■女の人はよく手を握ってあいさつをします。これをアイヌ語で「ウテクルイルイェ」(お互いに手を取ってなでる)と言います。初めて会った人、久しぶりに会った人、病気が全快した人、死にそうだった後に助かった人、赤ん坊を出産した人などに喜びや祝いの挨拶としてします。(『アイヌ語沙流方言辞典』(草風館)参照)そして、次のような言葉を使います。
エチ・イワンケ ヤー? あなたたち、元気か。
エ・イワンケ ヤー? あなた、元気か。
ク・イワンケ。 私は元気です。
エ・イワンケ ノ エ・アン ヤ? あなた、元気でいたか。
■次に出てくる挨拶言葉は、男の人が家に通されて席についてから一定の作法をもって挨拶するときのきちんとした言葉です。
イランカラプテ。こんにちは。
ウエランカラプ アン ナ。あなたの心にそっと触れて挨拶したい(萱野風解釈)
(tanepo unukar=an ruwe ne kusu ueramkarap=an pe ne na.
今初めてお会いするわけですが、あなたの心にそっと触れて挨拶したい
『萱野茂のアイヌ語辞典』)
尚、「イランカラプテ」は1990年代からアイヌ語樺太方言の「イランカラハテ」のように、軽い挨拶として使われるようになっている。
■沙流方言では軽い挨拶には次のようなものがある。
(相手の名称) ヘー 久しぶり
クコン ニシパ へー 旦那さんお久しぶりですね。
ウナラペ ヘー おばさんお久しぶりですね。
クコロ オッコ ヘー 久しぶりですね。
浦河や様似では次のようなものがある。
イカタイ 久しぶり
頭 パ、パケpa,pake
サパsapa
髪の毛 オトプotop
顔 ナンnan
額 キプトゥルkiputur
ノイポロnoyporo
目 シクsik
目玉 シクヌムsiknum
まゆ毛 ランヌマrannuma
ララrar
まつ毛 シクラプsikrap
鼻 エトゥetu
鼻の穴 エトゥプイetupuy
耳 キサラkisar
口 チャラcar
パラpar
唇 チャプシcapus
パトイpatoy
パプシpapus
歯 イマクimak
ニマクnimak
ミマクmimak
舌 パルンペparunpe
ほほ ノタカムnotakam
首 レクッrekut (レクトゥンペ首飾り)
胸 ペンラムpenram
レララrerar
乳 トカプtokap
トットtotto
レララrerar
心臓 サンペsampe (サンペテルケテルケ心臓がどきどきすること)
お腹 ホンhon
へそ ハンカプイhankapuy
ハンクhanku
ハンコhanko
使用教材
社団法人北海道ウタリ協会編『アコロ イタクAKOR ITAK』(社団法人北海道ウタリ協会)1994
萱野茂『アイヌ語会話〜初級編〜』(カムイト。ラノ協会)1987