OMPのコラムでトーク バックナンバー

  「環境汚染考」 1997.09.07
     近世、そして現代と、世紀末は何かと世相が落ちつかなくなるようだが、今
    世紀末の落ちつかなさの一端が人類の経済活動の結果でもある環境汚染問題に
    あることは間違いない。酸性雨、オゾン層破壊、放射能汚染、そしてダイオキ
    シン類や環境ホルモン(内分泌撹乱物質)等々。そればかりではない。食料生
    産における化学肥料使用量の世界的増加は、土壌(作土)の物理性、微生物相
    に深刻なダメージを与えているし、人間の摂取ミネラルの低下にも一役かって
    いる。さらに、硝酸体窒素の水系汚染も化学肥料の多用から起こってきた問題
    でもある。
     広い意味での環境汚染という見方では、有害毒素を産生する微生物の増加な
    ども、ひょっとするとその範疇に入るかもしれない。抗生物質を多用した結果、
    耐性菌による健康への「被害=人災」が世紀末の問題としてクローズアップさ
    れてきている。と同時に、病気そのものへの抵抗性(免疫性)が低下してきて
    いることは、最近の疫学調査が示すところでもある。、地球生命系そのものが
    ホメオスタシス(恒常性)を失いかけている、そんな気がしてくる。
     地球の歴史を四十五億年と仮定し、それを一年の長さに例えると、一日とい
    うのは千二百万年という長さになる。一時間はおよそ五十万年、一分だと八千
    五百年、一秒だと百四十二年と八ヶ月という計算になる。人類の歴史を四百万
    年前から始まったとすると、この長さはおよそ八時間。ホモ・サピエンスの歴
    史が三十万年前に始まったとすると、この長さが三十六分。西暦が始まったの
    は、わずか十三秒前ということになる。百年なんて時間は、地球の歴史からす
    ればわずか一秒にも満たない長さになってしまう。地球は長い時間の間に、た
    くさんの生物を育み、そして生物は進化の道を歩んできた。その過程で絶滅し
    てしまった生き物をたくさんあるが、栄枯盛衰、繁栄を誇っていた生物が突如
    絶滅してしまうという事例はすでに知られている。生存環境に起こった異変が
    その大きな原因とも考えられている。レッドデータブックに登録されている野
    生生物の存亡、その生存環境に異変を引き起こしてきたのは、他ならぬ「人間」
    でもある。
     だが、地球の歴史という目で眺めてみると、石油という資源をむさぼりなが
    ら、農薬の使用によって生きる糧を量産しつつ、人工的な環境汚染物質でその
    生存を自ら脅かして「私たち」というのは、あたかも閃光のごとき存在ではな
    いだろうか。「奪われし未来」(翔泳社刊)が告発している野生生物の異変は、
    その閃光のようなわずか二〜三十年という時間に起こっている出来事なのだ。
    果たして人類が何億年もの繁栄を続けることができるかどうか、それは自らが
    作り出した化学物質をコントロールしきれるかどうかにかかっているような気
    がする。厄介なのは、それが何億年という時間が作り出した芸術的ともいえる
    生命活動のメカニズムをいともたやすく撹乱させてしまうところにある。物質
    文明の土台が、実は生命系を崩壊させる土台でもあったという事、自然の前に
    謙虚さを欠いた振る舞いが残す代償はあまりに大きい。後世に繁栄を極める生
    物が、人類という生き物の生存の痕跡を「ダイオキシン」の検出で知るという
    ストーリーはなんともいただけない話ではないか。SF的に、実は人類という
    知性が自ら背負った「自爆装置」なのかもしれない。そして、信管はまさに今、
    抜かれようとしている、、と思いたいのは生存へのあくなき未練だろうか。起
    爆スイッチはすでに稼働していると考えた方がいいのかもしれない。そして、
    そんな「今」を人間はどう生きようとしているのか。
     めまぐるしさ、あわただしさ、そしてはかなさ、「パンドラの箱」に詰まっ
    ていたものは、この三つだったのかもしれない。ダイオキシンでも環境ホルモ
    ンでもない。ダイオキシンや環境ホルモンに「意思」はないのだから。パンド
    ラのシナリオを壊せるものは、無邪気な子供たちの笑顔の中にあるかもしれな
    い。母性と父性、そこには人間も野生もないのだから。
    
                       COPY RIGHT 1997    Seiji.Hotta
    

皆さんのご意見、ご感想コーナー

    「環境ホルモン」                 Mon, 29 Dec 1997                 Takehiko U. 41 years old, at Urawa Saitama                          e-mail: umez@a2.mbn.or.jp   この問題、今からエステロゲン作用を起こすものの検索、代替え素材の検索を、日本 でも至急開始すべきでしょう。ここになぜ日本人は投資をしないのか、欧米のことを 対岸の火事のようにみているのか、不思議です。欧米はどんどん対応してます。 http://www.epa.gov/opptintr/opptendo/index.htm http://www.yahoo.com/Health/Environmental_Health/Environmental_Toxicology/     Issues/Endocrine_Disruptors/ この問題は、企業・行政・大学を超えており我々自身、消費者・生活者の問題です から自治体や政府や企業(化学会社の社員はとくに)に対して発言をすべきだろうと おもいます。自分達が作ってしまって、作ることを許してしまって使っているものな のです。私は発言しました(自治体への提言(意見のようなもの)や勤め先(提案と して)にためらいつつですがメールで)。怒涛を組むのではなく一人一人が自らの勇 気を持って、子供のこと、孫のことを思いつつ発言してもいいと思いました。自治体 の人も、企業の人も、本当は恐いと思ってるのではないでしょうか。 今、私がわかりにくい点は、性分化への影響のところです。どうでしょうか。

 ホームページへ