もう10年以上も前になりますが、父が何かの折りにこんなことを言ったのを覚えています。 「ケチ、それとヤキモチ焼きの男とは結婚しないように」
その後私は、確かにケチではないがそのかわり競馬狂いで、確かにヤキモチ焼きではないがそのかわり薄情な、そういう男と結婚し、いまのところ薄皮一枚状態(おお、なんと奥の深い表現)でうまくいっているような気がしますが(おそらく気のせいでしょう)なにかと忙しい日々を送りながらも頭の中は暇なので、周囲のうまくいっている(ように見える)夫婦やダメになってしまった夫婦をあくまで自主的に観察し、「なぜあそこはうまくいってるのか」「なぜあそこは別れたのか」「なぜあそこは別れないのか」などと勝手に考え、おせっかいにもあらゆる角度から分析し、独断と偏見だらけの私なりの結論を出して納得したり、またいくら考えてもわからなかったり、そんなことをしているうちに少しずつ見えてきたことがあります。
それは父が長年の人生経験から導き出した「ケチとヤキモチ焼きの男はあかん」という結論は確かに正しい。そういう男との結婚は、できれば避けたほうがいいかも知れない、しかーし。
結局のところは「してみなけりゃわからない」のではないか。
ここが結婚の面白いところです。ねえ、既婚者、バツイチの皆さん。(一同うなずく)
結婚すれば変わると思った。 結婚した途端変わってしまった。子供が産まれたら変わってしまった。結婚してすぐ失敗だと思った。結婚してみたら暴力をふるう人だった。アル中だった。マザコンだった。カード破産者だった。と、こんなのはもしかしたら序の口なのかもしれません。結婚したら保険金を掛けられて殺されそうになった、なんて人も世の中にはいるみたいですし。
結婚する前にわかることも多いでしょうが、それよりも結婚するまでわからないことの方が多いでしょう。明らかに問題のある場合(強姦の前科7犯とかね、そういうのはダメよ)は別ですが、どうせいくら吟味したところでダメになるときゃなります。多くの諸先輩方が言っているように結婚とは「人生最大のバクチ」なのです。それならば。結婚するつもりはあるが相手による、という未婚女性の方々へひとつの提案です。「うまくいけばめっけモン」という発想で、とりあえず一度結婚してみるというのはどうでしょうか。熟考しようがイキオイだろうが冗談のつもりだろうが、うまくいくかどうかは「神のみぞ知る」なのですから。「ひとりの方が気楽」って、そらそうですがそれじゃあ話がちっとも面白くならないじゃないですか。ね、そうしましょう。決めちゃいましょう。今ここで。
あ、今、「ふざけんじゃねえよ、人生なめてんのか?」と思った人、いますね?はい。ふざけてます。なめてます。ここではっきりしておきますが、私は「一生ふざけて暮らす」というのが、25歳のお盆前に自ら定めた人生の目標である、というカワイソウな人間です。どうぞそういう慈愛の目で見てやってください。
それから、今、「自分は安全なところにいて、他人によりによって結婚という重大な事を無責任にすすめるなんて」と不愉快に思った人、いますね?いますね!?挙手っっっ!
いいですか?それは大きな誤解です。私たち夫婦にもいつどんな破局が訪れるやもしれません。人生とはそういうものです。明日、いえ1時間後に死別するかもしれません。それはもうずっと前から覚悟しています。ある日、見も知らない女性から「ご主人と別れてください。私たち、愛しあってるんです」なんて泣きつかれたら、わあどうしよう、「はい、承っておきます」って冷静に返すのが常道だろうけど、やっぱり「がってん承知の介」ぐらいはカマシたいよなあこの場合、なんてちょっと楽しみにしちゃったりもしてます。いけませんね。と、私が人生および結婚をどのように捉えているか、その根幹をご理解いただいたところで本筋に戻りましょうか。とりあえず、あなたは結婚することにしました。さて相手は誰でしょうか。さすがに誰でもいいじゃん、とは言いません。少々選んでいただきますが、その基準を従来の「三高は最低条件。プラス性格も良くて人望のある人。長男はパス」という、あんた鏡見たことあるの?的なものから「なにかひとつ、ひとつでいいから長所、もしくはオモシロイところのある人」というものに改めてください。はい、改めましたっっ。改めたところで周りを見回す。ほおら、候補がざくざく見えてきたではないですか。
まず私のイチ押しは「寝ぼけぐせのある人」です。これはもう愉快な結婚生活を約束されたようなものです。私のダンナは残念ながら非常にお行儀のいい寝方をするので、寝ぼけダンナに当たった妹やとなりのおかーさんが心底うらやましくてしょうがない。生まれ変わったら絶対寝ぼける人と結婚するぞ、と心に決めているくらいです。考えてもみてください。夜中にいきなり「ロシアにザリガニを捕まえに行ってくるから」と、大きく手を振るアクション付きで声高に宣言されたら。春の朝まだき、まどろんでいるあなたの隣から「まてっ!そこのジャポニカ学習帳!」と妙にはっきりした叫び声が聞こえたら。いくら夫婦ゲンカが絶えなくても、この人とは別れたくない、と思うはずです。という訳で「寝ぼけぐせのある人」ならハゲだろうがデブだろうがオタクだろうがすぐに結婚しましょう。他の人に取られる前に。
次に「この人は絶対に長生きするぞ、という人」です。これもオトクです。概して健康な人生を送ることが多く、これは考え方によっては最高の条件と言えます。やっぱり、同居人が早くにいなくなるのは困るし寂しいですからね。具体的には「物事にびっくりするぐらいこだわらない」とか「超人的にのんびりしている」とか「出世コースをはずれている。さらに本人はそのことに気付いてない」といった、ま要するに「ストレスとは無縁の人」といったところでしょうか。なんといっても「ストレス」が一番健康を害することは、脱税で摘発された(あれって、ヅラ?)春山先生のベストセラー「脳内革命」を引き合いに出すまでもなく(じゃ出すなよ)明らかですからね。
ここで簡単なテストを一つ。「美味しんぼ」とか「ホテル」とか「人間交差点」とか、そういう一話完結のコミックスを何冊か、順番はめちゃくちゃに積んで「読んで、面白いから」と彼に手渡しましょう。もし彼が「何巻から読んでも同じだよな」と積んである順に上からコミックスを読みはじめる人だったら、これはもうすぐにでも結婚しちゃいましょう。このくらいこだわらないでいられる人なら長生き当確です。自慢じゃないですが「ストレスってよくわからない」と酔ったいきおいで白状してしまったうちのダンナは「MASTER KEATON」を全巻いっぺんに借りたにもかかわらず、この方式で読んでいました。その時は「アナタはワタクシの理解の範疇を超えています」と変人扱いしたものですが、この行動がのちに「彼は絶対長生きする」と確信するための根拠となりえたのです。どうぞおためしあれ。
それから「エッチの非常に上手な人」ともすぐ結婚しちゃってかまいません。ええ、かまいませんとも。くわしい説明は不要でしょう。大事なことです。これを見分けるにはとりあえずヤッてみなければいけないのが難と言えば難ですが、その後一緒に一泊できるなら、前述の「寝ぼけるかどうか」も一緒に見極められるので一石二鳥ですね。ちなみにウチのダンナは・・・以下自粛。
その他に「歌が非常にうまい」「スキー1級の腕前」「ギターを弾かせたらプロはだし」「二科展に入賞経験あり」「炎チャレのアニメ100問で100万円ゲットした」(これはちょっとヤダ)など、違法行為でない限りは(特技が錠前破りとか要人暗殺というのも面白そうですが)なんでもいいんです。一芸に秀でた人というのは大抵いい味のある人です。オススメ。さてここで問題なのが「大金持ち」「超イイ男」「東大出」「医者」「弁護士」「教祖様」(これは違うか)など、女性の虚栄心を刺激しがちな長所を持った男の場合です。気を付けなければいけないのは「そこに目が眩んで」ではなく「短所だらけだがかろうじて」と考えることです。再婚の人ならうまいこと折り合えるかもしれませんね。虚栄心だけでは結婚生活は続かないということをよく知っているでしょうから。
もうひとつアブナイのが「近所でも評判の孝行息子」というやつです。以外に思われるかもしれませんがこれは私に言わせれば長所とは言えません。嫁より親を優先しちゃいます。「親に孫の顔を早く見せてやりたいから」という理由で子作りにはげんだりします。イコールマザコンと場合も大変多い。しかも「親孝行」という大義名分を掲げている分タチが悪い。まあ、男はみんなマザコンと考えた方が間違いが少ないとは思いますが、せめて「行動するマザコン」だけは避けたいところです。
さて、これを読んで多くの方が結婚を決意したと思いますが、うまい具合に「一時間にイワシを300匹釣り上げたことがある」といった申し分のない相手も見つかり結婚までこぎつけたその結果、うまくいかなかったとしてもこれはもちろん私のせいではありません。運命です。当方一切責任をとりませんのでそのつもりで。皆様がりっぱなオバサンになられることを心よりお祈り申し上げております。
最後になりましたが、自分がオバサンになってしまったかどうか見極める基準をいくつか。
1:人に面白い話をする前に自分で笑ってしまう。
2:エプロンを裏返しにつけたまま一日が過ぎてしまった。
3:ひとり言が増えた。
4: 計量カップで水を飲んだことがある。
5: 風水で「黄色い物」といわれ、真っ先に「ピカチュウのぬいぐるみ」が浮かんでしまった。今後の参考にしてください。ちなみに私はひとつもあてはまりません。うそじゃありません。