Furryアバターについて。

 セカンドライフというと日本では鳴り物いりで変な報道がなされているが「どのようにして楽しむか」についての情報はなぜかあまり外部で聞かない。戦闘ゲームではないのだが自ら武器や道具を開発し戦闘を楽しんでいるグループもあれば、物語にある既存の建築物などをSL上に再現するビルダー趣味の人もいる。「どういう楽しみがあるのか」を紹介することは大切だと思うのだが、こういう楽しみについてはどうもあまり報道されていないように思える。

 そんなわけでSecondLifeの数ある楽しみのひとつ、獣人(Furry)を紹介する。

Furryとは

 Furryはリアルにも存在する趣味趣向である。詳しくはFurry Fandomなどで調べてほしい。

 日本人にわかりやすいイメージで簡単にいけば、大きな二本足のネズミなんかが出てくるアメリカの会社のキャラクター映画だろう。つまるところ人間に都合よく擬人化された動物たちである。アメコミ的な、あるいは欧米のカートゥーン的なものであって日本の同人とも異なる創作系の趣味である。正直なところ純粋なFurryコミュニティの生み出した創作物は日本人の趣味に合うものではない。

 ただSecondLifeにおいては少し勝手が違う。なぜなら **リアルと違い実際にその姿になれる**からである。

 SecondLifeにおいてFurry、つまり半人半獣の姿で暮らす者は多い。日本人居住区ではマイノリティだが世界規模のコミュニティもあり、その大きさは日本人居住区すべての規模に近似する。いわゆる獣人趣味やファンタジー世界のロールプレイとしての獣型種族など、さまざまな異なる経緯から半人半獣の形態をとっている。
 単に動物の姿の方が気楽などというシンプルな理由の場合から趣味趣向、果てはいわゆるワナビーの人まで存在する。

 彼らは「二本足で歩き回る獣」そのものの姿でSecondLifeに存在している。リアルの人間にヒッピーから主体思想まで色々いるように、さまざまな経緯と考えをもつ「獣の容姿をもつ人々」が日常を闊歩している。そのコミュニティ群は巨大なもので、最大規模になると日本のMagSLなどよりも大きなものとなる。また小さなコミュニティにおいては「獣である」という共通の価値観の元にまったりと結びつくコミュニティを構成している事も少なくない。それは、アバターの世界にすら押し寄せる人間模様とは一風変わった世界であるといえる。

「猫になるためにSLにきた」とある黒猫の例

 全体像を描いても仕方ないので、知人のひとりであるS氏(仮名)の例を紹介することとする。

 S氏は猫の姿をしている。スマートでおとなしげなタイプの姿と、ぐっと(ビースト)っぽい粗野な姿を用途で使い分ける事がある。また外出用に獣人ではない完全な四本足の猫すらも所有しているが、反面人間の姿は持っていない。

 S氏は「猫になるためにSLにきた」と明言している。

 日本語コミュニティで登録した人は知らないと思うが、本来SecondLifeは登録時にFurryアバターも選ぶことができる。当然最初からFurryを選び、後に最初の猫アバターを入手したという。以降Furryのみをメインアバターにすえ、遊び以上の理由で他のアバターを使った事はない。

 一度だけ「人間でよろしく」と言われ人間の姿でイベントに参加したことがあるという。しかし相当ストレスがたまったらしく、以降「人間アバターでないと参加できない」イベントには一切関わらなくなったそうだ。

「SLでは誰でも好きな姿になれる、だけど他者に姿を強制される謂れはないです。最初から規約でFurry禁止ならこれはわたしが悪いわけですが、逆に当初OKといいつつあとで翻すのならば譲歩する必要性はありませんから。どうしてもというのならその場で離脱するだけです。この場合悪いのは先方なのですから。まぁ、そんな非常識な主催者は滅多にいないと思いますけどね」

 辛辣に見えるが、自己主張がはっきりしていて合理的だろう。

参考リンク

Furry Japan
SecondLifeの日本系SIMで最古の、そしてたぶん唯一のFurry専門SIM『Oinari』のオフィシャルページ。