胎児の性格と出産に関する一考察


 小学校の1学期終業式が終わってすぐさま東京に向かい、実家でプールあり遊園地あり5日間の盛りだくさん夏休みを過ごした我が家は、残りの夏休みを「ラジオ体操」と「学校のプール」で乗り切る予定でした。しかし思いのほかダンナの休みが多かったのと、お出かけもそれほど大変ではなくなってきた我が家の事情を考え、もう1回くらい「思い出づくり」に出かけよう、と思い立ったのは夏休みの最後の週末でした。札幌あたりは観光客で混んでいるから、どこか穴場穴場、と「穴ならまかせろ」のダンナが提案したのはウチから車で1時間ほどの穂別町にある「地球体験館」というところでした。ここは以前休館期間中なのを知らずにわざわざ行ったことがあって、すっかり忘れ呆けていましたが、当時はちくしょーいつかお礼参りをしてやる、と思っていた場所でした。山奥にある博物館なので、内容的にはもうぜんぜん期待しないで行った分、逆にまあまあ楽しめたのはラッキーでした。お見合いとか結婚なんかも期待しないのがきっと正解なんだな、と山奥のさびれた町でもまた人生の真実を見いだしてしまう因果な性分の私なのでした。

 「地球体験館」の内容を簡単に説明しますと、20人ほどのグループにガイドが1人付き、「熱帯のジャングル」とか「灼熱の砂漠」「氷河期のニューヨーク」などを回ってその温度湿度を体感する、という施設です。雰囲気を盛り上げるジオラマはそりゃあもうチャチで、演出もトホホなものが多かったのですが、「砂漠の真ん中に放り出されたらこりゃすぐ死んじゃうな」などと話でしか聞いたことがないようなことを実感でき、「暑い」とか「寒い」とか、ここでそういうことを言われてもなあ、という文句ばっかり言っていた子供達もそれなりに何かを学ぶことができてればいいんですけどねえ。ま、子供なんて所詮その程度の生き物ですが。
 さて、ロビーで待機していた我が団体がいざ「体験ツアー」に向かおうとした時、ウチの長男(3番目、てつひさ5歳)がやはり泣き出しました。入り口が暗かったのでちょっとイヤな予感はしていたのです。コイツはもうちょっとでも暗いとぜんぜんダメでして、今年の正月はサンシャインのナンジャタウン(全体的に暗い)でも泣き叫び、ディズニーランドの「ピノキオ」でも大泣き、私が大好きなのでなんとかだまくらかして入った「ホーンテッドマンション」ではそりゃあもう気が狂ったように暴れ、30分も並んだのに結局最初の部屋から途中退場。「長男は暗いアトラクションには連れて行くべからず」という新たな家訓が出来上がってしまいました。これはよく考えると遊園地の屋内アトラクションはほとんどダメということです。こないだ東京で「としまえん」に行ったのですが、「ミラーハウス」にさえ入ろうとしないのですから困ったものです。しかし今振り返ってみると「ホーンテッドマンション」はいくらなんでも無理だったろう、と思うのですが、あそこの前には、あの重厚なマントの制服を来た「怪しいオヤジ」、見ようによっては「素敵なオジサマ」が、それが仕事なんでしょうけどウロウロしてまして、入ろうかどうしようか迷っている我が一家に「小さなお子さまでもぜんぜん大丈夫ですよう」などと無責任なことを上品な口調と魅力的な笑顔でかますもので、思わず魔が差してしまったのです。泣き叫んでたのは長男だけですが、次女も末っ子も地味に泣いてたし、あそこは小さな子供にはシャレにならんくらい怖いです。気をつけましょう。

 話は戻って、結局「地球体験館」では暴れる長男をダンナが抱っこして、強制的に館内を回ったのですが、暗いジャングルやマグマの海、といった、暗くて不気味なところではかならず「がえるうぅ〜〜〜!!てっちゃんおうちがえるうううぅぅ〜〜〜!!」と大騒ぎし、他のお客さんの手前非常にいたたまれませんでした。「悪い子連れ」の見本ですね、はい。

 さて、この長男ですが、普段はのんきというか平和主義者というか、感情を荒げることのない、いつもニコニコした機嫌のいい子供でとってもかわいいのですが(←親バカ全開)、とにかく「とげとげしいムード」や「まがまがしい気配」といったものを極端に嫌うのですね。私がちょっと末っ子を叱っただけで目をつぶって両手で耳をふさぐし、相撲を取らせてもダンスのようにくるくる回ってしまって、ぜんぜん勝負にならない。勝ち負けを決めるよりも、まあまあみんな、ここはひとつ仲良くしませんか、みたいなヤツなのです。野菜が嫌いなようですが、我が家では「食事は残さず食べれ」という方針なので、最後まで手をつけずにいた野菜とついに対峙せねばならなくなったその時、ヤツは不自然な明るさで「てっちゃんこれ大好きだもーん」と自らに言い聞かせて心理的葛藤を極力避けています。3歳の頃から「てっちゃん結婚しない」と感心するくらい頑なに言い続けているのもきっと「結婚は気苦労のモト」だと理解誤解しているからです。本人も「お嫁さんにいろいろとしてあげないといけないんでしょ?」などと言っていました。そんなのてっちゃんヤダ、だそうで、まあこれに関しては子供達の前でダンナを顎で使っている私がいけないのかな、ともちょっと思いますが、要するにコイツは大変なこととかイヤな思いから徹底的に逃げる、そういう性格のようなのです。

 そこで私はハタと気付きました。そういえばウチの4人の子供の中でコイツだけ「帝王切開」で生まれてきているのです。割と知られていることですが、出産というのは赤ん坊にとっても大変な戦いであるそうです。暖かく安全な胎内から、暗くて狭い産道を通って、外界へ出る。それが肺呼吸のきっかけになるのですが、途中酸欠で苦しくなるのは確実です。そういう試練を、ウチのひとり息子は始めから受けるつもりがなかったのではないか、そうだそうに違いない!と私は確信しました。長男はお腹の中で「横位」という、いわばまるっきり「生まれよう」という気のない「逃げの体勢」を頑なに変えようとしなかったのですから。逆子ならまだ自然分娩の目がありますが、横位というのは「100パーセント帝王切開決定」なのだそうで、長男の場合はお産というよりも、日にちを決めた「手術」だったのです。

 考えてみれば、生まれてすぐ、すでにその子の性格というか「個性」ははっきりしているものです。おとなしい子、よく泣く子、あまり飲まない子、寝てばかりの子。その性格というのはすでに「胎児」の段階で作られているはずで、一般に「妊娠中に食べたいものは胎児の好物」などと言われているのもあながち迷信ではないのかも、と思いました。さらに胎児にとっての一大事である「出生」時には、その性格がかなり色濃く出るのではないか。とある眠れぬ夜、私は布団の中でこの大胆な仮説に挑んでみました。

 長女は促進剤を使ったのも一因でしょうが、初産とは思えないスピードでぐいぐい出てきました。退院の時担当の先生に「初めてにもかかわらず、大きなお子さんをわりとさっさとお産みになられて」と誉め(?)られたのは私です。9歳まで育った長女の性格は、と言えば、私に大変似ています。なんでも「さっさと」やってしまいたい、効率主義の短時間集中型です。
 「自分はお産が早いほうだ、と思っていてください」と初産の時に言われたので、次女の時はそりゃあもう早いだろう、15分ぐらいかもな、などと思っていたのですがさにあらず。「微弱陣痛」というやつで、「微弱」だから大して痛くはないのですが、とにかく待てど暮らせど促進剤を使えど出てこようとしない。結局このままではらちが開かない、ということで陣痛開始半日後に「人工破膜」という促進処置をしたところ、あれよあれよという間につるりんと産まれました。そばについていた看護婦さんいわく「ひゃー、あっけないっすね〜」(←失礼だぞ)。普通サイズ(3100g)だったので、産むのも楽なもんでした。もうすぐ7歳の次女は、従順でおとなしく心配性で、人にうながされないとなかなか行動しませんが、「こうしよう」「これこれしなさい」と言われれば的確に理解し、すぐにその通りにします。さらに開き直れば一番度胸があるのでは、と思えることもよくあります。微弱陣痛の間、次女はお腹の中で「どうしようかなあ、大丈夫かなあ」とあれこれ気を揉んでいたのでしょう。そこへ「いいかげんに出てきなさい」という指示が与えられたので、さっさと出てきた、とこういうことではないかと思うのです。
 3番目の長男はすでに書いたとおり。長男を抱きながら看護婦さんがぽつりと言った言葉が印象に残っています。「帝王切開で生まれた子供って、なんか欲がないのよね〜」。欲がない、イコール、消極的。きっとみんな「あの暗いところを通る」のを避ける性格の子供たちなのでしょう。
 末っ子ですが、この子だけ本当の意味での自然分娩でした。前回帝王切開だったので、人工的な処置はできない、ということだったのです。赤ん坊が大きかったのでさすがにひり出す時(←下品だけどぴったりな表現)はキツかったですが、結果的に非常にいいお産でした。子宮に傷があるので、なるべく小さく安全に産みたいと思っていた私ですが、意志に反してお腹は落っこちそうなくらい突き出ており、長男が3700gだったんです、大きかったんです、と助産婦さんに言ったところ、お腹を見て自信たっぷりに「3700はないから大丈夫!」と断言したにもかかわらずぴったり「3700g」だった、というのが唯一の誤算でしょうか。現在3歳の末娘は、3歳なのでワガママなのはあたりまえですが、今のところよく食べてよくしゃべる快活な娘です。お兄ちゃんが大泣きしている「暗いアトラクション」でも、ちょっとおびえはするものの、出てから笑顔で「あーこわかった」と明るく言い放ち、「てっちゃん泣いたんだよね」と妙に早口で最低3回は繰り返して兄を小馬鹿にしています。ことさら問題のなかった出産と彼女の性格との関連は、、、、うーん、、わからん。兄が傷つけた子宮をものともせず、ずうずうしくも大きく生まれてきた、というのはなんとなく彼女のキャラかな、とは思いますが。

 とまあ、我ながら思いこみが大量に入っているとは思いますし、人間の性格というのはいくつもの面がありますからどんな風にも解釈は可能でしょうが、逆子などの胎児側の理由で帝王切開になった方や、2日間陣痛で苦しんだあげく、どーしても出てきやがらないので帝王切開になった、という「壮絶な地獄を見た方」からコメントいただければなかなか面白い話題になるかも、と思います。私自身は「逆子」で自然分娩で小さかったそうです。安全な部分でだけ「人と同じはイヤ」などと自己主張してみる、今の私の性格にピッタリの出生事情かもしれません。折しも「親孝行の秋」(←今私が決めました)、お母さんに出産のエピソードを聞いてみる、というのはいかがでしょうか。もしそのエピソードが自分の芸風にぴたりと一致したな、と思われたらぜひBBSの方に書き込みをば、よろしくお願いつかまつるぅ〜。

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