脳卒中の種類

脳卒中は頭蓋内の血管が切れて起こる出血によるものと、血管が詰まることにより起こる虚血(脳梗塞)とがあります。

1.出血性の脳卒中

出血性の脳卒中の主なものはくも膜下出血と脳内血腫(脳出血)です。

1)くも膜下出血

くも膜下出血は脳の表面を走る直径数mmの比較的太い動脈に穴が開くことにより起こります。突然金槌で叩かれたような激しい頭痛が起こり、それに引き続き嘔吐、意識障害が起こるのが特徴的な症状です。発症後は重篤な状態になることが多く、半数以上の人が病院に到着する前に昏睡に至り呼吸、心拍が停止して命を落としたり、病院に到着後に命を落としたりしています。
原因は脳動脈瘤が破裂することにより起こります。脳動脈瘤は動脈の壁の一部が弱いためにそこが動脈の拍動で押されて膨らみ、膨らむにつれて壁がさらに薄くなり、ついには穴が開いて出血を来たします。
治療は、開頭手術を行い動脈瘤の根元を金属のクリップで遮断する脳動脈瘤クリッピング術が一般的ですが、最近は開頭を行わず、血管の中にコイルを詰める血管内手術も行われるようになってきています。
一度、くも膜下出血を起こした場合には直ちに専門医のもとで治療を受けることが必要です。
くも膜下出血を起こした場合には命を落としたり、仮に命は助かっても重篤な後遺症を残す確率が高くなります。そこでくも膜下出血を予防するためにその原因となる脳動脈瘤を探し、出血を起こす前に手術でなくしてしまう事が多くなって来てます。旭川赤十字病院では年に150件以上の脳動脈瘤クリッピング術を行っていますがその3分の2は出血を起こす前の未破裂脳動脈瘤です。未破裂脳動脈瘤手術の安全性はくも膜下出血を起こした場合に比べて格段に高く、手術の1週間後には通常の社会生活に復帰できるのが普通となっています。
尚、脳ドックを受けることにより未破裂脳動脈瘤を発見することが出来ます。

脳動脈瘤の手術中の写真

 

脳動脈瘤クリッピング後の手術中写真


2)脳内血腫

脳内血腫とは脳の中を走る血管が切れるか、血管に穴が開くことにより出血が起こり、血管から漏れた血液が脳内に溜まった状態です。血液の塊を血腫といいますが、血腫が脳を圧迫したり、脳組織を破壊したりすることにより色々な症状が出ます。

<原因>
脳内血腫の原因で最も多いものは高血圧です。血圧の高い状態が長い間続くことにより脳の中を走る細い動脈の壁が弱くなりやがて穴があきそこから出血を起こします。一時的に血圧が上昇してすぐに切れるわけではなく、永年の積み重ねの結果といえます。高血圧以外の原因としては、脳の血管の奇形、腫瘍からの出血、血友病などの血液の病気、高齢者にみられるアミロイドーシスなどが存在しますが、大部分は高血圧によるものです。

<経過及び症状>
脳内血腫の経過は急激です。数秒から数分で以下に示すような症状が出現します。この点は脳梗塞と同じです。出血が止まった段階で症状の進行は止まりますが(通常は数分以内)出血が続いている間は症状が進行しますし、一度止まった出血が再度起これば新たに症状が出現・進行することもあります。
症状は、出血を起こした場所により異なってきますが代表的な症状は半身の麻痺(片麻痺といいます)です。右側に脳に出血が起きますと、左手足を動かす神経の通り道を破壊することが多く、このために左片麻痺が起こります。逆に左側の脳の出血の場合には右片麻痺となります。さらに、言葉を話したり理解したりする脳(言語中枢と言います)が左側に位置することが多く、左側の脳に出血が起こりますと言葉を話したり理解できなくなる症状(失語と言います)が出現することもあります。出血の場所によっては、半盲(視野の中で右もしくは左半分が見えなくなること)、半身知覚鈍麻(右もしくは左半身の感覚が鈍くなること)、ふらつき、めまい、歩行障害などが出現することもあります。出血が大きくなったり、脳幹という脳の中でも重要な部分に出血が起こったりしますと意識障害も起こります。
意識障害は脳内血腫で多く起こりますが脳梗塞でも起こる場合があり、症状のみで脳内血腫と脳梗塞を見分けることは出来ません。CTやMRIといった検査をおこなうことで初めて両者を鑑別することが出来ます。

脳内血腫の頭部CT
中央右寄りに白い楕円形に見える部分が脳内血腫です

<治療>
脳内血腫の治療には手術と薬物治療があります。血腫が大きく放置した場合に生命の危険があり、なおかつ血腫を取り除くことでその危険を回避できると判断出来る時に手術を行います。この場合の手術方法は、頭蓋骨に直径数cmの穴をあけ(開頭と言います)脳を大きく露出した状態で顕微鏡を使用して血腫を取り除き、場合によっては出血の起こっている部位を見つけて出血を止める操作を行います。
また、出血が生命にかかわるほどの大きさでなくても血腫を除去することにより後遺症を軽減したり、回復の期間を短縮したり出来ると判断した場合にも手術を行います。この場合の手術方法は、上記のごとく開頭により行うことありますが、直径1cm位の小さな穴をあけそこから太い針で吸い取ることもあります。
脳内血腫の薬物治療には2つの目的があります。一つは血腫が周囲の脳に対して与えている悪い影響を軽減すること、もう一つは血圧を下げて出血が拡がらないようにすることです。最初の目的のために脳圧下降剤・脳浮腫改善剤といった種類の薬剤を静脈内に投与します。この治療は1〜2週間続けます。出血の程度により長くなったり短くなったりします。
脳内血腫直後の血圧をむやみに下げる必要はないと考える立場の人もいますが、我々は出血の増大を食い止めるために直後より血圧を下げる方針をとっています。当初は持続的に血圧下降薬剤を静脈に投与したり、1日に何回か注射したりする方法にて血圧を下げます。数日して安定してきたら飲み薬のみとします。

<リハビリテーションについて>
脳内血腫にて身体機能に障害が起こった場合にはリハビリテーションを発症早期から開始します。ベッドサイドリハビリといって起こった翌日から理学療法士が入院している部屋に来てベッド上での訓練を開始します。さらに状態が安定してきた場合には訓練室での訓練を行います。早期からリハビリテーションを開始することで障害からの回復を早くし、障害程度を軽減します。

<予防>
一度、脳内血腫を起こした人が再度脳内血腫を起こすことは珍しくありません。それは、脳内血腫の原因の多くが高血圧であり、血圧が高いことで脳内の細い動脈がもろくなり最もその変化が進行したところが最初に切れて出血を起こしたわけで、脳内の他の細い動脈にも同じような変化が起こっているからです。出血を繰り返すときには前回の出血位で再度繰り返すことはまれであり、反対側など、全く異なった場所で起こすことが多くなります。
出血を予防するための方法で最も重要なことは、高血圧の治療を厳格に行うことです。高血圧が脳内血腫の原因であることが多いわけですから、当然ともいえます。また、高血圧に次いで脳内血腫の原因として多いのは脳内の血管に何らかの異常がある場合です。従って、異常な血管の存在を見つけて治せるものは治しておくことが必要となります。発見の方法として脳ドックが有用です。

2. 虚血性の脳卒中(脳梗塞)

脳を栄養する血管(動脈)が詰まってしまうことにより脳に血液が通わなくなり、その為に脳の働きが低下したり、脳が壊れてしまう状態を虚血性脳血管障害といいます。病理学的には、血液が通わないことで壊れてしまい回復しない状態に陥ったものを脳梗塞と言います。虚血性脳血管障害は、経過、原因等によりいくつかの病名に分類されます。

経過からの分類
1. 一過性脳虚血発作(TIA)
一時的に血管が詰まり症状が出現しますが、すぐに血流が改善するために症状が回復する状態です。症状が24時間以内に回復した場合にこのように言います。よく政治家が倒れたときに数時間後に記者会見をして発表するときに用いられる病名でもあります。昔、田中首相の時にもそうでした。しかし、これはあくまでも症状が回復した後に使用される病名であり症状が続いている時に用いるのは医学的には適切ではありません。
2. 可逆性虚血性神経障害(RIND:reversible ischemic neurological deficits)
一過性脳虚血発作に似ていますが、回復までにもう少し時間がかかる状態をいいます。通常、3週間以内に回復した場合に用います。
3. 脳梗塞
血管が詰まったことにより脳の一部が壊れ、その為に症状が回復せず、後遺症を残す場合をいいます。 
* この分類は脳の変化とは一致しません。一過性脳虚血発作であってもあとで検査を行った時に脳梗塞と診断される部分が出現していることは珍しくありません。

原因からの分類
1. 脳塞栓
心臓や大動脈などの大きな血管内で形成された物質(主に血液の塊)が血流に乗って飛んできて脳を栄養する動脈に詰まることによりその動脈が閉塞し脳の一部に血液が行かなくなる状態を言います。従って、脳の血管そのものには動脈硬化等の変化がなくても起こります。原因として多いのは心臓の病気で心臓の弁に異常がある場合と不整脈(特に心房細動)です。
2. 脳血栓
脳を栄養する動脈の壁が動脈硬化等で厚くなり、内腔が狭くなってやがて血液が流れなくなる状態です。脳を栄養する動脈そのものに問題があるわけですから脳ドック等で脳の血管の検査を受けることで原因となるような異常が存在しているかどうかを知ることが出来ます。
3. 穿通枝梗塞(ラクナ梗塞)
脳の中を走る直径0.1〜0.5mmの細動脈が詰まることにより脳の中に直径1cm程度の小さな脳梗塞が出来る状態を言います。(前述の脳血栓で詰まる血管はもっと太い動脈で脳の表面を走っています)

脳梗塞の症状
急に手足の麻痺や言語障害が起こります。突然強い症状となることもあれば数時間で信仰していく場合もありますが前述の脳内血腫と症状のみで区別することは出来ません。
診断を行うためには、CTやMRIといった検査が必要となります。

脳梗塞の治療
発症時の急性期治療に関しては別の項に記載しています。急性期に行う血栓溶解療法の適応となるのは脳塞栓の場合です。それ以外の場合には最初から薬物治療を選択することになります。また、脳内血腫と同様に早期からリハビリテーションを行うことも回復を早めるためには重要となります。

脳梗塞の予防のために
脳梗塞に一度なった人はかなり高い確率で再度脳梗塞を起こすことが知られています。これを起こらなくするために血小板の働きを抑える薬(抗血小板剤といいます)が有効であることがわかっています。また、心房細動のあるひとではさらにそれよりも強い治療である抗凝固療法(ワーファリンという薬を使用します)が有効であることが確認されています。従って、病態に応じた適切な薬物治療が再発予防の基本となります。
また、脳血栓やラクナ梗塞の基礎疾患としては、高血圧、糖尿病、高脂血症であることがわかっています。これらの検査治療を行うことも重要です。