WEB版 郷土資料館だより
No.25

WEB公開日:平成12年12月16日


「自然誌の研究」第3号ができました


 中川町郷土資料館紀要「自然誌の研究」第3号が完成しました.この紀要は,中川町を中心とする北部北海道や北海道全域の自然誌(自然現象をさまざまな関係のもとに記述したもののことです),さらに北西太平洋地域の自然科学的記載,中川町やその他の地域の考古学資料および郷土資料に関する研究記載論文を中川町から発信していくことを目的としています.
 第3号には5編の論文が掲載されています.二枚貝やアンモナイトの化石に関するもの,現在の磯に住んでいる貝類の様子を調査したもの,「微化石」という顕微鏡を使わなければ見えないようなプランクトンの仲間の化石を学習の材料として使うか,という内容になっています.
 どの論文も第一線で活躍する研究者によって書かれたものです.論文というとなかなか取っつきにくい部分もあるかと思いますが,それぞれの内容については郷土資料館だよりでお伝えしていきたいと思います.なお,「自然誌の研究」はすべて郷土資料館で読むことができますので,興味のある方やぜひ読んでみたいという方は,郷土資料館や図書館などに置いてありますので足を運んでいただきたいと思います.

第3号の表紙はニッポニーテスというアンモナイトです


博物館のある風景


 皆さんにとって「博物館」はどのようなイメージのものでしょうか? そして,そこにいる「学芸員」についてはどうでしょう? 博物館や学芸員は意外と皆さんの近くにあるもので,いろいろな活動を行っているものなのです.そんな博物館のある風景をご紹介しょうかいします.
 ある日,小学校の先生から郷土資料館に電話がありました.地層の観察やそこで取れる化石を使って授業をしたい,というお話でした.お安い御用とばかりに引き受けましたが,それが運の尽き(?).先生はとても勉強熱心で,授業の準備も一生懸命です.夜遅くまで続く熱い(?)議論に調査員も必死になって対応しました.さて,実際に地層を前にした子どもたちは,スケッチや化石取りに一生懸命です.調査員の解説にも熱心に耳を傾けてくれ,それだけでも「お手伝いしてよかったなあ〜」と,心の中で涙を流す調査員なのでした.その後,子どもたちは見たり聞いたりしたことからいろいろな疑問を持ちました.図書室の図鑑を使って調べたり,郷土資料館の展示を見て調べたり,それでもわからないことは調査員がアドバイスしたりと,五感をフルに使って必死に取り組みました.調べたことは分かりやすく模造紙にまとめたり,化石のレプリカをつくったり,活動していく中で新しい疑問が出てきたときはさらに調べたり・・・.子どもたちはさまざまな活動を通して,学ぶことの楽しさや面白さを味わったのではないかと思います.一方で,私自身もこの活動を通して学ぶことがたくさんありました.解説の手順や,地層や化石のことをわかってもらうにはどういう準備が必要かということなど,日々の郷土資料館での展示解説やいろいろな普及教室を開催する参考になりました.
 このように学校と連携して活動を行うことで,郷土資料館も学習の場としての機能を持つことになります.そして,そこにいる学芸員は地域の人材として活用されることになるのです.いろいろな活動を通して,郷土資料館や学芸員が皆さんにとって身近な存在になっていけたらいいなと思っています.

教育研究大会の授業で子どもたちの学習のお手伝いをする調査員の姿です


連載企画「中川エコミュージアム構想」第2回

 前回は「エコミュージアム」についての概略をお届けしましたので,今回はより具体的にエコミュージアムの仕組みについてお話ししていきます.
 前回,エコミュージアムのキーワードとして「住民一人ひとりが学芸員」というお話をしました.これは決して住民のみなさんに地域に対しての新たな勉強を強要するものではありません.学芸員の仕事は,一言で言うと「地域の財産を調査・保存し次代に伝えること」です.つまり,昔の産業に関かんすること(でんぷん工場やはっか蒸留の技術)や,昔の食事(でんぷん団子やとうきび粥など)や町並みなども立派な地域の文化や財産といえますし,暮らしぶりや生活の知恵(お年寄りの記憶)も立派な中川の財産です.このような“なかがわの財産”を次代(子どもや孫)に伝えることがエコミュージアムにおける学芸員の活動ということができます.化石や地質に関する研究をすることだけが学芸員の仕事というわけではないのです.皆さんも中川町の“財産”をなかがわエコミュージアムの活動の中で,子どもたちや中川を訪れる人々に伝えてみませんか?
 さて,中川町という地域に点在するさまざまな財産や文化をエコミュージアムの観点から見てみると,下の図のようになります.

エコミュージアム施設の概要


 では,それぞれの施設とエコミュージアムの中での役割を見ていきましょう.
中枢施設(コアミュージアム:中川町自然誌博物館)
 エコミュージアムの玄関口となる中枢施設です.後で述べるサテライトのように現地での保存や展示が不可能な資源や遺産の収集や保存,失なわれてしまった地域の資源や遺産の再現展示などの機能を持っています.教育・普及や調査・研究,情報サービスなどのいわゆる博物館の基礎的な機能を持つ施設です.
サテライト・ミュージアム
 「サテライト」には“人工衛星”や“衛星都市”という意味があります.ここでは,中川町自然誌博物館を中心とした地域に点在する独立した資産を指します.図の中には「自然遺産」「文化遺産」「産業遺産」の3つを挙げていますが,これらには無形の文化や遺産ももちろん含まれます.
アネックス(中枢施設の支部的機能を持った施設)
 「アネックス」には“付加するもの”や“別館”の意味があります.「サテライト」を1つの展示品とするならば,「アネックス」では「中枢施設」とともに来町者(エコミュージアムへの来館者)への情報提供がその役割といえるでしょう.エコミュージアムのもう1つの玄関口です.
発見の小径(ディスカバリートレイル)
 上に述べた3つの施設周辺にある,地域の自然や歴史・文化の観察小径,歴史的な生活道路を指します.これらの散歩道の中にも中川町(なかがわエコミュージアム)の中に息づくさまざまな文化や遺産の発見があることでしょう.
 ・・・左の図の説明を中心に「なかがわエコミュージアム」の仕組みについてお話してきましたが,いかがでしたでしょうか.図を見てもわかるように,前回お届けした従来の博物館との違い(ネットワーク構造)がわかると思います.中枢施設(中川町自然誌博物館)は広大なエコミュージアムの玄関口にしか過ぎませんから,先に挙げた「住民一人ひとりが学芸員」をキーワードに,住民が主役となった展開が望まれます.エコミュージアムづくりはマチづくりですから,住民の手による住民主体の誇りと愛着のもてるマチづくりの手法の1つなのです.
 次回は,中川エコミュージアムの中枢施設になる中川町自然誌博物館についてお話します.どうぞお楽しみに.