えりもの森 裁判

自然の価値 評価可能と裁判所認める
自然の価値 評価可能と裁判所認める

 えりもの森裁判は、提訴して1年がたちます。この裁判は北海道が道有林を違法伐採したことに対して、森の持つ公益的機能、つまり森の価値に損害を与えたとして損害賠償を求める住民訴訟です。被告北海道は、森の公益的機能は財産評価できるものではなく、財産には当たらないから監査請求、住民訴訟はそもそも認められないとして却下を求めていました。しかし2月2日、札幌地方裁判所民事第5部は、森林の公益的機能の損害は財産的に評価できるから被告の主張は理由がないとの中間判決を出しました。これによって、今後訴訟は、北海道の行った伐採が違法かどうか、具体的損害はどのくらいかという内容の審理に入ることになりました。

私は、今回の中間判決は、自然そのものが持つ価値についても財産的評価が可能であると裁判所が認めた画期的な判決であると考えています。

従来、北海道や林野庁は、森林の公益的機能として、水源かん養、土砂流出防止、野生生物の保全、国民リクレーションなど、多くの機能があるとして、金銭的に評価をしていました。北海道は年間1兆1900億円の価値があるとしていました。裁判では、これらの数値は国民に理解しやすいように「たとえ」たもので、そもそも森の価値などは算出できるものではない、と主張していたのです。ところで、このような森林の価値は、広く自然の価値に通じるものです。今まで自然の価値について財産的評価はできない、として費用対効果論でも「損失」として算定されていませんでした。

しかし、今回の判決では、森林の持つ公益的機能が伐採によって低下した場合に、その損害を財産的に評価、算出できることを前提にして、被告の主張を退けました。つまり、森林の価値を認め、それが財産的に評価可能としたのです。このことは将来的に、自然の価値を認め、その財産的評価につなげる大きな道を開いたことになります。

ところで、北海道はえりものほかに上ノ国町で国有林のブナ違法伐採もあり、これは2月中に告発の予定です。北海道では天然林が大規模に伐採されており、今回の判決を機会にさらに天然林を守る闘いを続けていきます。

皆さんの今後のご支援を大いに期待いたします。   (弁護士 市川守弘)


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