男性にとって人生最大の敵、さてそれは誰でしょうか?
女房?ええ、それもかなり手強い敵ではありますが、しょせんは女です。
男の敵はやはり男。
そう、それも実に許し難い、いくらぶん殴っても飽き足らない、ハラワタが煮えくりかえるような、アンビリバボーな所業をするヤツが、ほらほら、いるではないですか。

そう、それは「娘を奪っていく男」です。
悲しいことにこの敵に対しては万にひとつの勝ち目もありません。
こいつが目の前で「お父さん!お嬢さんをぼくに・・・」と耳を塞ぎたくなるような台詞を言う、その日は男の一生の中で最大の屈辱を被る日と言えるでしょう。
大体にして、娘は父親の眼鏡にかなう相手など連れてきません。
そんなやつはこの世に存在しないからです。
そもそも父親というのは自分以外の男が娘を幸せにできるわけがない、と心のどこかで大真面目に思っている節があります。
むちゃくちゃです。
しかし周知の通り悲しいかな父親は娘より先に死ぬ運命です。
いくら日本海溝より、フィリピン海溝より、いいや、マリアナ海溝よりも深い愛情を持っていると自負していても、娘の一生を見守る事は不可能なのです。
その残酷な運命を多くの男性は断腸の思いで受け入れ、数十年ぶりの涙を流し、あるいは涙をのみ、「娘を頼む」「幸せにしてやってくれ」と気に食わない男に娘を差し出さなくてはならないのです。

思い出してみてください。
小さい頃は「ねえねえ、お父さん、お父さん」とまとわりつき、「お父さんと結婚する」とか「お嫁になんか行かないでずっとお父さんと一緒にいる」と、まぶしい笑顔を惜しげもなくふりまいていた我が最愛の娘。
中学生になった途端、あまり口をきいてくれなくなってしまったなあ。
どんどんどんどん娘らしくなるおまえにいささかとまどっていた時期もあった。
それでもおまえに対する愛情はずっと変わらなかった。
むしろ膨らんでいく一方だったような気がする。
お父さんはおまえのためなら命だって惜しくない、本気でそう思い、全身全霊で愛し、守ってきたこの何物にも替え難い至上の宝物。
ああ、それなのに。

男のくせにおかっぱ頭を茶色く染めて、妙な色でてろんとした、いかにも着慣れていない風のスーツを着、「楽にして」とかけた言葉を鵜呑みにして目の前であぐらをかき、焦点の定まらない死んだ魚のような生気のない眼をして、小さな声でぼそぼそと「いちおう〜」だとか「〜てゆうか」などとあいまいな表現で今どきの言葉をしゃべりやがる、きゅうりとなすびとかぼちゃととうもろこしを足して縦8つ割りにして八丁味噌で煮込んだようなツラガマエの、どこの馬の骨ともサバの骨とも傘の骨とも知れぬ若僧。
なんでこんなやつに、なんでこんなやつに、大事な大事な大事な娘をやらなきゃいけないんだああああああ。

そうです、お父さん。お怒りはごもっとも。
ここはひとつ、かなわぬ敵と知りながらも、ぜひ一矢報いてやろうではありませんか。
そのくらいは許されてしかるべきでしょう。
だいたい大事なお嬢さんをタダでやるわけにはいかないではないですか。
もしそこでくじけるような男だったら、正々堂々、両手を腰に当てて
「そんな奴に娘はやれん!!」
と大声で宣言してやればいいのです。
え?俺は口ベタでいじわるも苦手だからどうしたらいいか分からない??
だいじょうぶ、越後屋、桔梗屋も一目おくという、悪だくみをさせたら天下一品!のこのATSUYOがお教えします。
もちろん、アレンジはご自由になさってくださって結構です。
さあ、世の中を舐め切っているこの腑抜けた若僧に、人生の先達として価値ある試練を与えてやろうではありませんか。

第1の砦 まずはひたすら逃げましょう  

第2の砦 「あの一言」を言わせないために 

最後の砦 無理難題を押し付けてみましょう 


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