士幌高原道路中止の評価と私たちの運動の総括

 
 知事の中止決定は、私たちの28年間のねばり強い運動が世論の大きな高まりを呼び起こして勝ち取った成果である。

 この運動は、十勝自然保護協会、北海道自然保護連合、北海道自然保護協会の共同活動を基に、道内外の自然保護団体、市民団体の支援活動があって、ねばり強く持続してきたことが大きな力となった。
 前記三団体は三者協議会を構成し、繰り返し協議を重ねて共同歩調をとってきた。
 このほか・道内の積極的活動団体としては、道外にまで会員を広げて地域写真展などユニークな活動をしたナキウサギふあんくらぶが特筆される。
 地元十勝では、十勝自然保護協会と地球環境を守る連絡会(労連十勝ブロック傘下の組合・帯広新婦人・高教組十勝支部)が「士幌高原道路に反対する連絡会」を結成して、毎月末の街頭署名を続けた。
 
「大雪山国立公園内にこれ以上車道はいりません」の反対運動に対する世論の支持は、全国20万筆を越える署名(205,717筆)となって具体的に表明された。
 1992年11月からスタートし、1年間で早くも10万筆を越える反応があった。道外では諌早湾、海上の森、圏央道などの問題に取り組む団体や各地労山、野鳥の会など実に多くの団体から署名の協力があった。湖畔で観光客に呼びかけ1万筆に達する署名を集めた士幌町民など個人の活動も多数あった。

 インターネットホームページの開設をし、きわめて大きな反響があった。

 ナキウサギ裁判は知事のr中止決定」を促した一要因であり、64名を擁する弁護団と1237名の支援の会に支えられ、原告側の優勢は公判を追うごとに明らかとなった。環境裁判としても、生物多様性条約概念を据え、現地検証や陳述など論証手法でも画期的みがなされ、結局提訴取り下げをしたけれども.事実上の勝訴を勝ち取った。このことは全国の環境裁判への影響のみならず、環境問題で現に取り組んでいる人々に展望を開かせ るものとなるであろう。
 この運動において、多数の科学者、専門家が参加したことは、中止の成果を生み出す不可欠の要因であった。地元十勝では、早くから,帯広畜産大学をはじめとする研究者によって然別湖周辺の自然の調査が行われてデータを蓄積することができた。さらに、マツダタカネオニグモの発見や「風穴植生」とナキウサギ生息に関する解明が進み、この地域の自然認識に大きく貢献した。
 これらの要因のすべてが、世論を建設反対に導いた。その結果、道庁をしてムダな公共事業見直しの「時のアセス」の発想を生ませ、さらに、r中止」決定に至らしめたのである。
 「時のアセスjからr知事決着jに至る過程は、不透明で、道政における限界が明らかこなった。 地元十勝の推進勢力として・自治体・道議会議員・国会議集、一部労働組合、容認自然保護団体の開発優先に撤した役割は強固なものであったが・自然保護の世論がこれを圧倒した。
 知事の発表は「未開削区間の中止」となっている。然別湖周辺の自然保護問題にはさらに課題を残しており、今後浮上してくるものと思われる。
              (十勝自然保護協会 1999年5月22日総会報告)
 
 
 


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