時は1853年、ニューヨークのとあるレストラン。ジョージ・クラムという料理人が客に文句をつけられていた。フライドポテトをもっとしっかり揚げろ、もっと薄く切れと。
フライドポテトというものを想像するとわかると思うのだが、ちょっと厚すぎたり油温が低い、時間をかけすぎ等で出来栄えはコロコロ変わってしまう。だからこの客の文句も最初こそ理にかなっていたのかもしれないが、だんだんと難癖をつけるようなものに変わってきたのかもしれない。まぁ19世紀の事であり真実は今となっては闇の中なのだけど、とりあえずこれだけは確かな事実がひとつある。それは、ジョージ・クラムが客の注文にとうとうカチンときてしまったってことだ。
さてそのジョージ氏であるが、いかにも職人という方法で客に対して仕返しをした。つまり一番いい包丁で薄紙のようにポテトを丹念にスライスし、そして高温の油でこれ以上なくカリカリに揚げたうえでパラパラと塩をふりかけ、さぁこれでどうだとドンと出したんだな。確かに「しっかり揚がって」いるし、これ以上なく薄く切られているわけで仕事としても文句はつけられないはずだ。だけど勿論これは嫌がらせ以外の何者でもなかった。
しかしジョージ氏の当てはとんでもない方向に外れてしまった。そのパリパリのスライスポテトを食った客は未知の美味さに絶賛の声をあげ「シェフ、おかわり頼む」と言ってきたんだなこれが。まさに包丁人味平に出てきたコックさんの逸話みたいだけどこれは実話だそうで、これがポテトチップスという食べ物の起源となっている。
ちなみに余談だが、そのポテトチップスをポテチと略したのは漫画『きんぎょ注意報!』の「わぴこ」なんだそうである。金魚注意報というとフリーター時代の私が癒しに見ていたアニメなんだけど、あの天真爛漫なわぴこちゃんが『ポテチ』の元祖なんですねえ @@ ふむ。