「ねえ、おかあさん。△△ちゃんのおかあさん、お腹が大きいの知ってる?」
「知ってるわよ。もうすぐ赤ちゃんが生まれるんでしょ」
「そうなんだって。ねえ、どうして?」
「××ちゃんは、どうしてだと思う?」
「△△ちゃん、妹が欲しいって思ってたんだって。そしたらおかあさんのお腹に赤ちゃんが出来たんだって」
「ふうん、よかったじゃないの」
「ねえ、どうしたら赤ちゃんできるの?」
「どうしたらできると思う?」
「幼稚園の時はチューしたらできると思ってたけど、こないだ2組の○○くんが違うって言ってた」
「○○くん、なんて言ってたの?」
「おとうさんとおかあさんに聞けって」
「そう」
「ねえ、どうして?どうしてえ?」
母、観念してエプロンをはずし、食卓の椅子に座る
娘、いつもと違う空気を察してか神妙な顔つき
母、おとうさんとおかあさんはお互いに好きだったから結婚したこと、おとうさんが赤ちゃんの種を持っていて、結婚式をした後でそれをおかあさんにくれたこと、そしたら赤ちゃんが出来て、それが××ちゃんであること、結婚式をしないと赤ちゃんの種はもらえないことなどを静かに話す
娘、うなずきながら真剣に聞いている
「わかった?世の中に男の人と女の人がいるのはそういうわけなのよ」
「うん。ねえ、じゃあ男の人が女の人のおっぱいもむのはどうして?」
母、明らかにうろたえ、目をそらす
「えーと、好きだからじゃないかしら」
「その人が好きだから?それともおっぱいが好きだから?」
母、立ち上がり、米びつから炊飯器に米を入れる
「その人が好きだから・・・かしら?」
水を出す音
「ねえ、どうして好きだとおっぱいもむの?ねえ、おかあさん、どうして?!」
米を研ぐ音
「ねえってばー!!」
「うるさいわねえ、宿題は?終わったの?」
母、明らかに不機嫌な声
娘、口をとがらせて母をにらみ、わざと乱暴な足音を立てて自分の部屋へ入る
母、水を換えるときに米をこぼし、ため息をつきながら拾う
この時期になると、男の子と女の子を同じレベルで考えることはできなくなります。男の子はまだまだ子供ですが、女の子はこのようにかなり手ごわい存在になります。娘さんがこの時期に「X−DAY」を迎えられた御両親は心してかからないといけません。前半でこの母親は、娘がどの程度本当の事を知っているのか探りを入れています。出だしは順調で、母親の対応も見事なものです。しかしこの場合、親の威厳を保ちながら彼女を納得させるのは至難の業であると言えるでしょう。彼女は男の子がエッチなのと、赤ちゃんとは何か関係があるに違いないと思っています。さらに、本当のことを教えて欲しいのに母親はまだ何か隠している、ということに気付いています。しかし、いくらなんでもすべてを事細かに教えるわけにはいきません。どこまで教えるにしても、最終的にはこの母親のようにいきなり米を研ぐはめになるのです。私は願わくばこの時期に「X−DAY」が来ませんように、と祈るような気持ちです。あーこわい。
「ねえ、おとうさん」
「ん?」
「おかあさんには絶対秘密にしといてほしいんだけどさ」
父、読んでいた新聞から顔を上げ、息子の顔を見る
「なんだ?どうした?」
「あのさー」
「はっきり言えよ」
息子、少しためらうが思いきって、
「・・・おとうさんのちんちん、硬くなることある?」
父、びっくりした顔、その後、うれしそうに大声で笑い出す
息子、顔を赤くして怒る
「笑うなよお!もういいよ!」
「いや、ごめんごめん」
父、笑うのをやめ、息子の方に体を向ける
「エッチな写真見たりすると、そうなるんだろ?」
「うん」
「だいじょうぶ、みんなそうなる」
「なんで?なんか、へんな気分なんだけど」
「大人になると、赤ちゃんの素がちんちんからでるのは知ってるか?」
「うん、1組の××に、あんたも赤ちゃんの種持ってるの?、って聞かれたことある」
「そうか。うん。それでな、その種はお嫁さんのお腹の中に入れないと赤ちゃんにならないんだ」
「えっ?やっぱりそうだったのか。そうだと思ってたんだよなー」
「その時にちんちんが固くないとうまくお腹に入らない。わかるか?」
「うん。おへそから入れるんでしょ?」
一瞬の間
父、目に動揺の色
「うん、まあ、そのあたりだ」
息子、小犬のようなきらきらした目で父親を見ている
父、その目を正視できない
「そ、それで、その準備というか、まあ、その、あれだ、○○も大人の男に近づいたというか」
息子、大きくうなづく
「まあ、女の子にはやさしくしなきゃだめだぞ。もう大人なんだからなっ!」
父、無理やり話をしめくくる
ようやく父親の出番がやってきました。 と思ったのつかの間、この父親はすぐに逃げてしまいました。 今後このテの話は「おかあさんに聞きなさい」ということになるに違いありません。