えりもの森 裁判

意見陳述

私は今まで、おそらく10回を越える監査請求をしています。しかし、今回の不受理通知ほど腹立たしいことはありません。そもそも住民監査請求は、住民からはなかなか判りにくい行政の行う財務会計上の行為について、その違法・不当を指摘し、監査委員に対して、その監査を求めるものです。ですから住民は新聞記事などを証拠資料とすることを認められるなど、住民が容易に監査請求できることが保証されている手続です。

 にもかかわらず、今回のえりもの道有林伐採に関して、監査委員は住民監査請求を不受理としました。そもそも地方自治法では、不受理という制度は認めていません。仮に被告らが言うように「請求の却下」とすれば、それはあくまで形式的要件が整っていない場合にのみ認められているものです。

 では、今回の不受理の理由は何でしょうか。「森林の公益的機能の損害は北海道の財産上の損害と認めることはできない」という理由です。

 原告らが住民監査請求で問題にしている北海道の財産は、あくまで道有林であり、その道有林が違法と思われる伐採や集材路建設で、被害を受けていると主張しています。森林の公益的機能は、このような被害を森林の公益的価値が損なわれたとして金銭的に評価額を出す算出根拠として主張しているにすぎません。しかもこの公益的機能・価値を金銭的に見積もっているのは他ならない北海道です。北海道の財産的損害は道有林が受けた損害であることは監査請求書から明らかです。

 また、監査委員の理由が、道有林の損害額は森林の公益的機能が侵害されているだけでは算出できない、ということとすれば、これはまさしく損害額の有無に踏み込んでおり、形式的理由ではなく中身の判断になります。

 監査委員の住民監査請求を不受理とする態度は、住民の権利を違法に侵害し、行政の行った違法な財務会計上の行為について監査を放棄することです。このようなことがまかり通れば、全ての監査請求を不受理とし、あわよくばその結果1年の請求期間を経過させようという意図さえ感じられます。

そもそも、森林伐採の問題は、それが山奥で行われること、林業関係者以外その用語も含めてなかなか伐採について理解できないこと、などから盗伐などの問題が表に出にくいといわれてきました。いわば林業関係者のやりたい放題でした。今回の監査請求の不受理は、監査請求がこの林業の闇の部分に触れたため北海道を挙げて事実関係を明らかにすることを拒んだ結果ともいえるでしょう。被告らは、北海道を代表する職務を有する者として、早期に本案に対する答弁をし、森林伐採の真相を明らかにしたうえで、北海道が全国に誇れる条例に従った森林管理に立ち返ることを強く要望します。

    2006年4月28日

札幌地方裁判所民事第5部  御中

                  原  告   市  川  守  弘

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