ベア・マウンテン問題

情報公開前に認可した十勝支庁への再度、抗議と質問する
2006年4月22日

十勝支庁長 様

十勝自然保護協会
会長 安藤 御史

ベア・マウンテンの危険動物飼養許可に対する抗議と質問書

 当会は,加森観光株式会社(以下加森観光)が北海道に提出したベア・マウンテンの危険動物飼養許可申請書を情報公開制度により入手し検討しました.その結果,多数の問題点や疑問が浮かびあってきました.とりわけ安全性に関する問題点については,観客や地域住民の生命に直結することであり,問題点の解決なしにオープンさせることはきわめて危険です.
当会は4月4日付で,貴職に情報開示前や直後に認可を出さないこと,またクマの研究者や自然保護団体などから意見を聞き,問題点があれば改善策を講じてから認可するように要請しました.しかし,貴職は当会の要請を聞き入れることなく,開示前に認可してしまいました.認可のあとで情報開示がなされるような事態は,情報公開制度の意味が根本から問われます.このような貴職の対応に強く抗議します.
また以下に指摘する問題点・疑問点について,どのような理由により問題ないと判断されたのか説明してください.ご多忙とは存じますが,人命に関わる問題ですので,オープン予定日の前日までに書面で回答してください.

1.フェンスの安全性について

1)放飼フェンスは内側に幅1m,深さcmの掘削防止セメント舗装をしていますが,クマがセメントの下部を掘削するのは容易と推測されます.また,エキスパンドメタルを1m20cm埋設していますが,クマが爪をかけて破損する可能性があります.

2)外周フェンスは菱形金網を50cm埋設しているだけであり,クマは容易に金網を破壊,あるいはその下部を掘削して逸走すると推測されます.

3)放飼フェンス・外周フェンスともにクマが立ち上がれば電気牧柵の設置していない菱形金網の部分に爪をかけることが可能であり,金網が破損する可能性があります.

2.バスの安全性について

1)アトラクションバス製作図によると,バスの窓ガラスは強化フィルムを貼っただけであり,とりわけ窓の位置が低い前面についてはクマが襲い掛かった場合の強度に疑問があります.
2)脱輪や故障発生時はバックホーにて牽引,乗客はバス後部の非常用扉から他の車両に乗り移るとのことですが,実際に試演しうまく対応できることを確認したのか疑問です.


3.サブパドックへの収容について
1)加森観光の示した「クマの管理」によると,クマは毎日営業終了後から翌日の営業開始前までは,サブパドックに収容するとしています.サブパドック内で給餌するために,集まるように習慣化するとのことですが,広い森林に放たれたクマが,餌付けだけで毎日狭いサブパドックに収容できるのか,非常に疑問です.クマを収容できない場合,夜間にフェンスを破って逃走する可能性があります.とくに複数のクマをサブパドックへ収容することができなかったり,サブパドック内から複数のクマが放飼場に逸走したりし,それらのクマが同時に穴掘りなどの逃亡につながる行動をした場合,適切な対応ができなくなる可能性があります.
2)緊急時(火災・地震・台風・施設不備・観客落下等)にも,放飼場内の飼育個体はサブパドックか獣舎に収容するとのことですが,パニック状態の中で,作業員がクマを速やかにサブパドックに収容するのは困難と思われます.とりわけ下草が茂ってしまうと見通しがきかず,個体の確認は困難と思われます.

4.GPSによる位置情報と警告システムについて
1)GPSの位置情報は15分に1回のみであり,常時位置確認ができるわけではありません.クマが施設外に逸走したり,通信可能エリア外に出たりした場合は,追跡が非常に困難と推測されます.
2)クマが管理エリア外(放飼フェンス外:レベル2か)に出たときは,GPS位置情報システムによりパソコンに警告画面が表示され,赤色灯およびスピーカによる警告も発せられるとのことですが,放飼フェンスを越えてしまうと外周フェンスを越えるのは容易であり,警告後に直ちに対応しても施設外に逸走してしまう可能性が高いと考えられます.このためにフェンスの強度自体を改善する必要があります.また,夜間にクマがサブパドックから逸走しレベル1(放飼フェンス内側10メートルに侵入)の警報が発せられた場合の警告表示が不明です.
3)パソコンやシステムが故障した場合,位置情報や警告が伝わらなくなり,クマの逸走対策ができなくなります.

5.緊急時の対応について
1)クマが放飼フェンスおよび外周フェンスの外に逸走した場合(レベル3の場合),飼育係が逸走個体を捜索し,発見した場合は麻酔銃で捕獲するとしています.しかし,危険動物飼養許可申請書によると飼養作業従事者は銃砲所持許可をもっておらず,射撃の技術や麻酔銃の扱いに疑問があります.
2)ゲート操作や電気牧柵の電源は,緊急事態に備えて二つ以上が必要と考えられますが,電源についての説明がなく,緊急時対策が不明です.
3)クマが施設外に逸走し,事態収拾が困難な場合は,関係協力機関に依頼し事態収拾に努めるとし,関係協力機関として警察署・消防署・新得町林務課・新得猟友会・十勝支庁を指定しています.しかし地震や台風などの自然災害時は,被災地域一帯が緊急事態となるため,これら機関の協力も十分に得られない可能性があります.そのような事態を考慮するのであれば,フェンスの強化などより確実なクマの逸走防止策をとる必要があります.

回答送付先
080-0101 河東郡音更町大通10丁目5番地
     佐藤与志松方 十勝自然保護協会
Tel & Fax  0155-42-2192

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