中 編

潜在していた「母」が顔を出してきます・・・

ステージ7:親子3人蜜月期


さて、あなたの赤ちゃんもかわいい盛りを迎えました。妻も肉体的に大変な時期を抜け、母親らしい落ち着きを見せてきます。再び身だしなみに気をつかうようにもなります。元がよく、体重もきちんと戻った場合は「きれいなお母さん」になります。もちろんそうでない場合もありますが、こんなにかわいい子供と引き替えだと思えば、多少太めの妻であってもたいして気にならないでしょう。天気のいい休日は3人でどこかへ出かけたり、お風呂にも3人で入ったり。私は個人的にこの時期が一番幸せなのではないかと思います。子供1人に大人が2人。1対2ですからこちらにも余裕があります。だっこも疲れれば交代できます。しかし、なんといっても初めての子供ですから成長の過程で起こることは親にとっても初めてです。ちょっとしたことで妻はうろたえ、心配し、泣くこともあります。まだまだ妻子に気を遣う日々が続くでしょう。また、夜中の授乳が終わってしばらくすると、今度は毎晩の「夜泣き」が始まります。あらためて子育ては大変なことだと実感します。しかし、あの出産を乗り越え、産後の大変な時期をくぐり抜けてきた、という自信がだんだんと妻を強くしているのにあなたは気付くでしょうか。この1年間に妻の身に起こった事をあらためて思い出してみてください。あなたには絶対に耐えられそうにない、無理だ、と思うことばかりではないでしょうか。妻は女性であるというだけで、その過酷な試練を生理的に、本能的に、誰に教わることなくこなしてきたのです。変わっていないわけがありません。変わらざるをえないのです。しかし妻自身、自分のキャパシティーがどれほど拡大しているかわからない場合が多いかもしれません。そしてその潜在能力がいかんなく発揮されるのは実はこれからなのです。

この時期に起こること
*傍目にも幸せいっぱいに見える
*たまには飲みにも行けるが、続くと怒られる
*赤ん坊にかかりきりだった妻も、少しはあなたをかまってくれるようになる
*しかし「パパの仕事」はそのまま継続
*妻は時々社会に取り残されるような不安をおぼえる


ステージ8:第2子妊娠期


毎日毎日家事育児。いいかげんにうんざり気味の妻は言います。「まとめて産んでまとめて育てて、またお仕事がしたいわ」
というわけで上の子が1歳になった頃、早くも2人目を仕込みます。再びつわりの日々がやってきました。妻は当然のようにあなたの世話を全く放棄します。つわりですから仕方ないのです。朝は子供と一緒にいつまでも寝ています。子供の世話だけはなんとかやっているようですが、それでも朝はシリアルに牛乳、昼は出来あいのサンドイッチ、と上手に手抜きをしています。布おむつを使っていた場合はこの時期に全面的に紙おむつになります。今後の自分の体調がどう変化しどのように推移していくか、妻はすでに知っていますから、「ほんの1、2か月の間のこと」と、家事育児を徹底的に省きます。そして妻に洗濯を頼まれたあなたがほんの少しでも面倒くさそうな顔をするとすかさずこう言います。「仕方ないじゃないの、つわりなんだから」
そうです。仕方ありません。あなたの仕事はこれで「自分の食事の支度、そうじ、風呂、洗濯、家にいるときは子供の相手」と充実してきました。そんなあなたに妻は感謝をしている様子が全くありません。「やってもらって当然」という顔をしています。つわりだから仕方ないのですが、子供が味噌汁をこぼし、それを拭いている最中に今度は牛乳をこぼされ、頭に来たあなたは思わず妻にあてつける様に子供をどなってしまいます。子供はびっくりして泣き叫び、妻はうるさそうな顔で寝室へ逃げてしまいました。子供はごはんつぶだらけ、テーブルも床もぐちゃぐちゃ、台所も妻が昼間洗わないので汚れた食器が山積みです。あなたは子供をなだめ、着替えさせ、食卓と台所をかたづけ、風呂を洗って沸かし、子供を入れ、寝巻を着せ、寝かしつけます。会社で1日働いて、くたくたになって帰宅してからこれらのことをやらなければならないのです。あなたの心にある疑惑が生まれるのは当然と言えるでしょう。
「本当につわりがひどいのか??」
それは妻、いえ、もはや母と化した彼女しか知らないことなのです。

この時期に起こること
*妻は具合の悪そうな顔をしているが、その割にはテレビをみて大笑いしている
*あなたの家事負担はかなり増え、食事がいいかげんなので少し痩せる
*家の中はぐちゃぐちゃになる
*妻よりあなたの方がいらいらしている
*てんてこ舞いのあなたを見て、妻がにやりと笑ったような気がする


ステージ9:第2子誕生


2人目の子供が無事誕生しました。陣痛の最中に「あ〜、やっぱり1人でやめとけばよかった」としきりに言っていた妻も、3時間程であっという間に生まれた2人目をいとおしげな目で見ています。「赤ちゃんてこんなに小さかったかしら」「2人目はかわいいって言うけど、本当ねえ」とうれしそうにあれこれとしゃべっています。産後も初産の時とはうってかわって落ち着いた様子です。そしてなによりも赤ん坊の扱いが第1子とはまるで違ってしまいました。たとえば、妻の食事の最中に赤ん坊が泣いたとします。第1子の時はすぐさま箸を置いて駆けつけたものなのに、今回はそのまま食事を継続しています。あなたに「おむつだけ替えといて」などと頼んだりします。平気な顔で食後のお茶まで飲み、それからゆっくりと赤ん坊を抱き、べろーん、と乳を出して犬や猫のように寝転がった状態で飲ませたりします。おむつ替えの頻度は第1子の2/3くらい、着替えさせるのは1/2くらいでしょうか。哺乳瓶の殺菌も、乳首の消毒も、入院中こそやっていたものの、退院してくるとすぐにやめてしまいました。このころの常套句は「死にゃあしないわよ」です。そうです、健康な赤ん坊というのは弱いように見えて、実は大変な生命力を持っています。なにしろこれ以上はないというくらい若いのですから。そしてすでに1人目を2歳まで育てたあなたの妻はそのことをよーく分かっているのです。しかしその「死にゃあしないわよ」というセリフの、なんと自信に満ち、たくましいことでしょう。
あなたの目の前には、でーん、とかまえた母親が一人、めでたく誕生したのです。
もう彼女にこわいものはありません。あなたの態度が冷たいといってさめざめと泣いていた、恋人時代の、あのかわいらしい彼女にはもう2度とお目にかかれないのです。こうなるまでわずか3年弱です。あっというまでした。あなたももちろん変わりました。父親になり、子育ての話題で同僚と盛り上がったりするようになりました。しかしなによりの収穫は、家事の腕が上がったことでしょう。そう、この場合は妻にとっての「収穫」であるわけですが。

この時期に起こること
*妻の髪形がショートカットになる
*産後のシェイプアップを始める気配がない
*家の中は一時的に足の踏み場もないほど荒れる
*飲んで帰っても何も言われないが、その方がこわかったりする
*妻は時々えらくヒステリックになり、キーキー声で怒鳴りちらす

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