夫婦10組に1組が子供にめぐまれず、その夫婦が子供を望んでいる場合、 不妊は重大な病気です。そこに努力と技術が結集されていきます。1997年の体外受精の集計ですが1年間に患者3万2908人がうけ9千211人のベビーが誕生
しています(日本)。2年前の集計ですので現在、さらに増えていると思われ ます。不妊の治療技術は黎明期を過ぎてしだいに安定、進歩しつつあります。
特に体外受精とその関連技術は簡便になり、かつ深いレベルへと一層発展して います。
不妊の原因を大きく4にわけると、1)排卵障害 、2)卵管因子、3)男性因 子、4)子宮因子です。
1)排卵障害はホルモンの異常などで排卵ができない状 態で排卵誘発剤を使って卵子を育ててゆきます。
2)卵管が悪い場合には精子 と卵子が出会う場所がありませんのでそれは体外受精でおこないます。
3)精子が少なければ、受精できません。すこし少なければ、注射器で精子を子宮に 送り込む人工授精、さらに少なければ体外受精をしたり、もっと少なければ顕
微受精をして受精にいたります。
また、不妊の原因が不明の場合、体外受精 をすることが直接精子、卵子を観察し、さらに受精、そして細胞分裂が正しく
おこなわれているのを確認することなります。
たとえば卵子、精子ともに一見正常なのにまったく受精しなかったりすることもしばしばあります。受精障 害については重大な原因がない限り、顕微受精によって受精します。
以上、子宮因子以外の不妊に対して、体外受精はきわめて有効です。しかも、いくつ もの原因をもっている場合でも体外受精はそこを、するりとかわして妊娠する
ことができます。排卵誘発剤を使うと卵巣が腫れ、お腹が痛くなり、腹水がた まる卵巣過剰刺激症候群がありますが、体外受精を行うようになると、入院を必要とするようなものはほとんどなくなってしまいます。しかも起こると予想されたならば、すべての卵を凍結保存してしまい、病気の発生を防いでしまい
ます。
また、体外受精での妊娠成立の場合、普通の妊娠に比べて流産しやす いということもありませんし、もちろん奇形が多いとういうこともありません。最大の問題は1回の体外受精では最終的に10ケ月後、あかちゃんを抱ける確率が20%を切ることです。なぜ、何度も良好な受精卵をもどして妊娠できないのか、明らかな技術上の壁があります。
これに対する解決は、受精卵を 凍結し、人工的に妊娠できる状態にしてから、子宮にもどしますと妊娠率があがります。また、細胞の培養液を工夫してよい成績をあげている施設もあります。逆に、双子、三っ子のように多胎になることがあります。これは、子宮に
戻す卵の数を制限することで、ある程度対応できます。現実には減胎すること もあります。
また、体外受精というとそこまでしなくともと思われる方も多い かと思いますが、体外受精は、それほどめずらしいものではありませし、数年前のように繁雑ではありません。実際のところは、紙面の都合上割愛しており
ますので不妊の専門医と十分話し合われて、納得のいく治療をうけ、苦しい時をのりこえておかあさんになってほしいと思います。
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