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インフルエンザが流行の兆しをみせているとか・・・
今回は、お茶によるインフルエンザの予防について、考えてみました。
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【結論】インフルエンザの予防には、お茶で長時間のうがいを・・・
お茶に含まれるポリフェノール、その中でもエステル型のカテキン類が、
インフルエンザウイルスをはじめとしたウィルスに対して、著しい効果が
ある事がわかっています。
この効果は、ウイルスが細胞の中に入る前の段階においてしか発揮されな
いので、とにかくお茶でうがいする事によって、ウイルスをお茶と直接対
決させるしかありません。ここでのお茶の効果というのは、ビタミン類が
体に働いて、体力を養うといった類の間接的な効果ではありませんので、
とにかくうがいを少ししつこい位に行って、お茶に含まれるポリフェノー
ルの抗菌作用によって、ウイルスを退治してもらうということです。
ちなみに、どんなお茶が良いかという点についていうと、ポリフェノール
の含有量の多い順からいうと、紅茶・ウーロン茶・煎茶・玉露といった順
になりますが、エステル型カテキンの一番多いのは「釜炒り緑茶」といっ
た事になり、一概にはどれが良いとは言えないのではないかと思います。
ただ、ウイルスを倒すために必要なお茶の濃度というのは、普段飲んでい
るお茶よりもはるかに薄い濃度で十分ということがわかっていますので、
どのお茶を使ってもほとんど問題はないと思います。
ただし、プーアル茶や陀茶のような黒茶類は、極端にカテキンの含有量が
少ないので、避けた方が良いでしょう。
各ご家庭には、古くなってしまった紅茶や、あるいは新茶の飲み残した物
などが捨てきれずにとってあるのではないかと思います。
これをうがい用に使うのが一番ではないでしょうか。
どの種類のお茶をうがい薬代わりに使うにしても、必ず守らなければなら
ないルールは次の2点です。
1. お茶をいれる時のお湯は、熱湯を使う事。
80度以下の湯温では、カテキンはなかなか溶出しません。
熱湯で4分以上、できれば8分位時間をかけると、ほぼ完璧に成分が溶
け出します。
薄い溶液でよいからといって低温のお湯を使うのではなく、お湯は高
温にして、お茶の葉を控えめにしたほうが、合理的です。
2. うがいをする為にお茶を口に入れましたら、できるだけ長い時間、口
中にとどめておく事。
入れて、すぐに「ガラガラ・・ペッ」では、効果が期待できません。
すこし気長に口の中でコロガシテおきましょう。
数時間かかればウイルスを完全に死滅させるだけの効力を持っていま
す。いくらなんでもそんなに長い時間、口の中に入れたままにはでき
ませんが、本当に効果を期待するならば、それなりの努力は必要でし
ょう。
※お茶には、8種類のカテキンを含む約70種類のポリフェノールが存在す
る事が判明しているそうですが、これらカテキン類の中でもエステル型
カテキンと呼ばれる物質とカフェイン、テアニン(お茶のうまみ成分、
アミノ酸)の三つ全部を含むのがお茶の種(しゅ)であるという定義も
あります。
ちなみに、お茶と近縁種であるツバキやサザンカには、一部のカテキン
は存在しますが、エステル型のカテキンは含まれていないそうで、お茶
の木と他の木を区別する、重要な指標になっているようです。
以下、上記の補足説明です。お暇ならお読みください。
【お茶の薬利作用について】
古くからお茶にはさまざまな薬利作用がある事は経験的に知られていたわ
けで、中国の伝説的な人物である神農が薬草を探し求める際に、解毒剤と
してお茶を用いていたという話や、栄西が『喫茶養生記』の冒頭に「茶は
養生の仙薬、延齢の妙薬」と記している事にみられるように、趣味・嗜好
品としてのお茶の前に、薬としての役割があったのであろう事は間違いの
無いところだろうと思います。
日常の楽しみとして飲んでいるお茶が、健康に貢献してくれているという
のは、非常にうれしい事だと思います。毒にはなっても薬にはならないよ
うな物や、あるいは、毒にも薬にもならない物が多いなかで、お茶が人間
の役に立つ、まさに人生の良き伴侶の如きものであってくれるならば、こ
れに越した事はありません。
一般に、お茶の成分の中でも、いわゆるカテキン(タンニン)による薬利
作用が注目されており、
1.抗酸化作用 2.抗菌作用 3.コレステロールの抑制作用 4.血圧の上昇を
抑制する作用 5.血糖上昇の抑制作用 6.抗突然変異作用
などがあげられています。
まずこのタンニン、カテキンとは何者なのかについて、調べてみましょう。
【タンニン = ポリフェノール > フラボノイド > カテキン】
タンニンというのは、皮をなめすのに用いられる、植物から抽出した渋み
や苦味をもった物質に対して18世紀の末頃に与えられた名称であり、その
化学構造が明らかにされたのは、1980年代に入ってからといいますから、
かなり新しい話ということです。
植物には広く分布している、このタンニン類と称される物質は、これまで
に約500種類の分子構造が明らかになっているそうです。
その分子構造が多種に渡る中で、いずれにも共通した要素としてその分子
中に多数のフェノール性水酸基を持つことから、現在はいわゆるタンニン
の事を「ポリフェノール」という名称で呼ぶようになりました。
今はやりのポリフェノールというのは、昔からタンニンと呼んでいた物質
の事なのです。「赤ワインのポリフェノールが体に良い」というような事
が最近よく言われていますが、これは、「赤ワインのあの渋いタンニンの
味が、体に有効な成分を含んでいる」というふうに読みかえれば、理解し
やすいのではないでしょうか。
さて、そのタンニン=ポリフェノールの中でフラボノイドと呼ばれている
一群の色素成分の一種として、カテキン類が位置づけられています。
お茶の木には、あらゆる部分にこのカテキン類が含まれていますが、芽の
部分には非常に多く、また一番茶よりは2、3番茶の方に多いということで
す。というのも、このカテキンの合成には光が重要な役割を果たしている
為、十分な光を与えられた茶樹のほうがカテキンの含有量は増加するから
です。
この結果として、玉露のように、うま味成分であるテアニンを増やすため
に覆いをかけたりして栽培するお茶は、カテキンの総量が少ないという現
象がおきてしまいます。
また、同じ緑茶でも、九州で作られた緑茶の方が、この点では有利に働き
ます。日本の「釜炒り緑茶」にカテキン含有量が多いとされているのは、
これが九州のお茶である事に由来しているようです。
また、一方では茶樹の種類によるカテキンの含有量にも違いがみられ、紅
茶(なかでもアッサム種)や中国大葉種にはカテキンが多く含まれている
事が知られています。カテキンの生合成にとって、光と温度が重要なファ
クターとなっているために、気温が暖かく、太陽光線を豊かに浴びる南国
で栽培されている茶樹には豊富にカテキンが含まれる事になり、これらの
お茶は渋さを生かした紅茶の原料としてふさわしい事になります。
日本の緑茶用の茶樹で紅茶を作っても、紅茶の色や渋さ・苦さの元になる
カテキンの分量がそもそも少ないために(3分の2)、なかなかおいしい紅
茶は出来ないわけです。
気候が良くて、カテキンの多いお茶の取れる地帯では、その茶葉にふさわ
しいお茶作りが行われるでしょう。そうすると、今度はそのお茶作りの為
に、より一層カテキン成分の多い茶樹を選んで育成するようになります。
このような結果として、地域によって、栽培されている茶樹の特性にかな
りの開きが出来てしまったのではないでしょうか。
【お茶とポリフェノール】
茶樹の中のカテキン類は、お茶として加工される過程で、さまざまな種類
のポリフェノールに変化しますが、これはそのお茶の製茶法によって大き
く内容が異なります。ポリフェノールの総量という点では、原料茶葉のポ
リフェノール含有量に支配されていますが、加工の方法の違いによって、
具体的には、萎凋や加熱による茶葉の酸化・発酵の工程の違いと原料に含
まれる成分の違いとによって、それぞれのお茶の特徴を備えたポリフェノ
ールの構成に変化するという事です。
一例として紅茶の場合ですと、カテキン類のかなりの部分が高分子の重合
化合物に変化して紅茶独特の渋みを生みだし、また、ある部分は紅茶の色
素であるテアフラビンやテアフラビジンといった物質に変化しています。
不発酵茶である日本の緑茶のように、カテキンの組成が生葉とあまり変化
しないものとの違いは大きくなります。それはまさに、お茶の味や色の違
いとして現われているわけです。
カテキンだけでなく、ポリフェノール全体ということを考えると、紅茶や
ウーロン茶のように濃い色をしたお茶というのは、まさに色々な化合物を
含んだ面白い存在といえるのではないでしょうか。
【キーポイントは「60℃と80℃」】
同じお茶を淹れても、いれる人・いれ方によって随分とお茶の味が違いま
す。誰でも美味しいお茶を飲みたいわけですから、そのお茶の特性にあっ
た合理的な抽出法を知りたいものです。
今回は、基本的なポイントを押さえてみましょう。
1.日本茶
一番いれかたが難しいのは、なんといっても煎茶や玉露といった日本茶の
中でも高級茶です。どんなに高いお茶でも、いれ方がまずいと、満足なお
味にはなりません。
湯温のポイントは、60度と80度です。
日本茶の場合には、苦味や渋みを抑えて甘味をいかに上手に引き出すかに
かかっています。
そこで、苦味=カフェイン、渋み=タンニン(カテキン)、旨み=テアニ
ンというふうに単純化して考えてみます。
すると、カフェインは60度以下の温度では時間の経過に従ってジワジワと
溶出してゆきますが、80度のお湯には急激に溶け出してゆき、すぐに90%
が溶出してしまいます。
また、渋みのタンニンについても、60度の場合と80度の湯温とでは、その
溶け出す割合にはほぼ2倍の差があります。
その一方で、旨みの成分であるテアニン等のアミノ酸類は、お湯の温度に
よる溶け出し方の違いはそれほど大きくありません。
こうした、温度による溶け出し方の違いをうまく考慮して、お茶をいれる
ことが技術といえましょう。具体的には、下記のようになります。
A.玉露
50度から60度以下のお湯を使って、2分から3分以下程度でいれます。
これ以上の湯温・時間になると、特に湯温が高いと渋みが増してしまいま
す。
B.煎茶
高級煎茶は70度程度、下級の煎茶は85度くらいまでの湯温でいれます。
緑茶に含まれる香りの成分は揮発性が高いこともありますので、味の点で
も香りの面からも、これ以上の湯温は避けたいところです。
C.焙じ茶・番茶
熱湯を用います。カテキン類はかなり色素成分等に変化していますので、
熱湯でいれてもそれ程は苦くはなりません。
一方で、焙煎によって生じた香りの成分は、高温になってこそ生きてきま
すので、低い湯温は禁物です。
ただし、1分程度でいれましょう。元のお茶葉が日本のお茶ですから、カテ
キンの総量がそれほど多くはなく、すぐに出がらしになってしまいます。
D.ウーロン茶(武夷岩茶や鉄観音です)
熱湯を用いて、3分位の時間を待ってからいれます。
特有の香りの成分は、高温でなければ溶け出しにくいのです。
また、カテキンから変化した分子量の大きな化合物は徐々に溶け出してく
るので、少し時間をかけていれます。5回、6回いれても味と香りがしっか
りと出てくるのが本物のウーロン茶の特徴ですが、その秘密はこの分子量
の大きな味の成分と、沸点の高い香りの成分が沢山含まれていて、ジワジ
ワと時間をかけて溶け出してくるからです。
色は似ていても番茶とは根本的に違うのです。
E.紅茶
とにかく熱湯でいれましょう。4、5分は時間をかけます。
ウーロン茶と同様に、酸化・重合した高分子の物質が、芳香成分や色素と
して含まれています。紅茶はある程度、渋いのは当然です。
(といっても、同じお湯の温度なら煎茶の方が渋くなってしまいます。)
以上おおざっぱに、比較的あたりまえの事を書いてしまいました。
それでも、こうして整理しておくと、お茶をいれる時に失敗をしなくて済
むようになりますよ。
虫歯とは、歯に付着した歯垢(しこう)の中でつくられる乳酸などの酸性
の物質によって、歯のエナメル質からカルシウムが溶け出してしまい、穴
があいてしまう現象です。
虫歯菌の働きは、1.グルコシルトランフェラーゼという酵素を生成します
2.この酵素が砂糖を分解して不溶性で粘着力の強いグルカンを生成し、
これを接着剤のようにして歯の表面に虫歯菌が歯垢(しこう)として付着
します 3.虫歯菌その他の菌類がこの歯垢の中で活動して、糖類から乳酸
などの酸性物質を作り出し、歯を浸食します。これらの一連の働きの元凶
が虫歯菌(ミュータンス菌)です。
お茶に含まれるポリフェノール類(渋みの物質であるカテキン類と、紅茶
の紅色に代表される色素類の両方の事です)は、この虫歯菌に対する明ら
かな殺菌効果を持っています。
虫歯菌を退治する効果だけでなく、グルカンを生成する酵素の働きを抑制
する効果も併せ持っています。歯垢の形成を防ぐ効果があるという事です。
この効果は色素を含む、ポリフェノール類全体の効果ですので、ポリフェ
ノール総量の多い、紅茶>ウーロン茶>煎茶>玉露という順に、効果が高
いと一般的には言えるようです。
いずれにしてもインフルエンザ予防の時と同じく、
1.80度以上の熱いお湯を使ってお茶をいれる
(ポリフェノール類は60度以下では半分も浸出してきません)
2.口の中にお茶をできるだけ長い時間とどまらせること。
こうした点を考えると、ご飯やお菓子を食べた後に、渋い番茶や中国茶で
一服というのは、虫歯予防の観点からも、合理的な生活習慣だと言えるの
ではないでしょうか。
世界で一番飲まれているお茶が、紅茶である事はいまや常識です。世界中
で生産されている年間200万トン程のお茶のうち、その4分の3は紅茶といわ
れています。
ところで紅茶の起源は17世紀と比較的新しいもので、しかも生まれたのは
中国の福建省・武夷山付近といわれています。当時、中国茶の代表的な産
地であった武夷山付近において、はじめて紅茶が誕生したのです。これは
歴史的な事実です。
烏龍茶の乾燥過程において、薪を燃やして乾燥する際にかなりの低温で長
時間かかってしまった事が原因で発酵が進み、烏龍茶とは違った性質のお
茶が出来てしまったのだという説があります。
現在の福建省での紅茶の作られ方は、まさにそうした原理を応用し、揉捻
とふるい分けを繰り返した茶葉を、室温で3〜6時間の発酵を行い(この
部分が烏龍茶の作り方とは違う)その後に薪によってより高温で乾燥し、
仕上げるという手法がとられています。
中国紅茶としては、祁門紅茶(キーマンティー)と正山小種(ラプサンスーチ
ョン)が有名ですが、特に正山小種の方に顕著なのですが、松や柏の木の薪
を使って、場合によっては10時間もかけて温風での乾燥を行うために、
独特の煙香がこれらの紅茶の特徴となっています。今時の烏龍茶の製造工
程には、薪を使った乾燥などはなくなっており、すべて機械乾燥にとって
変わられていますが、中国紅茶は昔からの味・香りを残すために伝統的な
手法での乾燥方法を今だに行っているものと思われます。
確かに、この松煙香がなければ、中国紅茶の独自性はそんなに感じられな
いという気もします。もちろん、好みはあるでしょうが。
さて話を戻しますが、こうした紅茶の誕生によって、それまでにも増して、
お茶という物が世界中で広く飲まれるようになっていったものと考えられ
ますが、そのルーツがまさに武夷山のお茶だったのです。
ちなみに、茶樹の学名としては、リンネが命名した「Thea sine
nsis」後に「Camellia sinensis」と名づけられた
のが有名です。これはそのまま、「中国の茶」というところから名づけら
れたのでしょう。ところが、1784年にリンネの弟子であるツンベリー
が著わした「日本植物誌」の中では、茶樹の学名を「Thea bohe
a」として記載されています。このbohea(ボヘア、ブヒー)というの
は、武夷(ぶい)の地名を意味しています。ここでは、「武夷のお茶」とい
うのが茶樹の学名として用いられたのです。
今は、ツバキ属・茶節として「Camellia sinensis」と
いうのが茶の学名として定着していますが、その下の分類である「種」のレ
ベルでは(これは細かくいろんな分けられ方をされましたが)代表的にはイ
ンド産のアッサム種に対して中国の小葉種ならびに日本種を意味するも
のとしてboheaという名称が長い間使われてきています。
貿易の世界でも、中国茶(紅茶)の一般的な呼称として「bohea」とい
う呼び名が色々な場面に登場していた事を確認する事ができます。
こうしたことを見ていくと、武夷岩茶を「あらゆるリーフティーのルーツ」
と表現しても、かならずしも大袈裟な言い方というわけではないのだと言
うことがわかります。
5.老叢水仙と鳳凰水仙について (お客様の御質問に答える中から)
水仙というお茶の発祥の地は、福建省の建陽(ジェンヤン)という
所です。これは、福建省の北端に近い武夷山から、ほんの少しばか
り南に下った場所に位置しています。
水仙はこの建陽から各地に広まっていったお茶の品種です。今では
青茶(あるいはウーロン茶といってもいいかも知れませんが)、こ
の系統のお茶で最もポピュラーなのが水仙茶です。
水仙大葉種とよく言われるのですが、葉が大きくて収量が高く、生
産性が高いところが生産者に評価されての事と思います。勿論、味
の方も満足のゆく物だったからでしょう。この点では、日本茶のヤ
ブキタ種と似ていますね。
この水仙というお茶は価格が比較的安く、さらに口当たりが良くて
飲みやすいという点から、非常に大衆的なお茶のイメージが強く、
産地的には建陽から広まったこともあって、福建省全体で水仙茶は
盛んに栽培されています。
その大衆的な水仙茶の中で、おそらく最も評価が高く有名なのが
武夷山の水仙茶です。
正岩水仙と老叢水仙が代表的な銘茶です。正岩水仙はおそらく水仙
茶の中では最高峰に位置づけられるお茶だとおもいますが、武夷山
の岩石質の土壌で生育した岩茶ということが、名前に表現されてい
ます。
老叢水仙の方は、老叢という字にあらわされているように、こちら
は樹齢100年は優に越える成熟した老木で、しかも品質の高いお茶
が採れる古木から作られた付加価値の高い水仙茶です。
ところで一方、鳳凰(ほうおう)単叢とか鳳凰水仙というお茶があ
ります。
これは、福建省の南に位置する広東省の中で、一番福建よりの、
鳳凰鎮(ほうおうちん)という山岳地帯の村で栽培されている水仙
茶の名称です。潮州(潮州料理というのがありますね)という都市
からほど近いこの鳳凰村では、鳳凰単叢という広東省を代表する水
仙茶を生産しています。
この鳳凰単叢は、樹齢数百年という古木から採集した茶葉を、一本
の木ごとに製茶して仕上げたこだわりの水仙茶です。
鳳凰単叢が高級品で、鳳凰水仙はいってみれば一般品です。いずれ
にしても、鳳凰というのは地名であり、日本人的な感覚からすると
なんとなく高級そうだからつけた名前のように考えてしまいそうです
が、そういう名称ではないのです。
福建省には武夷岩茶があり「安溪鉄観音」があり、また、前回お話した
きわめて庶民的な水仙茶がありというふうに、いわゆる烏龍茶の中心的
な生産地となっています。
しかし、実際のお茶の見た目についていうと、今の三つのお茶は、それぞ
れに結構個性的な表情を持っています。
武夷岩茶(たとえば大紅袍や肉桂)は一見したところ日本のほうじ茶に似
た、素っ気無いくらいシンプルな姿に出来あがっています。水仙茶は色
はそれと似てはいますが、大きく伸びた葉をそのまま乾燥して出てきたよ
うな大胆な姿をしています。
これに対して、「安溪鉄観音」の茶葉は固く丸くよじれていて、色は暗緑
色で艶があります。粒粒した小粒の豆のような姿のお茶になっていて、前
の二者とはまったく違った印象を受けます。
こんなに姿のちがうお茶なのに、ひとくくりに烏龍茶という名で呼ばれて
いる事が最初は非常に不思議でした。もちろん、厳密な意味での烏龍茶と
いう定義は別にあるようなのですが、一般名称としても、姿が違いすぎる
という気がしていました。
逆に言うと、たいていの日本人が烏龍茶という言葉から連想するお茶の姿
は、ほうじ茶のようなこげ茶色の葉っぱのお茶だろうと思います。そして
これは、たぶん安い水仙茶あたりを日本では烏龍茶として販売してきてい
るからなのだろうと思います(現に、いまは何処のスーパーに行ってもこげ
茶色した烏龍茶のティーバッグ入りのなんかを売っていますよね。)
この常識からすると、そうではない、鉄観音のようなお茶がなぜ同じ烏龍
茶なの・・・ということになります。両者の間のつながりが理解できます
か。
結論として、調べてみてわかったのは、まず岩茶ありきという事でした。
つまり、福建省でかつて(そして今でも)非常に優良な品質のお茶ができる
地域として武夷山の名が知られるようになり、中国全体の中でもその名が
知られるようになったようです。
岩山という、お茶の生育にとってある意味では非常に厳しい地域に育っ
た茶樹の醸し出す豊かな香りと、そうした特殊な環境で育ったがゆえの神
秘性を秘めた武夷岩茶というものの存在が、非常に大きなネームバリュ
ー・付加価値を持っていたようです。これは今に続いていることです。
そこへゆくと、ごく一般的な地域で作られているお茶の価値は、武夷岩茶
に較べると非常に低い評価しか受けられなかったわけです。福建省の
南部の安渓地方のお茶も、そのような評価しか受けていなかったのでしょ
う。実際問題として、土壌や気象、環境が違っているのですから、武夷岩
茶ほどの品質の良いお茶を生産することは、どんなに頑張っても無理とい
う部分はあるのです。
そこで、その土地の人々が考えたのは、お茶の葉の素質に頼らずに加工方
法を工夫することで、おいしいお茶を作れないかということでした。そう
した工夫をこらして作り上げられたのが、あの粒粒した鉄観音茶だったの
です。
つまり、武夷岩茶の味や香りに負けないものを、人工的に作り出そうとし
て出来たのが、あの粒粒の正体だったわけなんですね。
そしてそうした点を除けば、緑茶でも白茶でもなく、青茶ということであ
り、大雑把には烏龍茶としいう名称で呼ばれるだけの共通性は持っている
ということのようです。
さて、鉄観音は、充分に成熟して養分をたっぷりと蓄えた茶葉を使い、そ
の葉を日光にあてて萎らせ(日光萎凋)、室内である程度発酵を進め、その
あと熱を加え、揉捻、そして包揉・解塊を何度も繰り返すことによって、
葉の中身の成分が溶け出しやすい状態に仕上げられます。決して早い時期
の若い葉は使わないのが原則といいます。
これも、うまみの濃さを実現するためのようです。
こうして作られた上質の鉄観音茶は、お茶の葉の膠質によって黒光りした
暗緑色の粒粒に仕上がるわけです。
こうして有名になったのが、福建省の「安溪鉄観音」です。まさに中国大
陸の鉄観音茶の最高峰といわれています。そして、台湾の凍頂烏龍茶は、
この福建省から持ちかえった烏龍種(鉄観音種ではない)を、武夷山と似た
環境の凍頂山に移植して、安溪の鉄観音とほぼ同様の加工をほどこして
仕上げられたお茶です。こちらは品種の違いもあってか鉄観音とは名乗っ
ていませんが、ほぼ似たようなお茶に仕上がっています。
いずれにしても面白いのは、福建省の「安溪鉄観音」にしろ、台湾の凍頂
烏龍にしても、武夷岩茶をひとつの目標にしてつくられたお茶であると
いうことです。
「武夷岩茶」はその素質の良い茶葉の性質を損なわないように、余計な手を
加えないのが特徴であり、いまお話した鉄観音茶や凍頂烏龍は、手を加え
る事によってそれを実現しようとして出来たお茶だということです。
どちらも美味しいお茶ですし、そして近年は鉄観音の人気が(高級品のイメ
ージと共に)定着したようですが、武夷岩茶のように神秘的な自然の中に
発して、悠久の歴史を生き続けている銘茶の存在は、私たちがたとえその
存在を知っているいないに関わらず、厳かに聳え立つ武夷山のその高い峯
々のように、永遠を感じさせてくれる存在のように私には思えてなりませ
ん。