えりもの森 裁判

原告準備書面(2)19号 6月21日 (知事の被告適格について)

平成18年(行ウ)第19号・損害金返還請求事件
原告 (略)・被告 北海道知事他1名 

      2006年6月21日 

札幌地方裁判所民事第5部  御中

                   原告ら訴訟代理人        
         
弁護士   市  川  守  弘 
他6名 

準備書面

知事の被告適格について

1 知事が委任者として、受任者である日高支庁長に対して権限を委任した結果、自らはもはや権限を有しない委任者となれば、知事の被告適格はなくなることを争うつもりはない。(改正住民訴訟執務資料、22ページ、法曹会)

2 問題は、被告らから、知事「自らはもはや権限を有しない委任者」であることを証拠を持って示してくれれば足りることである。しかし、被告らからは財務規則を示すだけで、本件における道有林の整備・管理についての具体的な権限の喪失については全く触れられていない。

3 そもそも、道有林は、条例及びそれに基づく北海道有林野の整備及び管理に関する規程に従い、整備・管理されるものである。知事は同規程5条に基づき道有林野の整備及び管理に関する基本計画を5年ごとに策定し、策定された基本計画は、北海道庁水産林務部長から森づくりセンター所長に通知される(6条)。ここでは支庁長は関与しない。森づくりセンター所長は基本計画にもとづき、その管理区の整備管理計画を策定する(8条)。森づくりセンター所長はこの整備管理計画を策定した場合、水産林務部長の承認を受ける。ここでも支庁長は関与しない。管理区の事業の実行の整理とその報告は、森づくりセンター所長から水産林務部長になされ、水産林務部長はこの事業実行の結果を公表する(15条ないし16条)。

 以上から明らかなことは、本件での財務会計行為としての契約は日高支庁長によってなされているものの、道有林の整備・管理に関する権限は、支庁には委任されておらず、その監督、指揮命令は、依然、北海道知事から水産林務部長を経由して日高森づくりセンター所長に及んでおり、契約権限を支庁長に委任したからと言って、全ての権限が支庁長に委任されてはいないことである。その結果、知事は「権限を有しない委任者」にはなっていない。

 被告らが、知事に被告適格を有しないと主張するのであれば、知事がこの「権限を有しない委任者」となっている点について合理的、説得的な説明を求めるものである。


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