話の始まりは去年の冬にさかのぼります。お隣一家とお酒を飲んでいました。隣は父さん東京、母さん長野の出身で、夫婦共に獣医、私と同級生(大学は違いますが)というわが家と非常に似た構成です。小学生の男の子が2人います。お互い学生時代が長かったせいか、隣と飲んでるとどうも学生の飲み会みたいなノリになります。以前、隣の母さんから、彼女が高校のときにジャズのバンドでキーボードを弾いていたという事を聞いていました。私も学生の時に若気のいたりでドラムを叩いていたので、「結構楽器できる人っているもんだな」とその時は軽く聞き流していました。 さて、いいかげん酔っ払ってきた頃、隣の父さんが、 「俺もバンドやってたんだ」と言い出し、そこから話がえらく盛り上がって「よし、バンドを組もう!」ということになってしまったのでした。
酔いが醒めれば、私は乳飲み子を抱える3児の母。バンドなんか無理だよなあ、いくらなんでも・・・という気になっていました、が、その数日後、隣の父さんがベースとアンプを購入したというではありませんか。こうなってはこっちもドラムを買わないわけにはいきません。幸いわが家と隣は野中の2軒家。いくら音を出しても苦情が来る心配は皆無です。家も広いのでドラムセットも充分置けます。Everything is OK、よし、買うぞ!と決めた後の行動は我ながら感心するほど速いものでした。
こういう時にインターネットを利用しないでどうする、と、早速ショップを検索し、広島の安原楽器さんで、パールのドラムセットが格安なのを見つけ、即メールを出したのでした。(大変親切に対応していただきました。安原さん、その節はお世話になりました)
この間、ダンナへの相談はナシ。相談して「え〜〜〜???」とは言っても「ダメ」なんて言う人じゃないし、どうせ「ダメ」と言われても、わたしゃ買うもんね。ですから向こうからすれば、ある日突然、でかい楽器(しかも大変うるさい)が平凡な5人家族の6帖間に「じゃんじゃじゃ〜ん」と出現した、という感じだったと思います。ぽかん、とピッカピカに光る新品ドラムセットを見つめる彼の顔は、私がパソコンに熱中して完全に家事育児を放棄していた時や、アドベンチャーゲームのことで頭がいっぱいで、何を言われても上の空だった時などと同じ、「すでにあきらめの境地に達した表情」をしていました。彼もとんでもない女房をもらったもんですね、ははっ。 後日、「これは普通、家にはない楽器だよな」と言っておりました。さて、小さい子供を持つ母親の自由時間というのは、全国共通で「子供が寝ている間」と決まっております。私も例に漏れず、生まれて3か月の赤ん坊が眠りにつくやいなや、as soon as、ふすま1枚隔てた部屋でドラムの練習を始めました。
ダカダカダカダカバッシャ〜ン ツクタカバンツクタカバン ドコドコドコドンバッシャ〜ン
さて、こんな母親も母親ですが、その腹から生まれた子供も子供。なんと起きない。実はこの末っ子長男、今までにも2歳と4歳のあねき共が大騒ぎしている中で熟睡するので、もしや耳が聞こえないんじゃなかろか、と心配して様子を見ていたことがありましたが、どうも耳は聞こえているようだ、さすがに3人目だからたくましいんだろうな、と感心はしていたのです。しかしいくら消音パッド(ゴム製の円盤で、太鼓の上に置いて音を小さくするための物)を使っていても、かなりうるさいはずなんですけどね。最近では彼が起きている時でも練習していましたが、シンバルを倒したり、バスドラの穴におもちゃを突っ込んだりしながらドラムの周りで機嫌よく遊び、眠くなるとドラムの真ん前で眠ってしまいます。大物、と言えなくもないですが、にぶい、と言えなくもないです。ドラムスティックであちこち叩いて遊ぶので、将来彼がプロドラマーになったら、「ドラムマガジン」に赤ん坊の時の写真が載るはずです。お楽しみに。(私も人並みに親バカなんですね〜)
さて、この「酔ったいきおいバンド」は、その後ギターとサックス、ボーカルを加えて97.8.9に初ライブを決行するのですが、これがまたとんでもないことになってしまうのです。その話はまた後日に。