「食と農のネットワーク・とかち」
「飽食の時代」、この言葉を私たちはどう受けとめてよいものか、多少の戸惑
いをもって口にされることが多くなってきています。食料難を体験されてきた方
たちなら、食べたいものが手軽に手に入る今日の経済的豊かさ、モノの豊富さに
幸せを感じられるとともに、食べ物の大切さをあまり感じているように思われな
い世代感覚に嘆きを覚えられる方もいらっしゃるかもしれません。食卓に食材を
提供しつづけてきた農村にあっても、この食べ物を巡る環境は大きく変わりつつ
あります。農村自身が日本の高度経済成長期を経て生産様式も含めて様変わりし
ていることももちろんあります。若年労働力の流出、過疎化、生産規模の拡大、
機械化、農産物価格の低迷、この傾向は農産物市場の国際化の動きが増すにつ
れ、農村というコミュニティの存立そのものにまでも暗い影を投げかけつつあり
ます。それとともに、「食べ物」という視点から見た暮らしのあり方、家族の関
係、生産者と消費者の関係、そして「量から質へ」という意識への変化の意がこ
こにきて改めて問い直されようとしています。そのきっかけとして期待されるの
が、通信ネットワークの目を見はるばかりの進展です。
農村と都市、生産者と消費者、この関係はしばしば分断とか両極という見方を
されてきました。都市人口が増加するにつれ、農村は潤沢に切れ目なく農産物を
市場に提供するという機能を求められ、それはあたかも質と量という規格にのっ
とった工業製品を畑という工場で作り続けるという感覚に陥りそうになってきて
います。ほとんどの農家にとって、自分が手がけた農産物を食べてもらった人か
ら喜んでもらえる手だてはありませんし、その人のためにまた農産物を作ろうと
いう意欲の再生産のプロセスも残念ながら閉ざされているのが現実の姿です。
「食と農のネットワーク・とかち」というグループは、1993年にパソコン通
信をきっかけとして知り合った北海道十勝の仲間、それから十勝の仲間たちと通
じ合う管外、道外の仲間たちの手によって結成されました。農業者がほぼ半数、
あとは公務員、会社員、主婦といったメンバーで、農業情報の交換、地域情報の
交換、十勝からの情報発信を通じて、都市生活者と農村生活者との親密な関係づ
くりを目指す、これがこのグループの目指すところでもあります。インターネッ
トが広く一般家庭に入りつつある今、これまで「分断」という言葉で語られてき
た生産者と消費者を直接結ぶ手だてを利用しない手はありません。対立から共生
へ、もちろん言葉にするほどたやすい道ではありませんが、出会いがないところ
に信頼関係は生まれません。これからの時代をどう生きていくかは、一人一人の
選択とその一人一人のゆるやかなネットワークにかかっているといっても過言で
はないでしょう。パソコン通信ネットワークのNIFTY-Serveの中にホームパー
ティも開設されています。「食と農のネットワーク・とかち」のメンバーのほと
んどは、通信IDを持っていますので、関心のあるかたはご連絡下さい。