(本稿は『Dr.スランプ』および『ドラゴンボール』のネタばれを含みます。見たくない場合はおそれいりますがページを戻るかウインドウを閉じてください)
基本的に少年ジャンプ連載の漫画は好きではない。グダグダと延々続くからだ。そしてその理由が編集部側というかジャンプの運営体質にある事も有名だし、漫画自体を「ふたつのスピカ」以外まったく読んでいない今でもジャンプものには忌避感と拒絶感がある。実際読んでもつまらないしね。好きな話もあるが大抵は短篇、あるいは長編の最初の頃だけだ。たとえば荒木ならバオー(全二巻)、ジョジョはジョースター編までといった具合に。
そんな中、今も忘れられないのというと…?
もともとDr.スランプは博士が主人公だったわけで、だから原作タイトルにアラレちゃんの名前は入ってない。またアラレちゃんの初期の精神年齢はとても高いのだが、これは第一話がもともと短篇であった事に由来する。また、このため第一話の雰囲気はアニメや連載全体を通したものとは全く違っていて「ちょっとスランプぎみの自称天才科学者が女の子型アンドロイドを作った」話以上の何者でもない。完成すらしていないバラバラ状態のアラレちゃんを早くも持て余していたり、正統派なのに素直に笑えるのが今読んでも楽しい。
ドラゴンボールの悟空・チチ結婚エピソードも実にいい。「じゃ、結婚すっか」である。結婚の約束をした当時のエピソードも長いものではないし、読んだ当時は「はぁ!?」だったのだけど、ある意味実に悟空らしいという事で強烈に記憶に残った。そもそもあの悟空が恋愛に走ってプロポーズなんて想像もつかないわけで、誰とどういう結婚をするにしてもアプローチは間違いなく相手からでしょうし。
第一話から悟空とコンビだったブルマと結婚させなかったのはなんでやねんという声もあったのだけど、そもそもそれはストーリー的にありえないでしょう。そもそも彼女は大きくなった悟空に一瞬クラッときかけていたけれど、その直後にチチにさらわれちゃった。つまり盛り上がる機会が全くなかった。おまけにあの当時の悟空は「ヨメ」をたべものだと思ってたり蛇姫たちの誘惑もまったく通じないほど「色事」にはカケラほどの興味もなかったわけで、おそらく小さい頃「ぱんぱん」やってた頃とそっち方面はまるで成長しておらず、これでは悟空側も盛りあがりようがない。
反面チチはずっと悟空を待ちつづけたあげくに押しかけてきたわけで。これはもう決定ですね。
それにチチは筋斗雲に乗れた、わたしが知る限り作中で悟空と同様に筋斗雲に乗れた女の子は彼女だけなんですよね。他にいたら教えてください>皆さん
そんな結婚話なのだけど、実は「速攻で結婚させちゃった」のは当時のジャンプの編集担当の横槍を鳥山氏が嫌がったための産物でもあるらしい。作者より編集の方が力が強くて勝手にストーリーを変えさせてしまう、なんてのは漫画界の常識だそうだけど(なんつー歪んだ常識だ……)、この結婚エピについてだけは不幸中の幸いというか、このあっさりぶりがむしろ実に悟空らしい展開を生んでいるのではないかと思います。
これについては諸説あるみたいだけど、私は「完全無欠に悟空を信じきってる」からこそ、まだ子供である悟飯に余計に執着しているのではないかと思われる。
根拠はフリーザ編の中であるが、あれほど悟飯ちゃん悟飯ちゃん叫びまくり悟空を無視したような発言までするチチなのにも関わらず、悟空が帰らないかもしれないと亀仙人たちが行った途端「縁起でもねえ事いうな、んなわけねえべ」と即答で言い返しているし、悟飯の家庭教師に対して激怒し叩き出してしまうあたりもそうであろう。また同じくフリーザ編の初期で悟空が修行に逃げ出したのに気づいたチチの膝の上に乗ってたのは悟空用の大きめのセーターだ。おそらくだが子供のぶんを作ったあと、ちゃんと悟空のぶんも用意したのだろう。
チチは悟空が並ぶ者なく強い男と知っている反面実生活、特に金銭面や社会生活面ではまるで役たたずなのももちろんわかっている。で、当然息子にはそうなって欲しくない。もともと溺愛ママ全開なのだからあの態度も無理もないのだが、だからといって悟空を愛してないわけではないだろう。後に悟天を生んでいる事、亡くなった悟空との再会に泣いて喜ぶ事など、その態度の全てにそれが伺える。
結婚後の悟空への平素の態度は、世の普通のパパさんならクリリンたちの「orz」な反応が実に正しいと思う。なにしろあの悟空ですら苦笑いするほどなのだから。はっきりいって普通の男なら浮気の果てに破局の可能性もありうるのではないか。
ただこれは別にチチが特別悪いわけではない。あまり男女の愛憎を描きたくない原作者の選択というべきだろう。なにしろあれだけ登場人物がおりながら、まっとうに恋愛のはてに結婚したことが作中から伺えるのは悟飯・ビーデル組のみなのだから ^^;