夏といえば、水着。で、この話題にちょっとふれてみたい。
『スク水』という略称をはじめて見かけたのは1980年代のはじめだったと思う。おそらくは『Comic Box』のようなちょっとマニアックなコミック誌だ。当時まだマンガはガキの読むものという認識が世間では一般的だったころの、子供向けでもエロでもない純然たる大人むけの雑誌だったと記憶している。残念ながら物的証拠を私は持っていないのだけど、少なくとも中学生の頃には『スクール水着』という単語を知っていて、シンプルでやぼったいけど水着の基本形として記憶していたのだから、この認識には特に違和感がない。
読み方は当然『すくみず』。『スクール
では『すくすい』の呼称ではどこからきたのか?調査した限り、ふたつのルートが巷では言われているようだ。
客層の中の流行に非常に敏感な業界を知っているだろうか?風俗業界だ。
彼らは美少女マンガなどからの流行を大胆に、しかも非常に早期に取り込んだ。世間が「マンガは子供の見るもの」だと未だ思い込んでいた80年代の話だ。吾妻ひでお氏のコミックの切り抜きを勝手にピンクビラに使っているケースなどもあり、これは吾妻氏本人が発見し、当時の著作『ひでおと素子の愛の交換日記』に写真つきで苦笑いとともに記載していた。
彼らは最初に『スク水』という単語に触れた。おそらくこれは間違いなくて、ここでいわゆる読み違えが起きたのだろう。
実は『すくみず』という呼称は日本語のニュアンスとしては少し
ただしこれは『
実際これは私もそうだ。スクール水着はあくまで学校用の水着であり、今は第一線から退きつつあったとしても、かつて水泳の授業で使われていたものである。だから『すい』という呼称を『水』にあてるのは強い違和感がある。
別の派生として『School Swimsuit』つまり学校用水着を意味する英語からきたのではという言葉もある。コミックブーム、アニメブームのように海外から逆輸入した際に誰かが創作したというものだ。
しかしこれは80年代からの利用者には違和感しか持たれないと思う。
確かにこの時代にも海外で士朗正宗や高橋留美子の漫画が知られていたし、台湾で『ドラえもん』がケーブルテレビの普及と共に大人気となるなどブレークの気配はあった。しかし当時の逆輸入というと香港などに旅行したファンが広東語の『アップルシード』を面白がって買ってくるとかそういうレベルのものだった。マニアはともかく世の中に広がるほどのブームが起きておらず、よって80年代にこれらがもたらされたという事は考えにくい。
かりに School Swimsuitからの派生が起きたとすれば、それは風俗系で『すくすい』の読みが生まれるより後だろう。違うルートで同じ言葉が派生したとすれば、これはこれで面白いかもしれない。
なお、WikiPediaでは『すくみず』をあてており、『すくすい』には触れてもいない。だがWikiPediaはこうした俗語の呼称については偏りが見られる事もあるため、大いに参考にはなるが絶対のものとして受け止めるのは危険である。
オリジナル起源をいうならば、間違いなく『すくみず』である。歴史的事情がこれを示している。
ただ、特にアダルト業界や風俗系では、これまた歴史的事情から『すくすい』の方も少なくないようだ。別にオフィシャルの呼称を偉い人が定めた話も聞かないし、本来どちらでもいい事なのかもしれない。
(日本水泳協会などで定めていたら別ですが……調べてみようかな?)
最後に、私個人としては子供の頃の水泳の授業を思い出すにつけ「やっぱり『すくーるみずぎ→すくみず』だよなぁ」というのが本音である、という事でしめくくりたい。
ありがとうございました。