大 規 模 林 道 問 題
北海道ネットワーク

大規模林道問題北海道ネットワークが
「北海道の緑資源幹線林道事業の即時中止と
緑資源機構の解体を求める声明」

北海道の緑資源幹線林道事業の即時中止と緑資源機構の解体を求める声明

                                    

大規模林道問題北海道ネットワークは、かねてから緑資源幹線林道は自然を破壊する無駄な公共事業の典型であるとして、反対運動を進め、最近では5月18日に「北海道における緑資源幹線林道の即時中止を求める」文書を、松岡利勝農林水産大臣および辻健治林野庁長官あてに提出し、また同日づけで大規模林道問題全国ネットワークと共同して「独立行政法人・緑資源機構の解体を求める」声明を発したところです。

 ところがその直後に、緑資源機構の官製談合事件で同機構理事を含む6名が逮捕され、その疑惑がとりざたされる中で現職の農林水産大臣が自ら命を絶ち、つづいて旧森林開発公団理事も命を絶つという異常事態が展開し、政界〜官界〜業界を巡る癒着の構造が改めて浮き彫りとなりました。

 また、それに関連して政府の規制改革会議では5月30日の第一次中間答申で、緑資源幹線林道は「現在着工している路線の工事が終了した時点で事業の廃止」を打ち出し、安倍晋三総理大臣も緑資源機構は「新規事業を凍結し、着工済みの工事が完了した時点で廃止する」方針を明らかにしたと伝えられています。さらに新任の赤城徳彦農林水産大臣も緑資源機構の「現在進行中の事業をどうするか検討する」との意向を示したと伝えられています。しかし緑資源幹線林道は、現在着工中のものが、税金を無駄遣いしながら自然を破壊する公共事業の典型なので、「着工済みの工事が完了した時点で廃止」というのでは、何の問題解決にもなりません。

 そもそも北海道の緑資源幹線林道は、高度経済成長時代に木材生産の増大を目的に計画された大規模林業圏開発計画の、大規模林道事業として1979年に着工されたもので、森林・林業情勢が大きく変化した現在では、まったく事業の意義を失っております。ところが北海道の「時のアセスメント(時代の変化を踏まえた施策の再評価)」を契機に始まった国の公共事業再評価で林野庁は、「時代の変化」を踏まえることなく事業継続を決定してしまいました。そして北海道はそれに追従して多額の道費負担をつづけています。

 例えば、平取・えりも線の様似・えりも区間は受益地の全域が道有林であり、その道有林は「木材生産を目的として伐採する皆伐・択伐を廃止」する抜本改革を行なったにもかかわらず、林野庁はそれを無視し「受益地の事業量は増大する見込み」として、ほぼ建設費用に見合う分の「木材生産等便益」を計上して費用対効果が見込めると評価しています。

 これは道民の常識として信じがたい評価なので知事に質問したところ、北海道は「北海道大規模林業圏開発・実施計画策定調査」(1973)の策定当時者であるにもかかわらず、この事業主体は緑資源機構であり「北海道が自ら企画・立案する事項に該当しない」として、また全域が道有林でその木材生産は道有林の管理経営に直結しても、「北海道が説明責任を負うものではない」と逃げの姿勢で説明を拒否しております。そこで林野庁に関連資料の情報公開請求をしたところ、林野庁では「既に廃棄しており、対象文書を保有していないので不開示」としました。しかしこれは、農林水産省の行政文書管理規則に背く情報隠しの疑いが濃厚なため、当ネットワークでは5月18日、農林水産大臣および林野庁長官に対して「緑資源幹線林道に関する行政文書不開示決定に対する抗議および質問書」を提出しました。

 この一事に象徴されるように、現在着工中の緑資源幹線林道は、効果を発揮できないにもかかわらず架空の便益効果を計上しています。その一方で、生物多様性の宝庫である沿線の自然環境が損なわれることは無視しています。例えば、平取・えりも線の環境アセスメントでは、沿線にナキウサギ生息地が存在するにもかかわらず「ナキウサギ生息地は存在しない」と報告されるなど、おざなりな調査や事業再評価により事業が継続されているのです。

 以上、緑資源幹線林道の実態の一部を例示しましたが、「現在着工中」のものは、このように「時代の変化」をわきまえず、自然を破壊する無駄な公共事業の典型なのです。したがって農林水産大臣・林野庁長官には、緑資源幹線林道事業を即時中止するとともに緑資源機構を解体すること、北海道知事にはその意見具申を行うことを求めます。

 

2007年6月5日  

大規模林道問題北海道ネットワーク  

大雪と石狩の自然を守る会代表 寺島一男  
ナキウサギふぁんくらぶ代表  市川利美  
十勝自然保護協会会長     安藤御史  
(社)北海道自然保護協会会長  佐藤 謙  
北海道自然保護連合代表    寺島一男