HLA帯広設立記念講演会 1996.11.18 北海道ホテル
『骨髄移植/最新の医療事情』
ご講演の栞
笠井正晴さん ‥‥ 札幌北楡病院副医院長
こんばんわ。札幌北楡病院の笠井と申します。本日は、十勝の地域にですね、北
海道骨髄バンク推進協会帯広支部というのが設立されたわけです。このことは、私
としましても敬意を表させていただきます。ともうしますのも、現在まで北海道内
でこのように骨髄バンク運動に積極的にご協力なさっていただける施設ともうしま
すのが、札幌、それて釧路、帯広とこの輪がどんどんと広がってきております。こ
のような支部ができますのも一重に、多くの患者さん、あるいはご家族のご助力、
その善意と申しますか、執念と申しますか、そのようなものが結実して初めてこの
ような会ができあがるのだと思います。そのような会で、今日、骨髄移植について
お話させていただくことは非常に光栄に存じております。今日は皆さん方に、「骨
髄移植とはどういうものであるか」、また、このようにバンク活動とかあるいは世
界的にどういう情勢下にあるかということについて、お話させていただきいと思い
ます。また、この会を開いて下さいました帯広シティケーブルテレビジョンの方々、
あるいは十勝毎日新聞、道新、NHKの方々、及びボランティアでご活躍下さって
いる方々に深謝申しあげます。それではスライドお願い致します。
[シアトル][フレッド・ハッチンソン・ガン研究センター][トーマス夫妻]
骨髄移植と申しますのは、骨の中にある血を作る母親の細胞を点滴で入れること
をいいます。そのような治療法を事を返しますと多くの苦労の結果、今日に至って
おります。骨髄移植のメッカと申しますのは、アメリカの西海岸にありますシアト
ル、これはシアトルの街なんですけれども(スライドお願いします)、非常に風光
明媚な地でヨットとか運河があったりする町なんですけれども、そこにフレッド・
ハッチンソン・ガン研究センターというのがございます。ここのフレッド・ハッチ
ンソンという方も、メジャーリーグの野球の選手でありまして、その方、ガンとい
うか白血病になられて、なんとか自分の経験をもとに皆さんに協力できないかとい
うことが元で基金を作られまして、このガン研究所を作られました。そこでは、骨
髄移植の研究が盛んに行われておりまして、その中でも(スライドお願いします)
この先生がトーマス先生といいまして、一九九〇年度ノーベル医学・生理学賞をい
ただいた先生なんですけれども、普通、臨床の場でノーベル賞をもらうということ
は少のうございまして、普通は基礎的な研究をした人に対してノーベル賞がもらえ
るわけです。ところがこの先生は骨髄移植という治療法を確立したという功績を讃
えられまして、ノーベル賞をもらいました。ところが最初は、人殺しの医学である
とかですね、人の白血球抗原といって組織型の合う方の血をもらうわけなんですけ
ども、最初はそういうどのような条件下で移植を行ったらうまくいって、どのよう
な時には失敗してうまくないか、そのような条件分けをいろいろ批判されながらも
頑張った先生がトーマス先生で、非常に温厚な先生で、隣にいらっしゃるのが奥さ
んなんですけども、夫唱婦随で奥様はこの研究所の秘書をされていまして、この研
究所のご夫妻がこの研究所を牛耳っていらつしゃるんですけども、ここの若い先生
たちとか皆さんは決してドクター・トーマスのことを悪口を言わないくらいの人格
者であります。そこの所に一九八五年ですけれども、研修に行かせていただいて、
北海道で骨髄移植を始めました。(スライドお願いします)
[骨髄移植法とは] 骨髄移植と言いますのは、骨髄の中にあるですね、白血病
細胞とか全身に広がっているガン細胞を抗ガン剤とか放射線などで無くした後で、
きれいな血液のもととなる細胞を輸血することを言います。ですから、決してどこ
かの骨を植えるということではなくて、輸血と同じように血を造るもととなる細胞
を点滴で入れることを言います。(スライドお願いします)
[血球の分化] 最初に血のお話を少ししますと、血というのは造血系の幹の細
胞、幹細胞って言うんですけど、これが母親の細胞で、それが酸素を運搬する赤血
球とか血を止める血小板、あるいバイ菌をやっつける顆粒球とかですね、単球、そ
れから免疫を司るリンパ球、このようなものに分化して我々の血の中を流れており
ます。(スライドお願いします)
[骨髄液] これはいきなりですね、骨髄の中の血をちょっと採りますとどのよ
うになっているかといいますと、ちょっと黒っぽくなっているんですけれど、これ
が赤血球で、あとこういうような未熟な細胞がたくさんあって、段々と分化してき
て、最後に我々の血管の中を流れてくるということで、血のもととなる細胞は骨の
中にあります。ですから、これを採ってそれを移植する訳です。(スライドお願い
します)
[血液の癌] 血液のガン、これが骨髄移植の時の主な適応疾患なんですけれど
も、白血球系がガン化するものが急性の骨髄性白血病とかですね、リンパ球がガン
化するものがリンパ性の白血病、それとあと形質細胞というものがありまして骨に
付くガンとかですね、こういうように悪性化したものを主な対象としておりますし、
これら顆粒球とかリンパ球、それから血を造る赤血球、そういうものを十分作れな
いのを再生不良性貧血といいます。ですから、血液の疾患に対してこの骨髄移植と
いう治療法はですね、今まで雑草だらけだった畑をですね、すべて雑草を取り除い
て整地して、そこに種を蒔いて新しい花を咲かせるというやり方が骨髄移植です。
(スライドお願いします)
[癌に対する治療法] 実際に普通ですね、ガンに対する治療はどういうような
治療があるかといいますと、外科的に取れるものは外科的に取る。それから外科的
に取れないもの、あるいは抗ガンの効くものは抗ガン剤治療を行います。また、放
射線を用いた放射線治療、それと免疫療法、このようなものがあります。
[抗癌剤に対する感受性] しかし、これらのガンの中で抗ガン剤に効くガンと
いうのがあるですけども、それはまだ数が少なくて、普通よくある胃ガンとか肝臓
ガン、肺ガン、大腸ガン、このようなものは通常抗ガン剤に効きにくいです。です
から、大量の抗ガン剤とか放射線で治療してもなかなか細胞が死にきらない。とこ
ろが、白血病とかリンパ腫、睾丸腫瘍、このようなガンは抗ガン剤を大量にすると
消えてくれます。ですから、大量の抗ガン剤を使って副作用をなんとか押さえつけ
てですね、そうしますとこれらのガンが消えてくれて、そこに元気のいい血のもと
となる細胞を入れると病気が治る、というようになります。(スライドお願いします)
[非血縁者間骨髄移植の内訳] 実際に、このバンクシステムが出ましたのも、
普通はドナー(提供者なんですけれども)、骨髄液を提供して下さる方が兄弟だと
反応も少なくていいんですけれども、なにせ平均核家族化で一.五人とかですね、
兄弟が少のうございますので、兄弟から血をもらえる確率が非常に少ない。そうな
りますと、他人で組織型の合う方からいただくということになります。そういう意
味でも、個人の力ではとても無理でして、これも最初バンクの始まる前はですね、
やはり自分のご家族に白血病がいて、骨髄移植という治療できないかと、普通は兄
弟から血をもらうんだけれども合わない。そういう場合、親戚とか友達とか、多く
の方々のですね、HLAと言いまして人白血球抗原ていう組織の同じ方を探す、そ
れも十人や二十人はだめで、百人、二百人という単位でご苦労されている方々がい
らっしゃいました。そのようなご苦労も、皆さんたちのボランティア活動とか、こ
のような会ができることによって、骨髄バンクとしてちゃんとシステム化されるよ
うになりました。その第三者の方の骨髄を使って行う治療が非血縁者間骨髄移植と
いいます。血縁者は兄弟とか親なんですけれども、非血縁者っていうのは第三者、
他人からもらう移植をいいます。そのような移植の適応はどのような病気が大半な
されているかと言いますと、世界的にみてもこの肌色のところが急性の白血病で、
黄色いところが慢性の骨髄性白血病、青いところがリンパ腫、水色が再生不良性貧
血、その他骨髄を十分に造れない病気。ということで、大体どのような疾患が骨髄
移植の対象となっているかということが分かると思います。日本でも大体これは同
じでありまして、白血病が大半でありまして、あと再生不良性貧血とかリンパ腫そ
の他のガンということになります。これらのガンに対して、骨髄移植を積極的に行っ
てきております。(スライドお願いします)
[骨髄移植治療ステージ] ちょっと見にくいんですけれども、患者さんがいらっ
しゃった場合ですね、骨髄移植にいくまでの過程なんですけれども、まず最初、抗
ガン剤治療とか放射線治療を行って元気のいい状態にします。その間、ドナーがい
らっしゃったら、第三者あるいは兄弟から血をもらって、その前に大量の抗ガン剤
治療をしてガン細胞、白血病細胞を無くしておいて、新しい種を植えると。ない場
合のやり方はですね、もう一つ自分の元気のいい血を造るもととなる細胞を採って、
保存して置いて入れるという方法もございます。このような流れで、いきなり白血
病だからといって骨髄移植をすぐやるのではなくて、通常の抗ガン剤療法を何回か
やって、見かけ上元気な状態にしてから移植というふうになります。(スライドお
願いします)
[HLA] ここにHLAと書いてありますけれども、これははからずも今日の
会のLove Aidということで、この会を設立して下さっている方の会のHL
Aとかけて名前を付けられたということなんですけれども、これは人の白血球抗原
といいまして、人の細胞を目とか鼻とか口と同じように同定するのにふさわしいも
のを持っていまして、それが同じ人同士が合うということになりまして、HLAと
いう白血球の抗原のあった方から移植を行うなな合わない場合にはですね、やはり
喧嘩しますので成功率が悪くなるので普通は行いません。(スライドお願いします)
[HLAと遺伝] お父さんとお母さんがいらした場合ですね、子供ができる時
にはお父さんがabと言う染色体を持っている、お母さんがcdというのをもって
いるとですね、お父さんの一つとお母さんの一つの組み合わせになりますので、大
体確率的には二十五パーセントくらいしか兄弟間では合わないということで、七人
も八人も兄弟がいれば一人くらい合う確率は高いんですけども、子供が一人しかい
ないとかですね、二人しかいないという場合には普通はなかなか合わないと。普通
は、父親と母親は、大谷さんの場合は偶然にお母さんと非常に近い関係にあって合
われたんですけれども、普通は親子では合わないというふうになりますので、兄弟
のいない場合には他人の骨髄を期待するしかないというふうになります。(スライ
ドお願いします)
[骨髄採取部位] 骨髄を実際に採る時には、血のもととなる細胞は骨の中、ど
こへいっても基本的にはあるんですけども、特にこの腸骨、骨盤ですね、この中に
大量にありますので、ここも採りやすくて厚いので、ここの腸骨から採ります。
(スライドお願いします)
[骨髄採取] これは、実際に骨髄を採取しているところなんですけれども、腹
這いになって全身麻酔でおしりのところから針を刺して、約六百から千cc位の骨
髄液、これは普通の血のようですが、濃いめでどろっとしています。このような血
を採りますと、そこの中に造血系の幹細胞、母親の細胞がたくさん入っています。
(スライドお願いします)
[輸血パック] 採ったものはですね、輸血を見られた方はちょっとおわかりに
なるかと思うのですけど、普通の赤血球輸血をするよりは濃いめのどろっとした血
が採れます。これが骨髄液です。これを実際にフィルターにちょっとかけるんです
けれども、このまま直接輸血するのが骨髄移植ということになります。赤血球の型
が合わない場合ですね、A型、B型、O型、AB型とありますけど、血液型が合わ
ない場合は赤血球を取り除いた細胞を入れます。(スライドお願いします)
[同種造血幹細胞移植] これはちょっと見にくいんですけども、移植日をDay
ゼロ、ゼロ日としますとしのすと、その前に抗ガン剤とか放射線治療を行って、こ
のDayゼロの日に移植を行います。点滴で先ほどの輸血を行って、その間ですね、
白血球が生着するまで大体二週間ちょっとかかるんですけども、この間通常は無菌
室という中にいて、普通人間の体は鼻とか肺とか腸はきたないですから、抗生物質
とかカビの薬を飲んだり吸入したりしてきれいにした状態で行います。そうします
と、より感染を起こす頻度が少ないということで、通常は無菌室治療ということに
なりまして、それが通常の治療と違ってちょっと大変なところなんです。(スライ
ドお願いします)
[無菌室] これは無菌室なんですけれども、一つのユニットになっていて、通
常はこのビニールのカーテンがあって、この中には通常入っていかないで外から対
応します。ここから声をかけあって「元気ですか」とかですね、あるいはここに手
袋があるんですけど、ここから通して患者さんを診察するというような無菌室治療
になります。(スライドお願いします)
[スタッフの服装] スタッフが中に入る時には、このようにマスク、ディスポー
トですね、無菌のこういう白衣に近い形の帽子から手袋から靴をはいてですね、中
に入ります。ですから、普通治療は病院で受けるよりは、医療側も手がかかります。
これを着るにあたっても、二人くらいヘルプをしないと着れませんし、その間ずっ
と外で中から要求される物品をですね、入れたりするのも時間と手間がかかります。
(スライドお願いします)
[骨髄移植後の感染症] これはちょっと見にくいんですけども、移植の時にで
すね、今は百パーセント成功するわけではなくて、未だにこの学問というのは発展
途上でありまして、どんどん成績が向上してきているんですけれども、どのような
合併症が起きるかといいますと、これは白血球の数を指していますけども、普通は
白血球は四千から八千くらい単位あたりあるんですけども、それが抗ガン剤などや
るとからからに無くなってしまいます。この間ですね、無菌室できれいな治療を行
います。白血球が回復してくると、抵抗力がついてきますから、その間、ウィルス
に対するまだ感染が弱いとかですね、あと拒絶反応がどうしてもちょっときます。
そのような合併症をなんてかクリアして、お元気になられるというふうになります。
ですから、この最初の百日前後位がいろいろ合併症が起きやすい時期ですので、無
菌室から出たあとも、最初の三ヶ月間というのは非常に注意が必要です。慢性化に
なりますと、その病気自身はちょっとゆるやかになりますので、大体コントロール
できるというふうになります。(スライドお願いします)
[移植片対宿主反応(GVHR)] これも喧嘩なんですけども、拒絶反応なん
です。ドナー、提供者のですね、リンパ球もたくさん入ります。ここの中に白血球
とか赤血球、血小板を造るもとなる幹細胞ももちろんはいるんですけども、リンパ
球といって喧嘩の兵隊です、これも入ります。そうしますと、患者さんの体のいろ
んな組織と反応してしまいます。いくらHLAが合っていても、この喧嘩が半数以
上の方で起きます。肝臓で起きた場合には、体が黄色くなって黄疸になってしまい
ますし、腸の組織で反応したら下痢になります。皮膚と反応したら、皮膚が赤くな
ります。そのようなのは骨髄移植の特徴的なひとつの合併症の一つです。(スライ
ドお願いします)
[合併症(手)] やはりちょっと見にくいかもしれませんけども、このように
浮腫状になって、むくんで色がちょっと白くなったり赤っぽくなったり、まだらに
なっていますけども、これも反応が起きてる証拠です。(スライドお願いします)
[合併症(胸)] 皮膚、これ胸なんですけども、ぽつぽつ小さい丘疹、ちょっ
と汚く見えますけれども、小さな紅班状の丘疹がたくさん出ます。(スライドお願
いします)
[合併症(腸)] あと腸の中でも同じように喧嘩が起きるとですね、ちょっと
見慣れていないと思うんですけど、このように顆粒にぽつぽつぽつぽつできます。
それから大腸の中も同じようにですね、ちょっと出血したりするんですけども、良
くなってくるとこっちの左のようにきれいになってきます。ですから、この拒絶反
応というのは全身の病気です。(スライドお願いします)
[骨髄バンク事業] 現在このような移植を行っているんですけども、何せ提供
者の方がいらっしゃらないことには、骨髄移植治療というのは行えません。一九九
一年十二月ですから、今年でちょうど丸五年になりますけども、厚生省もようやく、
名古屋地区とか東海バンクとか北海道、九州、まぁ頑張ってこのような協会が作ら
れてきたんですけども、厚生省も骨髄バンク事業に乗り出していただくことができ
まして、骨髄移植推進財団というのを九一年の十二月に作られました。そしてここ
ではドナーの希望者の募集とかですね、患者、医療機関、コーディネーター、そう
いうようなものを育てたり、整備しました。一方、赤十字センターの方ではドナー
の登録とか、HLAの型の検査というものを行ってくれるようになりまして、この
バンクシステムが順調に動くようになりました。(スライドお願いします)
[登録していただける方] ドナーに登録していただける方なんですけども、年
齢、普通輸血に準じますけども、献血ですね、大体二十才から五十才くらいの健康
な方と、自分の意志とご家族の理解を得られている方ということになります。(ス
ライドお願いします)
[三次検査] 実際にそれじゃドナーになられたらどうするかというと、まず気
持ちに変わりがないのを確認してからですね、採血します。先ほどの三十cc前後
くらいでしょうか、血を採られて、そして実際に反応を見たりしてですね、自分の
組織型というのは登録されます。患者さんの方からご依頼があったHLAの型と合
うか合わないかで、ご連絡があって、ドナーになっていただけますかともう一度聞
かれて、確認されて、ドナーになるというかたちになります。(スライドお願いし
ます)
[患者登録数月次推移] 実際の患者さん登録なんですけれども、九一年の十二
月から始まっていますけども、実際には九二年の初めからなんですけども、どんど
ん行われるようになりまして、この十月で四千五百人を越えております。これは患
者さんの登録です。ところが患者さんの中にはですね、バンクに登録したけれども
HLAが合う方がいらっしゃらない、あるいは待っているうちにですね、病気が悪く
なられて受けることができないというような問題も生じてきました。(スライドお
願いします)
[ドナー登録数月次推移] 実際にドナーの登録なんですけれども、これも例え
ば大谷さんたちがキャンペーンをやって下さるとですね、ぴゅっとこのドナーの募
集登録が上がるんですけれども、ちょっとそういうプロパガンダが少なくなると、
ちょっと下がってくるというようなことで、今、七万七千人くらいですか、二月現
在で。ドナーが増えてきております。まず最低限、十万人登録を目指すと。十万人
にドナーの方がいらっしゃれば、約九割くらいの患者さんが骨髄移植を受けれる。
骨髄移植を希望されていて、受けられないまま亡くなられる患者さんを見るほど忍
びないものはありません。(スライドお願いします)
[非血縁者間骨髄移植症例数] 実際に移植がどれくらいの数行われたかという
ことなんですけども、今年度ぎりぎりくらいで千例近くに達すると思います。どん
どんと順調に受けれる方が増えてきております。(スライドお願いします)
[重症再生不良性貧血患者の移植後の生存率] 実際に成績なんですけれども、
今また、再生不良性貧血の場合には大体六十パーセント前後、これ、若ければ若い
ほど成功率が高いと。しかも患者さんの移植を受けれる年齢なんですけれども、七
十才になって白血病になったんだけど骨髄移植が受けられないだろうかと、言われ
る方もいらっしゃるんですけれども、一応年齢は五十才止まりというふうになりま
す。なぜ五十才なのかと申しますと、人間だんだん歳をとりますと頑固になるんで
すけれども、やはり細胞も頑固になってきて喧嘩する比率も高くなります。拒絶反
応が高くなる、あるいは合併症に対する抵抗力が弱くなる。お子さんだとですね、
そういうような病気に対する抵抗力も強いということになりますので、若ければ若
いほど成功率が高いと。普通、兄弟間でやった場合はもっと成績が良くて、小児だ
と九十パーセント以上くらいの成功率になります。(スライドお願いします)
[白血病患者の移植後の生存率] あと白血病なんですけども、白血病を待って
いるうちとかですね、今の問題点は第一緩解期のいい状態の時にはですね、普通の
リスク、白血病の重症度がいくつかあるんですけれども、あまり良い状態ですと抗
ガン剤治療を続ける、というやり方もあります。ところがある程度進行してですね、
二回目とか三回目とか、白血病細胞が増えているような時期にやりますと成功率は
低くなりますので、やはり、いい状態の時に移植を行うというのが先決になってき
ます。(スライドお願いします)
[無菌室と患者さん] こういうような治療成績もどんどん進歩してまいります。
良い薬が出たり、あるいは免疫抑制剤のいいのが出来る。そのようなことが相まっ
て、患者さんが元気でこの無菌室をまず出られて、退院されるということはですね、
もちろん患者さんは当然ですし、我々医療側としても喜びにたえない、というふう
になっています。(スライドお願いします)
[子供について] 次にいろんな問題が発生してきておりまして、まず命を助け
ることが第一なんですけれども、QOLといいまして、生活の質とかですね、実際
に中身がどうかということになりまして、それじゃ子供は作れないのかとか。例え
ば、大量の抗ガン剤をやった場合には、普通は不妊になります。ですから、男性の
場合であれば精子を保存しておく。女性の場合であれば卵を保存しておく、という
ことが理論上は可能なんです。ところが、男性の場合は精子を保存しておいて、実
際に使う段にそれを融かして使えばいいんですけども、女性の場合にはやはり卵の
保存は可能なんですけれども、それを実際にやるとなると、人工授精させて子宮を
どこかで借りなきゃならない訳です。そうなると、今の日本では代理母と言います
か、そういうのが許されていないので、アメリカに行ってやるかということになる
わけですけれども、そういうような社会環境、そこまではまだ整備されていないと
いうことになっています。(スライドお願いします)
[幹細胞移植に今後寄与すると考えられる事柄] 今後、この骨髄移植がですね、
順調にいってより成功率高く安全に行われるためにはどのような方法があるかとい
うことなんですけれども、薬剤、これも血小板を増やすような因子が開発されまし
たし、より安全に速く血を増やすことができます。それとあと、最近新聞などでで
ていますけども、今は骨髄移植というのが移植の代名詞で使われていますけども、
最近は幹細胞移植という言い方に変わってきております。と申しますのは、我々の
静脈、末梢のですね、青筋立っている静脈の血管からもですね、針を刺して採るこ
とが可能になってきていますし、あと臍帯血、臍の緒を用いてですね、そこの血を
採るとその中に血を造る細胞がたくさんあります。そのような血を使うとですね、
バンクでなくても臍帯血からもできるということで、骨髄バンクの次のですね、バ
ンク活動は「臍帯血バンクを作ろう」という運動で、ですから現在とオプションが
だんだん増えてきています。より安全な手軽な方法が、今後も開発させるようにな
ります。それともう一つ願わくば、このように先ほど全身麻酔で腹這いにして骨髄、
おしらからですね、大量に血を採られるわけなんですけれども、静脈から二〜三十
ccくらい血を採られて、それを培養で増やしてくれて、そうするとですね、どな
たでもご協力願えるようになるんでないか。というような希望もあって、そのよう
な研究もされているところです。あと、今まで使っていた抗ガン剤よりももっと効
く薬、あるいは免疫をうまくコントロールできる免疫抑制剤の開発なんかもありま
すし。この遺伝子導入法と言って、最近の新しいやり方で再発を予防したり、造血
系統のもととなる細胞をですね、じょうずに作るというような工夫もされてきてお
ります。(スライドお願いします)
[末梢血幹細胞移植] 実際に「末梢血幹細胞移植」と書いてありますけれども、
これのために末梢血から幹細胞を採取しているところです。先ほどは、骨髄移植は
腹這いになって全身麻酔で採られていましたけれども、麻酔というリスクがありま
す。ところがこの末梢血から採るとやり方はですね、太い針を静脈に刺されるんで
すけれども、機械で回して成分だけ採って、あとは血を戻しますので、採られる方
はですね、それほど遜色ないと。もちろん麻酔がいらないということで、より安全
ですので、今兄弟間ではこの末梢血幹細胞移植というのが盛んに行われてきており
ます。(スライドお願いします)
[造血幹細胞移植] それと臍帯血。今、申しましたように臍帯血というは分娩
の時に、赤ちゃんが胎盤とつながっているんですけれども、その胎盤と臍帯との間
からですね、血を採るんです。普通は、七〜八十ccくらい採れまして、その中に
血を造るもととなる細胞がありますので、それを使えと。今まで胎盤はそのままで
すね、臍を結んで捨てていた訳なんですけれども、その血は今まで誰も使わなかっ
た、その血をいただければ移植に使える。ということで、苦しまずに、しかも母親
にとってみても一つの命が生まれて、さらにもう一つの命を助けれるかもしれない、
というようなこともございまして、臍帯血移植というのが今、小児科移植で始まっ
たところです。ただ問題は臍帯血、先ほども言いましたように血が十分ではなくて、
採れる量が決まっておりますので、今のところは大体四十キログラム以下くらいの
方に対して移植をできるということで、大人の七十キロとか八十キロの方にはまだ
ちょっと血が少ないので、それは次の検討課題になっております。ですけども、昔
は骨髄移植しかなかったものが、二番目、三番目、次には四番目と新しい治療法が
どんどんと開発されてきておりまして、これからも更に安全な移植というものが行
われるようになると思います。(スライドお願いします)
[チャンス] これは骨髄移植推進財団が抱えているキャッチフレーズの「チャ
ンス」ということで、ドナーが多ければ苦しんでいる患者さんたちがより助かる、
ということで今日、キャンペーンも兼ねて寄させていただきました。どうもご静聴、
ありがとうございました。