。

(2)貴職からラリー主催者に対して、「環境影響評価書とそれに基づく保全対策を公表し、国民の理
解を得るよう」、実効ある指導をすること

 ラリー主催者は、2001年、十勝で国際ラリーを開催する際、みずから「シマフクロウの繁殖地から5
キロメートル以内、またナキウサギの繁殖地から3キロメートル以内は、コースとして選定しない。貴
重な自然環境地域はコースから除外する」などと公けに約束しており、また「環境調査報告書を公表す
る」とも公言しております。しかし、これらの公け・国民に対する、いわば公約はまったく守られず、
その後年数を繰り返して、ラリーが強行され続けており、この問題の経緯は、国際的にも特筆すべき悪
例と考えます。西北海道地区自然保護事務所がシマフクロウ保護増殖検討委員会の意見をラリー主催者
に伝えコースの変更を求めたとのことですが、ラリー主催者はその要請を無視したままにあります。そ
のため、貴職はラリー主催者に対して実効ある指導を再度行なうべきと考えます。

(3)西北海道地区自然保護事務所に文書による明快な回答をさせること

 行政担当者には、国民の疑問に対して明快な説明責任があると考えます。私たちの疑問に対して、
が回答を託した西北海道地区自然保護事務所は、明快な回答をしておりません。貴職は、その権限内
同事務所に対して、文書による明快な回答を行なうよう指導することをここに要請します。

 貴職は、以上の3項目についてどのように考えられているのか、速やかに文書で回答していただきた
く、ここに要請する次第です。環境の時代とされる現在、その代表となるべき貴職から、前項1で述べ
たような無責任な回答がないことを切に願っている次第です。貴職からの回答は、文書によって10月8
日までに、下記宛てに送付して頂けますよう、宜しくお願いいたします。

 回答送付先: 080−0101 北海道音更町大通10丁目5番地

        佐藤与志松方 十勝自然保護協会

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