ナキウサギを天然記念物に

ナキウサギの天然記念物指定に関する要望書

2006年10月5日 

新得町教育委員会教育長 佐々木裕二 様

十勝自然保護協会会長 安藤 御史 

新得町のナキウサギ生息地について

 ナキウサギの天然記念物指定問題について,9月より報道が続いていますが,9月25日付け北海道新聞「地元10市町『反対』なし」との記事の中での貴職のコメントには事実誤認がありますのでお知らせいたします.

 上記新聞記事で貴職は「町内の生息域は保護されていると認識している.指定については現段階でなんともいえない」とコメントしています.

 新得町のナキウサギ生息地はトムラウシ山から下ホロカメトック山・ニペソツ山などの高山帯のほか,ピシカチナイ山・十勝川の支流であるペンケニコロベツ川やパンケニコロベツ川流域に分布しています.トムラウシ山・十勝岳連峰は国立公園の特別保護地区であるとともに天然保護区域となっています.またニペソツ山は国立公園の特別保護地区です.しかし,十勝川の支流であるペンケニコロベツ川やパンケニコロベツ川流域は国立公園外であり,特別保護地区や天然保護区域として指定されているわけではありません.

 当会ではペンケニコロベツ川流域においてナキウサギの生息調査を行っていますが,複数の地点で,春から秋にかけてナキウサギの生息痕跡(岩の間に引き込まれた植物)を継続して確認しています.このことから,この地域一帯ではナキウサギが周年生息しているものと考えています.

 ペンケニコロベツ川やパンケニコロベツ川流域の生息地は小規模な岩塊地が点在しているところであり,高山帯や然別湖周辺などの広大な岩塊地が広がる典型的な生息地とは異なります.このような生息地では一般的に生息密度が低いため,生息地が破壊されると大きなダメージを受け,危機的な状況になることが予測されます.また,このような生息地は,新しい生息地を求めて分散・移動する若い個体の生息地ともなり,隔離されたナキウサギ個体群の遺伝子交流に寄与するものと考えられます.

 こうした低山帯のナキウサギ個体群こそが何の保護もされず絶滅の危機に直面しているのが実態です.そのような低山に生息するナキウサギを保護するためにナキウサギという種を天然記念物に指定することは大変意味のあることです.ナキウサギの生息地を持つ自治体としては,このような事実を十分認識していただきたく存じます.

 また,新得町にも分布するウスバキキョウなどの高山蝶は天然保護区域に生息しておりますが,天然記念物に指定されています.

なお,この書面は当会のHPに掲載することを申し添えます.

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